こんにちは、おっさんです。

昨夜23時過ぎに緊急地震速報のアラートで

飛び起きました。

おっさんの住んでいる地域では

それほど揺れも強くはなかったのですが

愛媛県では結構な揺れだっそうで

いつ自分たちにも災害が襲ってきてもおかしくないですね。

早めにいろいろ備えておかあなければと思いました。

 

セレクト過去問集-民法5

の結果は、24問中、14もん

 

 Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア 甲の引渡しの履行期の直前に震災によって甲が滅失した場合であっても、Bは、履行不能を理由として代金の支払いを拒むことができない。

イ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。

ウ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

エ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。

オ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ

 

正解4

ア 誤り。当事者双方の責めに帰することができない事由(本肢では震災)によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができます(債務者主義。536条1項)。

イ 正しい。買主が追完請求権又は代金減額請求権を行使しても、415条の規定による損害賠償の請求並びに541条及び542条の規定による解除権の行使をすることができます(564条)。

ウ 誤り。買主が、履行の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる場合とは、①履行の追完が不能であるとき、②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、③契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき、④①~③に掲げる場合のほか、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき、の4つの場合です(563条)。本肢は、上記のいずれにも該当しないため、Bは、そのAに対して、直ちに代金の減額を請求することができません。

エ 誤り。契約不適合が買主の帰責事由によるものであるときは、買主は、代金の減額の請求をすることができません(563条3項)。

オ 誤り。買主が種類又は品質に関する契約不適合の場合に「その不適合を知った時から1年以内に売主に通知する」旨の規定はありますが(566条本文)、売主に対し請求権を行使する旨の規定はありません

 以上により、誤っているものは、ア・ウ・エ・オの4つとなり、4が正解となります。

 

 

 契約類型に応じた契約解除の相違に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。

2 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。

3 賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。

4 委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。

5 建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。

 

正解2

1 妥当である。本肢のような負担付贈与には、双務契約に関する規定が準用され(553条)、受贈者が義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができます(最判昭53・2・17)。

2 妥当でない。買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、契約の解除ができません(557条1項)。したがって、売主は自ら履行に着手していても、買主が履行に着手していない場合であれば、手付の倍額を現実に提供して解除することができます。

3 妥当である。判例は、賃借人が賃貸人との間の信頼関係を破壊し、賃貸借契約の継続を著しく困難にした場合は、賃貸人は、催告をすることなく、将来に向かって賃貸借契約を解除することができるとしています(最判昭27・4・25)。

4 妥当である。判例は、受任者の利益のためにも締結された委任契約である場合、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、やむをえない事由がなくても、その契約において委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情がある場合には、委任者は、民法651条に則り契約を解除することができるとしています(最判昭56・1・19、651条2項2号参照)。

5 妥当である。①注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、または、②請負が仕事の完成前に解除されたときにおいて、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなします。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(634条)。したがって、既施工部分については仕事が完成したものとみなされ契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎないことになります。

 

 

 Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ 

 

正解2

ア 誤り。判例は、建物賃借人は、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできないとしています(145条、最判昭44・7・15)。

イ 正しい。乙建物の所有権をAからBが譲り受ける際に、賃借人Cの承諾は不要ですが、乙建物についての移転登記をしなければ、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできません(605条の2第3項)。したがって、Bは、Cに対して賃料を請求することはできません。

ウ 誤り。AB間の甲土地の賃貸借契約において、Cは弁済をするについて正当な利益を有する第三者であり、Aの承諾がなくとも、甲土地の賃料をBに支払うことができます(474条2項反対解釈。最判昭63・7・1)。

エ 正しい。判例は、賃借地上の建物の売買契約が締結された場合には、特段の事情のない限り、売主は買主に対し敷地の賃借権をも譲り渡したことになるとしています(最判昭47・3・9)。したがって、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲渡することができない(612条1項)ので、本肢においてAは、Bの承諾を得る必要があります。

オ 正しい。判例は、土地の賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情のない限り、土地の賃貸人は解除をもって賃借人の所有するその土地上の建物の賃借人に対抗することができないとしています(最判昭38・2・21)。

 以上により、誤っているものはア及びウの二つであり、2が正解となります。

 

 

 Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し(以下、この賃貸借を「本件賃貸借」という。)、その際、BがAに対して敷金(以下、「本件敷金」という。)を交付した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

 

1 本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。

2 BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金から控除すべき額を控除した額を返還しなければならない。

3 BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

4 BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。

5 AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

 

1 妥当でない。賃借人は、「必要費」については、賃貸人に対して、直ちに償還請求をすることができますが(608条1項)、「有益費」については、「賃貸借の終了時」に、貸主の選択に従い、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができます(608条2項)。

2 妥当である。賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または、②賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければなりません(622条の2第1項)。

3 妥当でない。賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができません(613条3項本文)。

4 妥当でない。賃貸人の承諾のある転貸借において、賃貸借契約が賃借人(転貸人)の債務不履行を理由とする解除により終了した場合には、転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する履行不能により終了するとしています(613条3項ただし書参照。最判平9・2・25)。したがって、賃貸人は、転貸借が期間満了前でも、転借人に明渡しを求めることができます。

5 妥当でない。目的不動産の所有権が移転し、新所有者が賃貸人の地位を承継した場合には、旧賃貸人に差し入れられていた敷金は、未払賃料があれば当然に充当され、残額があれば新賃貸人に承継されるとしています(605条の2第4項。最判昭44・7・17)。

 

 

 AはBのためにある事務処理を行った。これが、①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 

ア Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。

イ Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。

ウ Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、②の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。

エ Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、②の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。

オ Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。 

 

1 ア・イ

2 ア・オ

3 イ・エ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解1

ア 正しい。委任では事務の処理の費用の前払い請求が可能ですが(649条)、事務管理では費用の前払いを請求することはできません。

イ 正しい。委任では、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができますが(650条1項)、事務管理では、管理者は、本人のために有益な費用についての、その償還を請求することができます(702条1項)。

ウ 誤り。委任も事務管理も、本人を代理する権限は、法律上当然には認められていません。

エ 誤り。委任では、受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければなりません(646条1項前段)。また、事務管理でも、委任の規定が準用されています(701条)。

オ 誤り。委任では、受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(645条)。また、事務管理でも、委任の規定が準用されています(701条)。

 以上により、正しいものはア・イとなり、1が正解となります。

 

 

 AのBに対する不当利得返還請求等に関する次のア~オの記述のうち、判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア Aは、Bに対する未払い賃料はないことを知りつつ、Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができる。

イ Aは、賭博に負けたことによる債務の弁済として、Bに高価な骨董品を引き渡したが、その後、A・B間でBがこの骨董品をAに返還する旨の契約をした。この場合に、Aは、Bに対し、この骨董品の返還を請求することができる。

ウ Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕義務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

エ Aは、Bとの愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得としてこの建物の返還を請求することができる。

オ Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの法律上または事実上の関係のないDに貸付金を交付させたところ、Bが強迫を理由にAとの当該金銭消費貸借契約を取り消した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ 

 

正解2

ア 正しい。債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができません(非債弁済。民法705条)。しかし、705条が適用されるためには、給付が任意になされたことが必要であり、本肢の場合は給付に任意性がなく、705条は適用されません(大判大6・12・11、最判昭35・5・6)。

イ 正しい。判例は、不法原因給付に該当し、返還請求することができないものであっても、不法原因契約を合意の上で解除してその給付を返還する特約をすることは、民法708条に違反しないとしています(最判昭28・1・22)。

ウ 正しい。建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に不当利得の返還を請求することができるのは、建物所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られます(最判平7・9・19)。本肢の場合、賃借人の無資力を理由に建物所有者に不当利得の返還を請求する場合に当たらない(BはCから得ることができた権利金の支払いを免除するという負担をしています)ので、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできません。

エ 誤り。愛人関係を維持するための給付は不法原因給付に当たり、贈与者は、その給付の返還を請求することができません(708条)。未登記建物の引渡しは、「給付」に当たるので、Aは、Bに対し、不当利得として返還請求することはできません(最大判昭45・10・21)。

オ 誤り。本肢において、Bに不当利得があるというためには、BがAの給付によってDに対する債務を免れるなどBとDとの間に何らかの法律上又は事実上の関係があることが必要ですが、BとDとの間には、何ら法律上又は事実上の関係がありません。したがって、Bには利得が存在せず、AはBに不当利得返還請求権を行使することができません(最判平10・5・26)。

 以上により、誤っているものは、エ及びオの二つであり、2が正解となります。

 

 

 不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

 

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Iの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはIに対して求償することができる。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。 

 

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・ウ

4 ウ・エ

5 エ・オ

 

正解4

ア 誤り。使用者は、損害の全額を賠償したとしても、損害の公平な分担という見地から「信義則上相当と認められる限度」において、被用者に対し求償の請求をすることができるにすぎません(最判昭51・7・8)。したがって「全額を求償することができる」とする本肢は誤りです。

イ 誤り。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、動物の種類及び性質に従い相当な注意をもって動物を管理していたときは、責任を負う必要はありません(718条1項)。本肢の場合、飼主Dは飼育する犬を相当な注意をもって管理することを証明できなかったので、Fに対する損害賠償の責任を免れることができません。この場合、E社製の飼育檻の強度不足による賠償請求については、DがE社に対して行使できるものですが、このことと、Fに対する責任とは異なるものです。

ウ 正しい。土地工作物等の所有者が、その損害を賠償した場合、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、所有者は、その者に対して求償権を行使することができます(717条3項、2項)。したがって、所有者Gは、請負業者Iに対して求償権を行使することが可能です。

エ 正しい。被用者が使用者の事業の執行につき第三者との共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が過失割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に求償することができます(最判昭63・7・1)。

オ 誤り。使用者は、被用者と第三者との共同過失により、惹起された交通事故により被害者に対してその損害を賠償したときは、第三者に対して求償権を行使することができ、この場合の第三者の負担部分は、被用者と第三者との過失割合に従い定められるとするのが判例です(最判昭41・11・18)。したがって、Nは、「Qに求償することはできない。」とする本肢は誤りです。

 以上により、正しいものはウ及びエとなるので、4が正解となります。

 

 

 不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

 

ア Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

ウ A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

エ Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。

オ Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、5年で消滅時効にかかる。

 

 

1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解1

ア 妥当である。不法行為による損害賠償について、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができます(722条2項)。夫の運転する被害自動車に妻が同乗していた場合、夫婦の婚姻関係が既に破綻しているなど特段の事情のない限り、夫の過失は被害者側の過失として考慮されます(最判昭51・3・25)。

イ 妥当である。数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(719条1項前段)。連帯債務の場合、免除は他の連帯債務者に対してその効力を生じません(相対的効力)。したがって、共同不法行為者のうちの一人の損害賠償債務を免除しても他の共同不法行為者の損害賠償債務に影響しません。

ウ 妥当でない。使用者は、損害の全額を賠償した場合でも、損害の公平な分担という見地から「信義則上相当と認められる限度」において、被用者に対し求償の請求をすることができるにとどまります(最判昭51・7・8)。

エ 妥当でない。線路(軌道施設)は土地工作物に当たり、見通しが悪く、交通・列車回数が多く、過去数度に及ぶ事故のあった電車の踏切に保安設備(警報機)が欠けている場合は、土地工作物に瑕疵があったことになります(最判昭46・4・23)。したがって、被害者は、鉄道会社に土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することができます(717条1項)。

オ 妥当でない。不法行為により受傷した被害者が、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想し得なかった治療が必要となり、その費用の支出を余儀なくされたときは、損害賠償請求権の消滅時効は、後日その治療を受けるまで進行しません(最判昭42・7・18)。したがって、「事故により直ちに発生し、5年で消滅時効にかかる」とする本肢は妥当ではありません。

 以上により、妥当なものはアとイであり、1が正解となります。

 

 

 AはBから中古車を購入する交渉を進めていたが、購入条件についてほぼ折り合いがついたので、Bに対して書面を郵送して購入の申込みの意思表示を行った。Aは、その際、承諾の意思表示について「8月末日まで」と期間を定めて申し入れていたが、その後、契約の成否について疑問が生じ、知り合いの法律家Cに相談を持ちかけた。次のア~オのAの質問のうち、Cが「はい、そのとおりです。」と答えるべきものの組合せは、1~5のどれか。

 

ア 「私は、申込みの書面を発送した直後に気が変わり、今は別の車を買いたいと思っています。Bが承諾の意思表示をする前に申込みを撤回すれば、契約は成立しなかったということになるでしょうか。」

イ 「Bには、『8月末日までにご返事をいただきたい』と申し入れていたのですが、Bの承諾の意思表示が私に到着したのは9月2日でした。消印を見るとBはそれを9月1日に発送したことがわかりました。そこで私は、これをBから新たな申込みがなされたものとみなして承諾したのですが、契約は成立したと考えてよいでしょうか。」

ウ 「Bからは8月末を過ぎても何の通知もありませんでしたが、期間を過ぎた以上、契約は成立したと考えるべきでしょうか。実は最近もっとよい車を見つけたので、そちらを買いたいと思っているのですが。」

エ 「Bは、『売ってもよいが、代金は車の引渡しと同時に一括して支払ってほしい』といってきました。Bが売るといった以上、契約は成立したのでしょうが、代金一括払いの契約が成立したということになるのでしょうか。実は私は分割払いを申し入れていたのですが。」

オ 「Bの承諾の通知は8月28日に郵送されてきました。私の不在中に配偶者がそれを受け取り私のひきだしにしまい込みましたが、そのことを私に告げるのをうっかり忘れていましたので、私がその通知に気がついたのは9月20日になってからでした。私は、Bが車を売ってくれないものと思って落胆し、すでに別の車を購入してしまいました。もう、Bの車は要らないのですが、それでもBとの売買契約は成立したのでしょうか。」

 

1 ア・ウ

2 イ・エ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 エ・オ 

 

正解3

ア 答えるべきでない。承諾の期間を定めてした契約の申込みは、申込者が撤回する権利を留保したときを除いて、撤回することができません(523条1項)。

イ 答えるべき。申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができます(524条)。Aが遅延した承諾を新たな申込みとみなして承諾すれば、契約が成立したことになります。

ウ 答えるべきでない。申込者が承諾期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは効力を失います(523条2項)。期間を過ぎた以上、契約は成立しなかったことになります。

エ 答えるべきでない。承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされます(528条)。Bが代金一括払という条件で承諾しているので、その承諾は新たな申込みとなりますが、Aがこれに承諾しなければ契約は成立しません。

オ 答えるべき。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(97条1項)。判例は、通知の到達について、通知が相手方の支配圏内に置かれることをもって足りるとしています(最判昭43・12・17)。Aの配偶者が承諾の通知を受領していれば通知は到達していることになり、契約は成立したことになります。

 

 

 契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

 

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

 

1 ア・エ

2 イ・ウ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解5

ア 妥当でない。Aの火の不始末により当該建物が焼失したことにより履行不能となるため、Bは、催告をすることなく、直ちに当該契約を解除することができます(542条1項1号)。

イ 妥当でない。引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していないため履行遅滞となるので、Bは、相当の期間を定めてその履行を催告した後でなければ当該契約を解除することができません(412条、541条本文)。しかし、判例は、期間を定めずに催告しても、催告後相当期間が経過すれば解除することができるとしています(最判昭2・2・2)。

ウ 妥当である。当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができます(544条1項)。Cが、当該売買契約を解除するためには、AとBに対して解除の意思表示をしなければなりません。

エ 妥当でない。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います。ただし、第三者の権利を害することはできません(545条1項)。この場合、第三者Cが保護されるためには、悪意であってもよいのですが、登記を得ている必要があります(最判昭33・6・14)。

オ 妥当である。契約の解除により、買主は原状回復義務を負うことになります(545条1項本文)。判例は、解除の場合の原状回復について、買主は、当該契約の解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならないとしています(最判昭51・2・13)。

 以上により、妥当なものは、ウ・オとなり、5が正解となります。

 

 

 

 

こんにちは、おっさんです。

今朝は、なぜかなかなか起きることができず

普段より1時間も寝過ごしました。

それでも昨日やっていた分の貯金があったので

少し気は楽でした。

今日も勉強頑張るぞー

 

セレクト過去問集-民法4

の結果は、13門中、9問正解でした。

 

 連帯債務および連帯保証に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

 

ア 連帯債務において、連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合には、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。これに対し、連帯保証において、主たる債務者が債権者に対して相殺権を有する場合には、連帯保証人は、相殺権の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

イ 連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合には、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者は債務を免れる。これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対して債務を免除した場合には、主たる債務者はその債務の全額について免れることはない。

ウ 連帯債務において、連帯債務者の1人のために消滅時効が完成した場合には、他の連帯債務者はこれを援用して時効が完成した債務の全額について自己の債務を免れることができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人のために時効が完成した場合には、主たる債務者はこれを援用して債務を免れることはできない。

エ 連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対してした債務の履行の請求は、他の債務者にも効力を生じる。これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対してした債務の履行の請求は、主たる債務者に対して効力が生じることはなく、主たる債務の時効の完成猶予の効力は生じない。

オ 連帯債務において、連帯債務者の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償することができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯保証人は、他の連帯保証人に対し、求償することはできない。

1  一つ

2  二つ

3  三つ

4  四つ

5  なし

 

正解1

ア 正しい。連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(439条2項)。これに対し、(連帯)保証人は、主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(457条3項)。

イ 誤り。連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、他の連帯債務者についてその効力は及びません(441条本文)。また、連帯保証人に対してした債務の免除も、主たる債務者にはその効力が及びません(458条、441条)。

ウ 誤り。連帯債務者の1人のために時効が完成しても、他の連帯債務者についてその効力は及びません(441条本文)。また、連帯保証人ついて時効が完成しても、主たる債務者にはその効力は及びません(458条、441条)。

エ 誤り。債権者が連帯債務者の1人に対して債務の履行の請求をしても、他の連帯債務者についてその効力は及びません(441条本文)。また、連帯保証人に対してした債務の履行の請求も、主たる債務者に対してその効力は及びません(458条、441条)。したがって、時効の完成猶予の効力は生じません。

オ 誤り。連帯債務者の1人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有します(442条1項)。また、連帯保証人の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯保証人は、他の連帯保証人に対し、自己の負担部分(連帯保証人間の負担部分)を超える額を弁済したときは、他の連帯保証人に対して自己の負担部分を超える額について求償権を有します(465条1項、442条1項)。

 以上により、正しいものは、アとなり、一つとする1が正解となります。

 

 

 債権者代位権または詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

 

1 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。

2 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。

3 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。

4 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。

5 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。

 

正解2

1 誤り。債権者が債権者代位権を行使するための要件の一つとして、債権者の債権の弁済期が到来していることがあります。ただし、保存行為を行う場合には弁済期が未到来でもよいこととされています(423条2項)。本肢の「未登記の権利についての登記」は、保存行為に該当するため、債権弁済期前に行使することができ、その場合、裁判所の許可を得る必要はないので、本肢は誤りです。

2 正しい。債権者代位権の代位される債務者の権利は、一身専属権や差押えを禁じられた権利については、対象とすることができませんが、それ以外の債権や物権的請求権などの「請求権」や取消権や解除権などの「形成権」も代位行使することができます。

3 誤り。債権者代位権や詐害行為取消権を行使する債権者は、債務者の代理人として権利を行使するのではなく、自己の名において債務者の権利を行使します。したがって、「代理権として行使することができる」とする本肢は誤りです。

4 誤り。判例は、本肢のような特定物債権(特定物引渡請求権)も、窮極において損害賠償債権(金銭債権)に変じ得るものであり、金銭債権と同様なので、債権者は、債務者の詐害行為を取り消すことができるとしています(最大判昭36・7・19)。したがって、「Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない」とする本肢は誤りです。

5 誤り。詐害行為取消権の立証責任については、「債務者・転得者の悪意」は債権者に立証責任がありますが、「受益者の悪意」については、受益者に善意であったことの立証責任があります。

 

 

 受領権者としての外観を有する者に対する弁済等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。

 

ア 他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

イ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

ウ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、受領権者としての外観を有する者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

エ 債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が受領権者としての外観を有する者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

オ 債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ

 

正解5

ア 妥当である。「受領権者としての外観を有する者」とは、受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものをいいます(478条)。他人名義の預金通帳と届出印を盗んで代理人と称する者も「受領権者としての外観を有する者」に当たり(最判昭37・8・21)、受領権者としての外観を有する者に対して、善意・無過失でした弁済は有効な弁済となります。

イ 妥当である。定期預金契約の締結に際し、期限前払戻の場合の弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、期限前の払戻しであっても、民法478条が適用されます(最判昭41・10・4)。したがって、銀行が善意・無過失であれば、有効な弁済となります(478条)。

ウ 妥当である。金融機関が、定期預金につき真実の預金者と異なる第三者を預金者と認定して貸付をしたのち、貸付債権を自働債権とし預金債権を受働債権として相殺した場合、民法478条が類推適用されます(最判昭48・3・27)。したがって、銀行が善意・無過失であるときは、当該相殺は有効な相殺となります。

エ 妥当である。受取証書が偽造された場合でも、他の事情と総合して、「受領権者としての外観を有する者」と認められるときは、民法478条の適用を受け(大判昭2・6・22)、債務者が善意・無過失で弁済したときは、「受領権者としての外観を有する者」への弁済として有効な弁済となります。

オ 妥当である。二重に譲渡された指名債権の債務者が、債権譲渡の対抗要件を具備した他の譲受人よりのちにこれを具備した譲受人に対してした弁済についても民法478条の適用があり(最判昭61・4・11)、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となります。

 以上により、すべて妥当であり、5が正解となります。

 

 

 相殺に関する次のア~ウの記述のうち、相殺の効力が生じるものをすべて挙げた場合、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

ア AがBに対して令和2年5月5日を弁済期とする300万円の売掛代金債権を有し、BがAに対して令和2年7月1日を弁済期とする400万円の貸金債権を有している。この場合に、令和2年5月10日にAがBに対してする相殺。

イ AがBに対して令和2年5月5日を弁済期とする300万円の貸金債権を有していたところ、令和2年7月1日にAがBに対して悪意による暴力行為をはたらき、令和4年7月5日に、Aに対してこの暴力行為でBが被った損害300万円の賠償を命ずる判決がなされた。この場合に、令和4年7月5日にAがBに対してする相殺。

ウ A銀行がBに対して令和2年7月30日に期間1年の約定で貸し付けた400万円の貸金債権を有し、他方、BがA銀行に対して令和3年7月25日を満期とする400万円の定期預金債権を有していたところ、Bの債権者CがBのA銀行に対する当該定期預金債権を差し押さえた。この場合に、令和3年8月1日にA銀行がBに対してする相殺。

 

 

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ

4 イ・ウ

5 ウ

 

正解2

ア 効力が生じる。相殺が効力を生じるには、相殺適状(相殺することができる状態にあること)にあることが必要ですが、そのためには、双方の債務が弁済期にあることが必要です(505条1項)。ただし、受働債権については、債務者が期限の利益を放棄できるので(136条2項本文)、受働債権の弁済期は到来していなくても自働債権の弁済期が到来していれば相殺は効力を生じます

イ 効力が生じない。悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺は、禁止されています(509条1号)。被害者の救済と不法行為の誘発を防ぐ趣旨です。したがって、AがBに対してする相殺は効力は生じません。

ウ 効力が生じる。差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできませんが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができます(511条1項)。差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときも、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができます(511条2項本文)。したがって、令和3年8月1日にA銀行がBに対してする相殺は効力を生じます。

 以上より、相殺の効力が生じるものはア・ウとなり、2が正解となります。

 

 

 Aが「もち米」を50キロ買う契約をB米店との間で行い、Bによる引渡しの準備がまだ終わっていない場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 引渡し場所についてA・B間で決めていなかった場合に、BはAが取りに来るまで待っていればよい。

2 Bは、目的物が特定されるまでの間は、B米店にある「もち米」の保管について善管注意義務を負うことはない。

3 目的物が特定される前に、隣家の火災によりB米店の「もち米」がすべて焼失してしまった場合、その焼失はBの責任ではないので、Bは他から「もち米」を再調達して引き渡す義務はない。

4 A・B間で取り決めがなければ、Bは上等な「もち米」を50キロ引き渡さなければならない。

5 「もち米」50キロの所有権は、目的物が特定される前でも、特約がなければ、A・B間の売買契約をした時に移転する。

 

正解2

1 誤り。弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければなりません(持参債務の原則。484条1項)。もち米50キロは種類物であり、「その他の弁済」に当たるので、Bは、債権者の現在の住所に持参しなければなりません

2 正しい。米50キロの引渡請求権は種類債権であり、種類債権は、目的物が特定すると、以後、債務者は、善管注意義務を負いますが(401条2項、400条)、特定する前は、善管注意義務を負うことはありません。

3 誤り。種類債権において、債務者は目的物が特定するまでは、自己の責めに帰すべき事由によらないで滅失した場合でも、同種の物が市場に存在する限り、調達義務を負います(401条2項参照)。

4 誤り。種類債権において、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができないときは、債務者は、「中等の品質」を有する物を給付しなければなりません(401条1項)。

5 誤り。種類債権においては、原則として目的物が特定した時に所有権は買主に移転します(最判昭35・6・24)。

 

 

 AとBは、令和3年7月1日にAが所有する絵画をBに1000万円で売却する売買契約を締結した。同契約では、目的物は契約当日引き渡すこと、代金はその半額を目的物と引き換えに現金で、残金は後日、銀行振込の方法で支払うこと等が約定され、Bは、契約当日、約定通りに500万円をAに支払った。この契約に関する次のア~オのうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 

ア 残代金の支払期限が令和3年10月1日と定められていたところ、Bは正当な理由なく残代金500万円の支払いをしないまま2か月が徒過した。この場合、Aは、Bに対して、2か月分の遅延損害金について損害の証明をしなくとも請求することができる。

イ 残代金の支払期限が令和3年10月1日と定められていたところ、Bは正当な理由なく残代金500万円の支払いをしないまま2か月が徒過した場合、Aは、Bに対して、遅延損害金のほか弁護士費用その他取立てに要した費用等を債務不履行による損害の賠償として請求することができる。

ウ 残代金の支払期限が令和3年10月1日と定められていたところ、Bは残代金500万円の支払いをしないまま2か月が徒過した。Bは支払いの準備をしていたが、同年9月30日に発生した大規模災害の影響で振込システムに障害が発生して振込ができなくなった場合、Aは、Bに対して残代金500万円に加えて2か月分の遅延損害金を請求することができる。

エ Aの母の葬儀費用にあてられるため、残代金の支払期限が「母の死亡日」と定められていたところ、令和3年10月1日にAの母が死亡した。BがAの母の死亡の事実を知らないまま2か月が徒過した場合、Aは、Bに対して、残代金500万円に加えて2か月分の遅延損害金を請求することができる。

オ 残代金の支払期限について特段の定めがなかったところ、令和3年10月1日にAがBに対して残代金の支払いを請求した。Bが正当な理由なく残代金の支払いをしないまま2か月が徒過した場合、Aは、Bに対して、残代金500万円に加えて2か月分の遅延損害金を請求することができる。

 

1 ア・イ

2 ア・オ

3 イ・エ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

ア 妥当である。金銭債務の不履行に基づく損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しません(419条2項)。したがって、Aは、Bに対して、2か月分の遅延損害金について損害の証明をしなくとも請求することができます。

イ 妥当でない。債権者は民法419条1項(金銭債務の特則)に規定されている以上の実損害を被ったとしても、その賠償は請求できません。例えば、弁護士費用があります(最判昭48・10・11)。したがって、Aは、Bに対して、遅延損害金のほか弁護士費用等を債務不履行による損害の賠償として請求することはできません。

ウ 妥当である。金銭債務の不履行に基づく損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができません(419条3項)。したがって、不可抗力といえる大規模災害の影響で振込システムに障害が発生して振込ができなくなった場合、Aは、Bに対して残代金500万円に加えて2か月分の遅延損害金を請求することができます。

エ 妥当でない。本肢の「母の死亡日」とする支払期限は、不確定期限です。債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負います(412条2項)。本肢の場合、BはAの「母の死亡日」後にAから履行の請求を受けておらず、さらに、Aの母の死亡の事実を知らないため、Bは履行遅滞の責任を負いません。

オ 妥当である。本肢は、残代金の支払期限について特段の定めがなかったため、期限の定めのない債務です。この場合、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います(412条3項)。したがって、AがBに対して残代金の支払いを請求したにもかかわらず、Bが正当な理由なく残代金の支払いをしないまま2か月が徒過していることから、Aは、Bに対して、残代金500万円に加えて2か月分の遅延損害金を請求することができます。

 以上により、妥当でないものはイ・エとなり、3が正解となります。

 

 詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする行為にはあたらない。

2 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。

3 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。

4 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。

5 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

 

正解2

1 妥当でない。共同相続人間の遺産分割協議は、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるので、詐害行為取消権の対象となります(最判平11・6・11)。

2 妥当である。相続放棄のような身分行為については他人の意思による強制を許すべきでないため、相続放棄は、詐害行為取消権の対象となりません(最判昭49・9・20)。

3 妥当でない。離婚における財産分与は、特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となりません(最判平12・3・9)。

4 妥当でない。債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができます(424条の8第1項)。また、建物のように不可分の場合には、たとえその価額が債権額を超えるような場合でも、その全部を取り消すことができます(最判昭30・10・11)。したがって、「自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる」わけではありません。

5 妥当でない。債権者は、詐害行為の返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができます(424条の9第1項)。

 

 

 A、B、C三人がDから自動車1台を購入する契約をし、その売買代金として300万円の債務を負っている場合に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 

ア この場合の売買代金債務は金銭債務であり、原則として不可分債務とはならないとするのが判例である。

イ Aは、Dに対して、A、B、C三人のために自動車の引渡しを請求することができるが、Dは、A、B、C三人のためであるとしても、Aに対してだけ自動車の引渡しをすることはできない。

ウ 購入した自動車がA、B、C三人の共有となった場合には、Aは、自動車の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

エ 自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が連帯債務を負担する場合において、Aの債務についてだけ消滅時効が完成したときは、Aの負担部分については、BおよびCも、その債務を免れる。

オ 自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が連帯債務を負担する場合において、Aについては制限行為能力を理由に契約の取消しが認められるときには、Aの負担部分については、BおよびCも、その債務を免れる。

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・エ

4 ウ・エ

5 エ・オ

 

正解2

ア 正しい。判例は、複数の買主の代金債務については、性質上または特約による不可分性は認められないとし(不可分債務とはならない)、原則として分割債務であると判示しています(最判昭45・10・13)。

 

イ 誤り。A、B、Cの債権は、1台の自動車の引渡しを目的とするため性質上不可分債権です。不可分債権においては、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができます(428条)。したがって、「Dは、A、B、C三人のためであるとしても、Aに対してだけ自動車の引渡しをすることはできない。」とする本肢は誤りです。

ウ 正しい。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(249条1項)。したがって、「Aは、自動車の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」とする本肢は正しいことになります。

エ 誤り。連帯債務者の1人のために時効が完成しても、他の連帯債務者には影響を及ぼしません(相対的効力)(441条)。

オ 誤り。連帯債務者の1人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられません(437条)。したがって、「Aの負担部分については、BおよびCも、その債務を免れる」とする本肢は誤りです。

 以上より、正しいものの組合せはア・ウとなり、2が正解となります。

 

 

 共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。

2 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。

3 本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。

4 本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAはBが連帯債務者であることを知りながら、あらかじめその旨をBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても相殺をもって対抗することができる。

5 本件貸金債務につき、AはBが連帯債務者であることを知りながら、Cに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

 

正解3

1 妥当である。連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられません(437条)。したがって、Aに取消しの原因があっても、Bが債務を免れることはできません。

2 妥当である。連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅します(438条)。

3 妥当でない。本肢の弁済の猶予は、時効の更新事由の1つである承認に該当します(152条1項)。承認は、相対的な効力しかありません(441条本文)。したがって、Bの債務については時効が更新されないため、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することができます。

4 妥当である。他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができます(443条1項前段)。

5 妥当である。弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができます(443条2項)。したがって、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができます。

 

 

 保証に関する1~5の「相談」のうち、民法の規定および判例に照らし、「可能です」と回答しうるものはどれか。

 

1 私は、AがBとの間に締結した土地の売買契約につき、売主であるAの土地引渡等の債務につき保証人となりましたが、このたびBがAの債務不履行を理由として売買契約を解除しました。Bは、私に対して、Aが受領した代金の返還について保証債務を履行せよと主張しています。私が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

2 私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私の所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。

3 私の経営する会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3カ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証することとし、契約書を作成しましたが、特に極度額を定めていませんでした。このたび、この期間内のA・B間の取引によって、私が想定していた以上の債務をAが負うことになり、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきました。甲が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

4 私は、AがB所有のアパートを賃借するにあたりAの保証人となりました。このたびA・B間の契約がAの賃料不払いを理由として解除されたところ、Bは、Aの滞納した賃料だけでなく、Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証債務の履行をせよと主張しています。私は保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

5 私は、AがBから400万円の貸付を受けるにあたり、Aから依頼されてCと共に保証人となりましたが、その際、私およびCは、Aの債務の全額について責任を負うものとする特約を結びました。このたび、私はBから保証債務の履行を求められて400万円全額を弁済しましたが、私は、Cに対して200万円の求償を請求することが可能でしょうか。

 

正解5

1 回答しえない。特定物の売買契約における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても、保証責任を負います(最大判昭40・6・30)。

2 回答しえない。物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、委託を受けた保証人のようにあらかじめ求償権を行使することはできません(460条、最判平2・12・18)。

3 回答しえない。一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)であって保証人が法人でないもの個人根保証契約)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負います(465条の2第1項)。この個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じません(465条の2第2項)が、保証人が法人の場合には上記の規定は適用されません。

4 回答しえない。賃借人の保証人は、賃料不払によって賃貸借契約が解除された場合、賃借人が目的物の返還債務を履行しないことにより賃貸人に与えた損害の賠償債務についても保証責任を負います(大判昭13・1・31)。

5 回答しうる。共同保証人相互間で債務の全額について責任を負う旨の特約を結ぶ場合を「保証連帯」といい、「保証連帯」における保証人は分別の利益を有しません。しかし、共同保証人の1人が自己の負担部分を超える弁済をした場合には、超える部分について他の共同保証人に求償することができます(465条1項)。

 

 

 AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。この場合に関する以下の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、CD間には負担部分に関する特段の合意がないものとする。

 

1 CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及び、Dに対しては、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

2 CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及び、Dに対しては、500万円である。

3 CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

4 CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

5 CはDに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

 

正解2

1 誤り。Cは主たる債務者であるAに対しては、1000万円及び求償権行使までに生じた利息、遅延損害金まで求償することができます。一方、共同保証人Dに対しては、利益を受けた限度とされる500万円の求償ができるにすぎません。したがって、「Dに対しては、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。」とする本肢は誤りです。

2 正しい。肢1の解説により、「CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及び、Dに対しては、500万円である。」とする本肢は正しい記述です。

3 誤り。肢1の解説により、Cは、Dに対しても500万円の求償ができます。

4 誤り。肢1の解説により、Cは、Aに対しては、「1000万円」及び求償権行使までに生じた利息、遅延損害金まで求償することができます。また、Dに対しても500万円の求償ができます。

5 誤り。肢1の解説により、Cは、Dに対して500万円の求償ができるにすぎず、求償権行使までに生じた利息、遅延損害金を求償することができません。また、Aに対しても1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金を求償することができます

 

 

 Aは、Bに対して金銭債務(以下、「甲債務」という。)を負っていたが、甲債務をCが引き受ける場合(以下、「本件債務引受」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

1 本件債務引受について、BとCとの契約によって併存的債務引受とすることができる。

2 本件債務引受について、AとCとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、BがCに対して承諾をした時に、その効力が生ずる。

3 本件債務引受について、BとCとの契約によって免責的債務引受とすることができ、この場合においては、BがAに対してその契約をした旨を通知した時に、その効力が生ずる。

4 本件債務引受について、AとCが契約をし、BがCに対して承諾することによって、免責的債務引受とすることができる。

5 本件債務引受については、それが免責的債務引受である場合には、Cは、Aに対して当然に求償権を取得する。

 

正解5

1 正しい。併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができます(470条2項)。したがって、BとCとの契約によって併存的債務引受とすることができます。

2 正しい。併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができます。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生じます(470条3項)。したがって、AとCとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、BがCに対して承諾をした時に、その効力が生じます。

3 正しい。免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができます。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生じます(472条2項)。したがって、BとCとの契約によって免責的債務引受とすることができ、この場合においては、BがAに対してその契約をした旨を通知した時に、その効力が生じます。

4 正しい。免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができます(472条3項)。したがって、AとCが契約をし、BがCに対して承諾することによって、免責的債務引受とすることができます。

5 誤り。免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません(472条の3)。したがって、「Cは、Aに対して当然に求償権を取得する」とする本肢は誤りです。

 

 

 弁済に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。

2 同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。

3 金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済により債務を消滅させるためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。

4 債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。

5 債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。

 

正解1

1 妥当でない。債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限ります。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければなりません(489条1項)。そして、この規定は、当事者の合理的な意思に適し、公平にも適うものであるとされ、当事者が合意する場合は別として一方当事者の指定によりこの順序を変更することはできません。したがって、「債務者による充当の指定がない限り」とする本肢は妥当ではありません。

2 妥当である。債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます(488条1項)。そして、弁済をする者が上記の指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りではありませ(488条2項)。

3 妥当である。代物弁済は諾成契約ですが、代物弁済による債務消滅の効果が生じるためには、債権者と債務者の契約の他に、目的物が現実に引き渡される不動産の場合は登記の移転も必要(最判昭40・4・30))必要があります。

4 妥当である。弁済の提供は、原則として、債務の本旨に従って現実にしなければなりません(現実の提供)(493条本文)。ただし、債権者があらかじめ受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知して受領を催告すれば足ります(口頭の提供)(493条ただし書)。なお、債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れます(最大判昭32・6・5)。

5 妥当である。弁済者は、①弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき、②債権者が弁済を受領することができないときは、債権者のために弁済の目的物を供託することができます。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅します(494条1項)。

 

 

4月17日現在

終了レッスン数:510

総学習時間:110時間4200

こんにちは、おっさんです。

4月なのに夏みたいな気温です。

1日の中での気温差があり

体調管理が難しいですが

勉強頑張ります。

 

セレクト過去問集-民法3

の結果は、9問中、5問正解でした。

 

 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

 

1 Aの抵当権が実行された場合、抵当権設定時に建物内に置いていたB所有の家電製品のテレビには抵当権の効力は及ばない。

2 抵当権設定時にB所有の土地の登記名義はCであった場合でも、抵当権実行により買受人Dのために法定地上権が成立する。

3 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をEに賃貸した場合、BのAに対する債務不履行後に生じた賃料について抵当権の効力が及ぶので、抵当権の実行としてAはこの賃料から優先的に弁済を受けることができる。

4 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をFに賃貸した場合、対抗要件を備えた短期の賃貸借であっても、賃借人Fは抵当権実行による買受人Gに対抗できない。

5 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をHに賃貸してHがその旨の登記を備えた場合、抵当権実行による買受人Iからの明渡請求に対して、賃借人Hは、明渡しまでの使用の対価を支払うことなく、6ヶ月の明渡猶予期間を与えられる。

 

正解5

1 正しい。抵当権の効力は抵当権設定当時の抵当不動産の従物に及びますが(大連判大8・3・15)、建物内のテレビは建物の従物でもなく、加一体物(370条本文)でもないので、抵当権の効力は、テレビには及びません。

2 正しい。判例は、建物に抵当権を設定した当時、土地と建物が同一人の所有に属し、土地が前主の登記名義であった場合にも、抵当権の実行により建物を買い受けた者のために法定地上権が成立するとしています(最判昭48・9・18)。

3 正しい。抵当権は、被担保債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及びます(371条)。したがって、Aはこの賃料から優先的に弁済を受けることができます。

4 正しい。抵当権設定登記の賃貸借は、短期の賃貸借(建物は3年以内)であっても、原則として抵当権者及び買受人に対抗できません(387条参照)。

5 誤り。抵当権設定登記後の賃貸借は、その期間の長短にかかわらず、原則として抵当権者及び買受人に対抗できません。しかし、抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当建物を使用する者を保護するために、買受人の買受けの時から6ヶ月間、建物引渡しの猶予を認めています(395条1項)。ただし、賃借人は、引渡しまでの使用の対価を支払わなければなりません(395条2項)。

 

 

 抵当権の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。

2 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。

3 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。

4 抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対しても物上代位権を行使することができる。

5 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。

 

正解3

1 妥当でない。抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及びます(大連判大8・3・15)。この場合、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備していなくても、その旨を第三者に対して対抗することができます(最判昭44・3・28)。

2 妥当でない。借地上の建物に抵当権が設定された場合、その建物の抵当権の効力は、従たる権利である敷地の賃借権にも及びます(最判昭40・5・4)。

3 妥当である。判例は、買戻特約付売買の買主から目的不動産について抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると判示しています(最判平11・11・30)。

4 妥当でない。判例は、抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸料債権について物上代位権を行使できないと解すべきであると判示しています(最決平12・4・14)。

5 妥当でない。抵当権者が、利息を請求する権利を有するときは、そのうち満期となった最後の2年分についてのみ、競売代金から優先弁済を受けることができるのが原則です(375条1項本文)。したがって、「原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。」とする本肢は妥当ではありません。

 

 

 Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権の消滅に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

 

ア Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確定的に消滅する。

イ Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、Bから土地の所有権を取得したCが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

ウ BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

エ 第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

オ 第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済した場合には、CはAに代位することができるが、抵当権は、確定的に消滅する。

 

1 ア・ウ

2 ア・エ

3 イ・エ

4 イ・オ

5 ウ・オ

 

正解3

ア 妥当でない。根抵当権の債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該根抵当権の元本は確定します(398条の20第1項4号)。元本の確定は、被担保債権が特定することであり、根抵当権は消滅せず、普通抵当権と同様の扱いとなります。

イ 妥当である。根抵当権の元本確定後に現存する債務の額が、当該根抵当権の極度額を超えている場合には、物上保証人や第三取得者等は、極度額に相当する金額を根抵当権者に支払うことにより、当該根抵当権の消滅請求をすることができます(398条の22第1項)。

ウ 妥当でない。民法375条は、一般債権者や後順位抵当権者との関係で抵当権者の優先弁済権の範囲を制限したものであり、債務者又は設定者は元本債権のほか利息・損害金の全額を弁済しなければ抵当権を消滅させることはできません(375条、大判大4・9・15)。

エ 妥当である。第三者が抵当不動産を時効取得したときは、当該不動産上の抵当権は消滅します(397条)

オ 妥当でない。債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します(499条)。債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができます(501条1項)。したがって、抵当権は消滅しません。

 

 

 根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

 

1 被担保債権の範囲は、確定した元本および元本確定後の利息その他の定期金の2年分である。

2 元本確定前においては、被担保債権の範囲を変更することができるが、後順位抵当権者その他の第三者の承諾を得た上で、その旨の登記をしなければ、変更がなかったものとみなされる。

3 元本確定期日は、当事者の合意のみで変更後の期日を5年以内の期日とする限りで変更することができるが、変更前の期日より前に変更の登記をしなければ、変更前の期日に元本が確定する。

4 元本確定前に根抵当権者から被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使することができないが、元本確定前に被担保債務の免責的債務引受があった場合には、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができる。

5 根抵当権設定者は、元本確定後においては、根抵当権の極度額の一切の減額を請求することはできない。

 

正解3

1 誤り。根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができます(398条の3第1項)。したがって、被担保債権の範囲を元本確定後の利息その他の定期金の2年分とする本肢は誤りとなります。

2 誤り。元本の確定においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができます(398条の4第1項前段)。この変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しません(398条の4第2項)。なお、変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます(398条の4第3項)。したがって、「後順位抵当権者その他の第三者の承諾を得た上で」とする本肢は誤りとなります。

3 正しい。根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができますが、この期日は、これを定め又は変更した日から5年以内でなければなりません(398条の6第1項・3項)。そして、この期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定します(398条の6第4項)。

4 誤り。元本の確定に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができません(398条の7第1項前段)。元本の確定に債務の引受けがあったときも、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができません(398条の7第2項)。したがって、「被担保債務の免責的債務引受があった場合には、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができる」とする本肢は誤りとなります。

5 誤り。元本の確定においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができます(398条の21第1項)。

 

 

 機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、明らかに誤っているものはどれか。

 

1 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。

2 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

3 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。

4 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。

5 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

 

1 正しい。担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます(398条の19第1項前段・3項)。一方、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合、根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができます(398条の19第2項前段・3項)。

2 正しい。元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができます(398条の4第1項前段)。この変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しません(398条の4第2項)。そして、この変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます(398条の4第3項)。

3 正しい。元本の確定においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができます(398条の21第1項)。極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができます。

4 明らかに誤り。根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができます(398条の3第1項)。したがって、Bは、「極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる」とする本肢は明らかに誤りです。

5 正しい。根抵当権は、元本が確定するまでは随伴性がないため、元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができません(398条の7第1項前段)。

 

 

Aは、Bから建物(以下、本件建物という)を賃借し、Aは、その建物内に電気製品(以下、本件動産という)等を備え付けている。Bの先取特権に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

 

ア 本件動産がCの所有物である場合に、本件動産について、Bは、先取特権を即時取得することはできない。

イ Aが本件動産をCから買ったが、まだCに対して代金の支払いがない場合において、本件動産についてCの先取特権がBの先取特権よりも優先する。

ウ Aがその所有物である本件動産をDに売って引き渡した場合に、本件動産について、Bは、先取特権を行使することはできない。

エ Aがその所有物である本件動産をDに売った場合に、Aの取得する売買代金について、Bは、Dの支払い前に差押えをすれば、先取特権を行使することができる。

オ Aが、Bの承諾を得て、本件建物をEに転貸した場合に、Bの先取特権は、Eの備え付けた動産には及ばない。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ

 

正解3

ア 誤り。先取特権は、本来、債務者の所有物の上に成立するものですが、善意の債権者を保護するため、先取特権について、即時取得が認められています(319条、192条)。

イ 誤り。同一の動産について、Bの不動産賃貸の先取特権とCの動産売買の先取特権が競合しますが、この場合、Bの不動産賃貸の先取特権が優先します(330条1項1号・3号)。

ウ 正しい。先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができません(333条)。

エ 正しい。先取特権は、その目的物が売却されたときは、その売買代金に対して、それが支払われる前に差し押えることにより先取特権を行使することができます(物上代位。304条1項)。

オ 誤り。賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及びます(314条前段)。通常、賃借権の譲渡又は転貸の場合には、動産が備え付けられたままなされることが多く、目的物である動産が引き渡された場合に先取特権の効力が及ばなくなることを防ぐ趣旨です。

 以上より、誤っているものはア・イ・オの三つとなり、3が正解となります。

 

 

 質権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

2 不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

3 債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。

4 不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。

5 質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。

 

 

1 妥当である。動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず(352条)、動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができます(353条)。

2 妥当である。質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じます(344条)。ただし、不動産質権は、登記をしなければ、第三者に対抗できません(177条)。

3 妥当である。即時取得が成立するための、要件の1つである「取引行為」には、質権設定契約も含まれます。

4 妥当でない。不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができます(356条)。この場合において、設定者の承諾を得ることは要件とされていません。

5 妥当である。質権は、財産権をその目的とすることができます(362条1項)。

 
 

 留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有すべきであるが、善良な管理者の注意とは、自己の財産に対するのと同一の注意より軽減されたものである。

2 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物について使用・賃貸・担保供与をなすことができず、留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を使用した場合、留置権は直ちに消滅する。

3 建物賃借人が賃料不払いにより賃貸借契約を解除された後に当該建物につき有益費を支出した場合、賃貸人による建物明渡請求に対して、賃借人は、有益費償還請求権を被担保債権として当該建物を留置することはできない。

4 Aが自己所有建物をBに売却し登記をB名義にしたものの代金未払のためAが占有を継続していたところ、Bは、同建物をCに転売し、登記は、C名義となった。Cが所有権に基づき同建物の明渡しを求めた場合、Aは、Bに対する売買代金債権を被担保債権として当該建物を留置することはできない。

5 Dが自己所有建物をEに売却し引渡した後、Fにも同建物を売却しFが所有権移転登記を得た。FがEに対して当該建物の明渡しを求めた場合、Eは、Dに対する履行不能を理由とする損害賠償請求権を被担保債権として当該建物を留置することができる。

 

正解3

1 妥当でない。留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければなりません(298条1項)。この善良な管理者の注意とは、一般人に要求される程度の注意のことであり、「自己の財産に対するのと同一の注意より軽減されたものであるいう意味」ではありません。

2 妥当でない。留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができません(298条2項本文)。留置権者が当該規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができます(298条3項)。本肢のように「留置権は直ちに消滅する」わけではありません。

3 妥当である。判例は、「建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原がないことを知りながらその建物を不法に占有する間に有益費を支出した場合、その者は、民法295条2項の類推適用により、費用の償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない」と判示します(最判昭46・7・16)。

4 妥当でない。判例は、不動産の買主が売買代金を未払いの状態のまま当該不動産を第三者に譲渡した場合の代金支払請求権を被担保債権として、当該不動産を留置することを認めています(最判昭47・11・16)。

5 妥当でない。判例は、不動産の二重売買がされ引き渡した後、一方の買主のために所有権移転登記がされた場合における、他方の買主の売主に対する損害賠償請求権を被担保債権として当該不動産を留置することを認めていません(最判昭43・11・21)。

 
 

 物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 

ア 他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。

イ 一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。

ウ 構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。

エ 土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。

オ 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

 

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・エ

4 ウ・エ

5 エ・オ

 

正解2

ア 妥当でない。地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます(269条の2第1項前段)。

イ 妥当である。一筆の土地の一部でも、その所有権を時効によって取得することができます(大連判大13・10・7)。

ウ 妥当でない。構成部分の変動する集合動産であっても、種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、1個の集合物として譲渡担保の目的となり得ます(最判昭54・2・15)。

エ 妥当である。土地に育成する立木(樹木)についても、明認方法を施すことにより、土地とは独立して譲渡することができます(大判大10・4・14など)。

オ 妥当である。地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(283条)。

 以上により、妥当でないものはア・ウであり、2が正解となります。

 

 

4月16日現在

終了レッスン数:508

総学習時間:109時間2515