肝硬変患者の低酸素血症について | リハビリに注ぐ少々のスパイス

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臨床での疑問をもとに、色々なことを書いています。
教育にも興味があるので、少しでも多くのセラピストのためになる記事を書きたいと思っています。

肝臓リハビリテーション

なんて言葉はまだあまり聞いたことがない。

心臓リハビリテーション

呼吸リハビリテーション

腎臓リハビリテーション

ここらまではきてるから、きっと近い将来肝臓も来ると思っています。

ただ、やはり肝臓というのは人体の中でも重要臓器なだけに肝機能障害、肝不全の体への影響はものすごく大きいのも事実。

生命予後や病態をしっかり把握してからのリハビリテーション分野としての確立が期待されます。

私もまだこの分野は疎いので、これから勉強していこうと思っています。

そもそも、肝臓疾患はリハビリの直接の対象ではないので患者数としても少ないのが現状。

そんな中、ここ最近当院には肝硬変患者の入院が続いています。
目的は他疾患に対するリハビリなんだけど、肝硬変があるというのはなかなかリハビリ進行阻害因子となっています。

その中で、私の担当患者さんが最近SpO2の低下が強くなってきたので調べてみると、肝肺症候群の疑いもあるのかと思うようになってきました。

Hepatopulmonary syndrome

という名前は1977年に初めて報告されたらしい、私より先輩です^^;

何年か前に肝硬変を調べたときや多臓器連関を学んだ時に確かにこの言葉は聞いていたが、いざ目の前に症例がなかったので今一つぴんとこなかったけど、今はすごく興味深い。

今回の記事ではまだ勉強中なので触りくらいしか書けないけど、今後詳しく調べていこうと思っています。

だって、低酸素ってのはリハビリを進めていくうえでとっても問題となりますからね。
低酸素という謎が多く魅惑の分野に誘われている感じです。

さて、では肝臓が悪くなるとなぜ肺に影響が出るのでしょうか?

これは、肝不全に伴い種々の原因で血管拡張物質(NOなど)が増加することが一因と考えられているようですが、まだまだ詳細は明らかでないようです。
血管拡張物質が肺の毛細血管を拡張させてしまいます。

これは肺血流シンチグラフィという検査によって分かります。
通常はほとんど肺毛細血管を通過できないくらいの大きさの物質を血液に流してその動向を追います。すると、肝肺症候群の方はたくさん漏れてします。つまり、全身に流れていくわけ。

これはつまり肺の毛細血管が拡張しているサイン。

では、なぜ毛細血管が拡張すると低酸素になるのでしょう?
血流が増えれば酸素化が良くなりそうな印象を受けますが、実はそうではないのです。

肺内シャント

って言葉があります。

右左シャント

って言ったりしますが、要は静脈血が酸素化されずに動脈血に混じってしまうこと。

これの割合が大きくなると酸素化不良の原因になります。

肝肺症候群の症状の一つに労作時の息切れ、PaO2の低下があります。
これは運動によって血流が増えるけど、その血液の酸素化が間に合わないことが一つの原因です。
つまり、毛細血管ってのはたくさん流れると酸素化が間に合わなくなることがあるということ。
まして間質の病変があったりするとそれを助長してしまいます、実際肝硬変患者の多くは間質にも変化が起こっているという報告もあるらしい。

ということは、肺にしたら酸素化に不利に働くわけであり、迷惑極まりないのが肺内シャントです。

ただし、肝硬変で低酸素になるのはそれだけではありません。
貧血や低栄養、胸水、腹水など他にもいろいろ原因があります。

私の患者の場合でも、詳細な検査ができないので肝肺症候群と確定診断をすることは容易ではないでしょう。
実際、腹水貯留ありますし、ヘモグロビンもかなり低値(ヘモグロビン低値だとかえってSpO2は高く出ることもあります)だし、聴診してる感じでは間質性変化や胸水貯留はありそうだし。

どっちかというと、肝肺症候群以外の要素が強い印象もあります。
いずれにしても、すぐにはぁはぁいうようになっているのはとても気がかり。

今後のリハビリの行方を左右しかねないです。

魅惑の臓器肝臓についてでした。