近松物語（’５４）
原作は、近松門左衛門の 「大経師昔暦」 元にした、川口松太郎の戯曲 『おさん茂兵衛』
監督は、溝口健二
これは、悲恋物語の傑作ですね。
香川京子は、実家のために年の離れた大経師屋の主人、進藤英太郎に後妻に来たのであるが
相変わらず実家からお金の無心は続いていた。
ある時、家を抵当に入れた借金返済のために実家の兄、田中春男が忍んで
金の工面を頼みにくる。、ここから悲劇が始まってしまう。
主人の身勝手さや不運が重なり、主人の片腕でもある長谷川一夫と香川京子が
不義密通の疑いをかけられ 道行（逃避行） が始まる。
この時代、不義密通の罪は死刑
罪人は縛られ、馬に乗せられ町を練り歩き、十字架に架けられます。
今の時代だと、十字架が追いつきません。
序盤に、その光景が描かれているのですけど、
「拷問刑罰史」 などを参考にリアルに描かれています。
香川京子の憂いに満ちた表情
なんて美しいのでしょう。
この透明感とあごのラインが好きです。
もっと気の利いた言葉があると思うのですが
ほんとに美しいと感じたときは、言葉は出てこないものですね。
ふたりは、遂に心中することを決意
琵琶湖へと・・・・
長谷川が香川の足を縛る。
入水直前、長谷川が
「とうから、あなた様をお慕いもうしておりました・・・」
「お前の今の一言で、死ねんようになった・・・死ぬのはいやや。生きていたい！・・・。」
このシーンは、しびれた・・・・
美しすぎます。
早坂文雄の三味線、尺八、拍子木などの場面を盛り上げる音楽も素晴らしかった。
特に、三味線の ベンベンベン がとても哀しく聴こえてしまった。
封建社会の過酷な制度の下に、愛情が芽生え人間性を自覚した末の悲劇
悲劇なんですけど、それ以上に美しい・・・・
溝口監督は、どこまでも美しい映画を撮る人ですね。
溝口健二監督作品実家からの金の工面の相談をきっかけに、窮地に立たされた妻・おさんと手代・茂兵衛の愛の逃避行を描く。
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