文献抄読その1 変形性膝関節症の循環応答 | リハビリに注ぐ少々のスパイス

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臨床での疑問をもとに、色々なことを書いています。
教育にも興味があるので、少しでも多くのセラピストのためになる記事を書きたいと思っています。

最近は5月12日のセミナーの資料作成に追われすっかりメルマガが配信できずにいました。

なんせ、メルマガ書くのって色んなところから情報を集めないといけないから時間がかかるんです。

でも、最近資料作成の為に異状なくらい文献を読んでいます。
ということは、文献抄読をしたらいいんじゃないか!?
っていう結論がようやく出ました。
なんで今までこの発送に至らなかったのか・・・笑

最近は英文献をよく読んでいます。
やっぱり日本の文献は原著が少ないし、欧米の文献には勝てないですねぇ。
今日は日本の文献抄読ですが、今後は英文献の文献抄読もやっていこうと思います。

英語ができるできないはあるでしょうが、やっぱり読まないとその道を深く追求することはできないと思います。
特に内部障害系なんてほとんどの参考文献が英語です。
ということは内部障害系の文献を書こうと思ったらやっぱり英語が必須なんですね。

僕は幸いにして比較的英語が得意なんです。
大学受験で頑張ったご褒美です★笑

でも、特別な知識があるわけじゃないですし、わからない英単語はいくらでもあります。
そこは調べながら読み進めるしかないんですよね。
根気がいりますが、それは皆同じ。
めげずに読み込んでいきましょう!!

文献抄読の方法は今後適宜改善していこうと思います。
どうしても一方通行になるので、単にまとめるだけじゃなくてなるべくわかりやすくまとめるような感じにしようか検討中です。
あくまでも、コピペではなく私の私見や先入観も踏まえての情報提供と考えてください。
とりあえずやってみます。

では、今回の文献です。

大槻桂右:理学療法の介入による心疾患症状を有した変形性膝関節症患者の循環応答の変化.心臓リハビリテーション16(2):207-212,2011

【はじめに】
近年の高齢化により心疾患患者は増加しています。
同様に、退行性変性疾患の代表格である変形性膝関節症(以下、膝OA)はもちろん増加の一途です。
つまり、これからはこのような複数の疾患を重複した症例が増えてくることは間違いないでしょう。
心不全症例では労作時の息切れが原因で活動量が低下しています。
息切れがあるからと言って膝OAの患者さんに対する理学療法を辞めることはありません。
では、膝OA患者の疼痛や変形などが動作時の血圧反応を変化させ息切れを増悪させているかもしれません。
そこで、今回の研究では膝OAの理学療法を4週間実施し、1分間の起立着座訓練後のBorg指数と循環応答(収縮期血圧,脈圧,平均血圧,心拍数二
重積)の変化を比較しています。

【対象】
心疾患症状を有する膝OA患者35名
内訳:女性:男性=30:5
   狭心症20名 心筋梗塞7名 慢性心不全7名 肥大型心筋症7名
   NYHAClass分類Ⅰ15名、Ⅱ17名、Ⅲ3名 Ⅳは除外対象とした
コントロール群:心疾患を有しない膝OA患者7名

【方法】
週4回、1回40分の膝OAに対する理学療法を4週間実施。
主な内容:下肢関節可動域訓練 ストレッチング 下肢筋力強化訓練 座位・立位バランス訓練 歩行訓練 負荷量は最大筋力の60%

循環応答の測定:非観血型血圧監視装置(BP-203;Colin Med Tech)
測定項目:収縮期血圧 脈圧 平均血圧 心拍数 二重積

1分間の起立着座訓練後30秒以内に測定
歩行時のエネルギー効率は生理学的コスト指数(Physiological cost index;PCI)を利用。
PCI=(安静時心拍数-1分間の歩行後の心拍数)÷歩行速度

【結果】
コントロール群において安静時・起立着座訓練後いずれにおいても循環応答に有意な変化は認められなかった

心疾患群において
●安静時
 心拍数、二重積に有意な改善を認めた
●起立着座訓練後
収縮期血圧、脈圧、二重積に4週間後に有意な改善を認めた

起立着座訓練の回数、PCIいずれにおいても心疾患群のみ有意な改善が見られた。
一方、コントロール群においては有意な改善は見られなかったが改善傾向にあった。

Borg指数は両群とも有意に改善した。

【考察】
安静時の収縮期血圧や心拍数の低下は運動療法により,末梢作業筋の血管抵抗の減少心拍出量の増加による動静脈酸素分圧較差の改善,さらに交感神経緊張の減少による副交感神経機能の改善などが考えられる

安静時の収縮期血圧を改善できなかった理由としては、本研究の運動療法が有酸素運動を取り入れていなかったため動脈のコンプライアンスの改善が得られなかった可能性がある。



詳細を知りたい方は原文を読んでくださいね。
今回の研究で大事なことは、有酸素運動なしでも循環応答の改善が得られたということでしょう。
昔から心臓リハといえばエルゴや歩行など有酸素運動が中心でした。
中心が有酸素運動なのは今でも変わりませんが、最近はレジスタンス運動が有効であるという報告も散見されています。

今回の報告では有酸素運動なしでの効果です(歩行訓練はしていますが)、こういう報告は以外に少ないように思います。
適切な負荷量で行えば安全にレジスタンストレーニングで効果を得られるわけですね。

コントロール群でも有意差がでているのは高齢者に対する運動療法の効果と見れるでしょう。
今回の研究では自律神経に関しては特別データを取っていません。
レジスタンストレーニングが自律神経系にどのような影響を及ぼすのか、気になるところですね。

いずれにしてもおもしろい研究だと思ったので今回取り扱いました。
私の私見については異論がある方もいるでしょうが、あくまで一個人の意見だと思って聞いてもらえればいいと思います^^