父と | 小細胞肺癌 闘病記

小細胞肺癌 闘病記

声を失って、初めて肺癌だと知った父。余命半年。
告知までの日々、告知からの日々を残してゆきたい。



今日は
父と、少し辛い話をした。

個室で二人きり

ゆっくりと
噛み締めるように父が言った。


「俺は、もう間もなくこの日々や
おまえ達家族からも
旅立つ日がきたようだ。
残念だけどな…
どうにもならない。
大好きな車を
運転することも
もう、ないだろう。
俺が死んだら、俺の車とおまえの車を
下取りに出して
新車を買えよ。
赤や青や
パッと明るくなるような色がいいぞ。
外車もいいな。
ちょっとレトロな…」


車の話をしだしたら
とまらない。

本当に本当に
あと1度だけでいい。
運転させてやりたい。


「色々話したけどな
母さんのこと
頼んだぞ。」

そう言ったとき
本気で泣きそうになった。


私は
否定も肯定もすることなく
最後まで
父の話を聞き続けた。


この話の流れで
お父さんに
今までありがとうと
伝えようかと、よぎったが

それを言ったら
今日が最後な気がして

何にも言えなかった。


世の中には
何も話せないまま
大切な人との別れを余儀なくされる
人達が大勢いる。


淋しいけれど
父とゆっくり話せた今日に
感謝しなくては
ならないのかもしれない。