フェリーニのローマ(’72)
監督は、フェデリコ・フェリーニ
『甘い生活』 『サテリコン』 に続く 「フェリーニのローマ3部作」 の最終章
古代からの遺跡と現代性が共存する都市ローマを、フェリーニが自らの幻想を通して
ドキュメンタリーともファンタジーともつかぬ独自の世界の中に再現する。
教科書やガイドブックには載っていない猥雑で、誘惑に満ちた、本物のローマ
夜の下町表通りの野天食堂。老若男女見渡す限り、ひしめき合っている。
恰幅の良い女性が大皿に、パスタを、わっさ~盛ってテーブルに運んでいる。
パスタやペンネやモッツァレッロ、みんな食べるわ食べるわ。
口の回りにトマトソース、ベッタ~
その野天食堂の横すれすれに、市電が走りぬける。
突然、女の子が椅子の上に立って
「さあ大変だ!妹が犯される♪♪ さあ大変だ!おじさんも犯される♪♪」
両親が 「お前が教えたんだな?」 「人のせいにしないで」
でも、みんなそんなこと気にしないで楽しそうに、口の回りトマトソース、ベッタ~(笑)
ところ変わって、地下鉄工事現場
ローマでは、100年前から工事計画が立てられてるのに、なかなか完成しない。
「ローマでは、100mごとに遺跡が出てきて工事が進まない」
気の毒なような、羨ましいような・・・・・
そして掘っていくと、古代ローマの屋敷跡が・・・・
神々しい壁画や彫刻の数々・・・・
しかし、外気に触れて壁画が一瞬のうちに消え去っていく。
幻想的であり、文明社会への皮肉にも思えるシーン
昨今の若者に対して、
「子犬のようにじゃれ合う若者たち、彼らにとって“愛”とは、大した問題じゃない。」
「ひと昔前は、路地裏の娼館に行くしかなかった。」
その娼館での、グロエロく、毒々しいまでの世界
「私と楽しもうって度胸はないの!」
人間の欲望がむき出しで 「これが本当のローマだ!」 と言わんばかり。
場面は変わって、貴族の末裔で、先祖から受け継いで宮殿に住んでいる女性
その日は、一族や聖職者を招いている。女性が昔を懐かしむようにつぶやきます。
「人生そのものが芸術だった・・・」
没落貴族にしか言えない言葉なのかもしれませんね。
そして宮殿では、“教会のファッションショー” が始まる。
教会への皮肉たっぷりに、豪華で、突飛で、現実とも幻想とのつかない世界
きらびやかにニューモードで着飾るモデルの僧侶
滑稽を通りこして、神聖なものに見えてしまうのは不思議です。
ローマの街角で、市民がこう言います。
「何度も興亡を繰り返した、この都市で崩壊を見届けたい。
自滅を眺めるには、ここが1番ふさわしい。」
フェリーニのローマに対する強い想いの伝わる作品でした。
「大好きなローマ。大嫌いなローマ」
そんな想いだったのでしょうか。
フェデリコ・フェリーニ監督作品
巨匠フェデリコ・フェリーニ監督が、その魂の故郷ともいえるローマの街そのものを題材に、ドキュメンタリーともドラマともいえない摩訶不思議な映像空間を紡ぎ出していく大作。
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