８ １／２（’６３）
監督 フェデリコ・フェリーニ
映画の テッペン を見た気がします。
台詞の中で
「映画は他の芸術より５０年遅れてる」
この作品で、一気に遅れを縮めたのではないでしょうか。
タイトルの 『８ １／２』 は、フェリーニ監督が手がけた８つの長編と１本の共同作品
彼のこれまでの映画製作の総決算、それがこの作品
マルチェロ・マストロヤンニに、フェリーニの想いをのせた “大妄想映画”
オープニング、映画監督であるマストロヤンニは、渋滞の車の中でイライラ、イライラしてるんです。
他の車の人たちは、無表情にこっちを見ている。
バスの乗客は窓から手をぶらんと垂らしている。
映画制作も行き詰まっていて、イライラは最高潮
車の窓が開かない、何か煙が出ている・・・・と思ったら
スーッと、マストロヤンニが浮いていく、はるか彼方へ・・・・・
マストロヤンニが、ふわふわ浮いている。
下ではロープで、マストロヤンニを引っぱている。
あああっと、真逆さまに落ちていくと、うわっとベッドから目覚める。
誰しも、落ちる夢を見て、うわっと汗まみれになって目覚める。あの感覚。
愛人サンドラ・ミーロとホテルの部屋で寝ていたら、壁際におばあさんが、たたずんでいる。
そこから、少年期の回想シーンなんです。
少年に影が近づいてきて抱え込まれ、沢山の子供たちとブドウ酒風呂に入れられる。
その後、ベッドに寝かしつけられ、子守唄が聞こえてくる。
ベッドの上で子供たちが、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
幻想的というか、ノスタルジックというか・・・・
別の少年期の回想シーンでは、友達と海辺のホームレスのおばさんに会いに行く
小銭をあげたら、そのおばさんがルンバを踊り出すんです。
巨乳巨尻の肥えたおばさんなんです。
グロエロくておどろどろしい。
フェリーニは好んで、そういう女を描いていますよね。
この後、先生に見つかってマストロヤンニ少年だけが
「恥を知れ」 と書かれた紙を背中につけられ学校で罵られるんです。
それでも少年は、肥えたおばさんに会いにいく。
海に向かってイスに腰掛けていたおばさんが、こっちを振り返って
「チャオ」
厳格なカトリック学校で、本当のマリア様を見つけたのでしょうかね。
知的な顔立ちが大好きなんです。 アヌーク・エーメ
でも、なかなか彼女の出演作に出会えなかった。
マストロヤンニの妻役の彼女。サンドラ・ミーロとの浮気を察知し
「嫉妬妻を演じるなんて屈辱だわ！ 淫売！ 雌キツネ！」
マストロヤンニは現実逃避して妄想に走るんです。
自分を取り巻く女たちに囲まれる “ハーレム” の世界
妻のアヌーク・エーメは、家事をしながら好みの女を連れてきてくれたりします。
さっきの肥えたおばさんも登場してます。
そんなハーレムの世界でも規則があるんです。
いい歳になったら２階へ追いやられるんです。
それを不満に思った女たちが暴れ出す。
マストロヤンニが鞭で女をうちつける。
こういう世界を平気で、しかも大胆にフェリーニは描いている。
あなたにも、お会いしたかった。
クラウディア・カルディナーレ
チュニジア出身のイタリア人
日本での記者会見に１分と遅れなかった数少ない律儀なスターだったそうです。
彼女は、マストロヤンニの妄想の中での理想の女性像
しかし、その妄想はむなしく夢と消えてしまう・・・・
淀川長治さんが映画評論家の植草甚一さんと、今作品を一緒に観たとき
「淀川君、映画はもうこれで終わったね。」
「これ以上の映画はありっこないよ。何年たっても・・・・」
ご存知のとおり、今日現在、映画は終わっていませんが（笑）
それぐらい、常識を覆す作品
理詰めではない、難解で超感覚映画
ただ終盤、マストロヤンニが
「人生は祭りだ。共に生きよう」
フェリーニの人間味を感じる温かい台詞
アカデミー賞外国語映画賞受賞作
アカデミー賞受賞作 フェデリコ・フェリーニ監督作品※参考 「淀川長治のシネマトーク」
映画監督・グイドは温泉地に逗留中。クランクインを控える新作のことや冷え切った妻との関係など、悩みが尽きない彼の脳裏にはさまざまな幻影が浮かんでは消える。そしてストレスが頂点に達した時、彼は…。
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