チャドルと生きる(’00)
監督は、ジャファール・パナヒ
現在、開催中のベネチア国際映画祭 『金獅子賞』 受賞作です。
なのに、イラン本国では上映禁止という問題作
女性達が身に纏うチャドルと呼ばれる長いヴェール
イランの女性達の理不尽なまでの境遇を、音楽を一切排し、説明を一切排し、ドキュメンタリータッチで描いてます。
冒頭テヘランの、ある病院の分娩室、赤ちゃんの元気な産声が響いている。分娩室の覗き窓から看護婦が呼び掛ける。
『付き添いの方はいらっしゃいますか?』 親族の老婆に看護師は言う。『元気な女の子が生まれました』
しかし、その老婆は看護師に向かって途方に暮れたように呟く。
『超音波検査では男の子だと言っていたのに。女の子では離縁されてしまう』
新たな命は、女であるという理由によって、決して祝福されることがない。
物語は、この祝福されない女の子の赤ちゃんから始まり、登場する女性達が街中ですれ違い
その度に 『主人公』 が移動しながら、それぞれの人生の断片がリレー形式で語られてゆく
パナヒ監督は 『何人もの女性達が出てきますが、彼女達は1人の女性だと言ってもいい。
全てが1人の人に起こり得ることであり、一生がおよそ半日に凝縮されている訳です。』
この映画の原題は 『The Circle』
物語は、終わることのない人生の円として閉じられる。
女性達が円から脱出を試みようとしても、全ては円の中に終着させられてしまう。
パナヒ監督は 『全ての困難は円を成しています。人は誰しもそうした円の中で生きているのではないでしょうか』
と、イランのクソ男達に 『円』 の意味を問うてます。
イラン政府の映画に対する検閲項目をいくつか見つけました。
『女性のクローズ・アップや化粧の禁止』
『非道徳的な登場人物に伝統的イスラム教徒の名前を付けない』
『女性が走っているところは撮影しない(体のラインが強調されるため)』
女の子を生んだために離縁されてしまう女性、ウソをつかなければバスにも乗れない仮釈放中の女性、堕胎のために刑務所を脱走した妊婦。不平等なイラン社会で力強く生きていく彼女たちを描く。
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