コンプレッサ 3 | Pro Tools Chips

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体系化して書くのが面倒なので、思いついたときにアップする断片的なTips
基本自分の環境(iMac 2.6G/4M 10.5.7 PT8LE 002Rack)以外での検証はしていません。

8-4-9 各種コンプレッサ


UREI #1176

昔からあるレコーディングスタジオには必ずあるといってもいいコンプレッサだ。UREI(ユーレイ・ウーレイ)というメーカの製品。現在では設計者の息子がUniversal Audioのブランドで発売している。

スレッショルド
#1176がコントロール系で変わっているのは、スレッショルドは固定で、設定するつまみが付いていないことだ。それじゃどうやってスレッショルドを決めるのかというと、パネル左側の「INPUT」(インプット)と「OUTPUT」(アウトプット)のつまみを使うのだ。

つまりスレッショルドを一定にしておいて、インプットを下げて入力を小さくすれば、相対的にスレッショルドは上がるし、インプットを上げて入力を大きくすれば、スレッショルドは相対的下がるということだな。ただしそのままでは、入力された信号に対して出力が大きくなったり小さくなったりして不都合なので、アウトプットのつまみで、インプットを下げた時は大きく、インプットを上げた時は小さくしてやってバランスを取るわけだ。

具体的な手順は、アウトプットのつまみを適当に上げ、(12時くらいでいいと思う)音を聞いて(GRメーターでも確認しながら)インプットのつまみを徐々に上げていってコンプレッサのかかり具合(スレッショルド)を調整する。それが終わったら、コンプレッサをバイパスした時の音量と同じ様な音量になるようにアウトプットつまみを微調整するということだ。

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元々一度決めたら滅多に動かさないような用途(放送の送信機の前にはさむリミッタとしてなど)に設計されているということなんだけど、「もう少しスレッショルドを変えよう」と思った時に音量まで変化してしまうので、やはりエフェクタとしては使いにくいことは確かだ。スタジオではエンジニアが両手を使って金庫破りのような格好で操作している。

レシオ
レシオはスイッチによる選択式で4・8・12・20:1の4段階が得られるが、数字から受けるイメージよりはおとなしいかかり方をする。まあでもほとんどの人は4:1しか使わないんだけどね。あと有名なのがここの全部押し。機械式のスイッチなのをいいことに誰かが戯れに全部押してみたら、おとなしい1176が鬼畜に早変わり♪ということで、音を積極的に変化させたいときの飛び道具として重宝していた。(DAWの派手なエフェクトに慣れた耳には大した変化に聞こえんかもしれないけど。)

回路上全部押さなくても両端の4と20が押してあれば全部押しと一緒になる。逆に、2つ押しや3つ押しは全部押しとは異なった音になるので、やってみる価値はある。(私は真ん中の2つ押しが好き)ただ、あるはずの抵抗をバイパスすることになるなり、設計の想定外の使い方で場合によってはスイッチ周りの抵抗が焼けることもあるらしいので、他人の機材の場合は一応訊いてからやった方がいいだろう。(ちなみにGRメータも右に振り切る)

アタック・リリース
ともに連続可変でアタックが20~800μ秒、リリース50~1100m秒(補助単位が違うのに注意)だ。アタックのつまみを左に回しきると、カチッと音がしてコンプレッサがバイパス状態になる。ちなみに間違えている人が多いんだけど、他のコンプと逆でアタックリリースとも右に回しきった状態が一番「速い」状態なので気をつけよう。1176の音が好きな人はアタックのつまみを左に回しきったバイパス状態でコンプレッサとしてではなく、薄味の付くラインアンプとして使う人もいる。

リビジョン
なんか韓国俳優の名前みたいだけど、ソフトウエアのバージョンみたいなもので、ハードウエアの細かい違いに対して付けられるもの。だいたいの1176はシリアルナンバーの後ろにリビジョンのアルファベットが書いてある。

Rev.A 1967年6月20日発売 シリアル101-125
レアなモデルで持っている人はまず手放さない。外観はアルミのブラシ仕上げに青のストライプが入ったもの。Peerless社(のちにUTC社のものとなる)の600オーム入力トランスが入っている。

ゲインリダクション部の後にはバイポーラトランジスタアンプ回路と出力ボリュームが入っている。出力レベルの回路は2N3053トランジスタによるA級動作。入力部にはT型アッテネーターがつけられている。オリジナルのUA-5002出力トランスは、二次側にタップをもち、独立したNFB用の出力も持つ。このトランスは後に改良型のUA-5002Aに置き換えられるが、これは1176LNと同じもの。



Rev.AB 1967年11月20日発売 シリアル126-216
安定性とノイズ低減のためプリアンプ部の抵抗値が数本変更になっている。またゲインリダクション周りのFETにバイパスコンデンサがつけられた。



Rev.B 1967年11月~1970年1月 シリアル217-1078
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FET回路の変更と、入力トランスにFETゲインリダクション部へのフィードバック用タップの追加。現在あるブルーストライプのものは殆どこのRev.B。とはいってもブルーストライプは40年近くも前に約1000台だけ製造されたものなので、大変珍しいものには違いない。



Rev.C 1970年1月 シリアル1079-1238
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最初のブラックパネルで(といっても現在のUniversal Audioの黒より赤っぽく、マニアはゴールドブラックと呼ぶ。)最後にローノイズを表すLNが付くようになった。Brad Plunkett氏の設計による回路が追加されていたが、特許出願中であったため、エポキシ樹脂でこの部分は固めてある。この回路はゲインリダクション部にあるFETのドレインからソースへの電圧を減らし、直線性をよくするものだった。この回路と、Qバイアスの半固定抵抗はRev.Bの基盤の上に直接半田付けされていた。



Rev.D 1973年 シリアル1239-2331
回路の変更はないが、Rev.Cで直接半田付けされていた半固定抵抗と、LN回路がメインの基盤に組み込まれるようになった。



Rev.E 1973年3月15日まで シリアル2332-2611
110Vと220Vに対応するよう、電源トランスが変更された。これに伴い、リアパネルに電源電圧の切り替えスイッチが増設された。



Rev.F 1973年3月15日以降 シリアル2611-7052
出力段がオリジナルのA級動作から1109によるプッシュプル回路に変更になったことにより、より出力が出せるよう出力トランスが変更になっている。加えてメーター周りの回路がオペアンプに変更になり、メーターあわせや出荷テストが簡単になった。



Rev.G 不明 シリアル7053-7651
入力トランスがオペアンプによる平衡回路に置き換えられトランスレスに。トランスをオペアンプに置き換えることはコスト削減になり、トランスによる音質劣化を避けられるので、このころのオーディオメーカに取っては当たり前の「改良」だった。ただ現在ではそれが改悪と見なされている。



Rev.H 不明 シリアル7652以降
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フロントパネルが銀色に変更。メータ部のオフボタンが赤色に。またこのモデルのみ青色のUREIのロゴがフロントパネルの右側に付いている。



UA 2000年4月1日 シリアル101より現在に至る
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Universal Audio再販バージョンで、もっとも人気のあるRev.DとEの再現。フロントパネルはほぼ同じデザインだが、黒色が微妙に違う。(このモデルの方が真っ黒)また最近の使用状況を考え、入出力にはXLRが標準装備されている。



★リビジョンについては下記サイトを参考にした
http://mixonline.com/mag/audio_revision_history/
http://www.uaudio.com/webzine/2003/august/text/content4.html


プラグイン
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ProTools用のプラグインとしては、Bomb Factory Classic Compressorバンドルに含まれていたBomb Factory 1176が。Bomb Factory BF76と名前を変え無料でダウンロードできるようになっている。ちなみに全部押しもちゃんとできる。(レシオのボタンをシフトを押しながらクリック)

↓全部押し
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シミュレータなので、全く一緒の音になるわけではないけど、

複数のトラックに自由に使える。
サイドチェーン入力がある。
オプション機器なしでステレオ化できる。
オートメーション動作をさせることができる。

などのメリットがあるので、無料になったことし、ProToolsの中には必ず入っているプラグインとなりつつある。ちなみにデフォルトのINPUTとOUTPUTのつまみの位置は、実機の+4dBmのユニティゲイン。INPUTの位置が+4dBmの入力を入れたときちょうどスレッショルドレベルになり、OUTPUTはその状態で出力に+4dBmが出るつまみの位置になっている。プラグインだからそんなところまで表現しなくても良さそうなもんだが…。そのほかレシオの切り替えの時にメーターがぴくっと反応したりとなかなか芸の細かい作りになっている。



UREI #1178



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1176のステレオ仕様のもの。2台入ってお買い得のようにも思うが、1176であまり人気のないRev.Hをベースとしているのと、マルチモノ(2チャンネル分の独立したコンプレッサ)として使うには、アタック・リリース・レシオが共通なので使いにくいということで、1176ほどの人気はないが、入力トランスは付いていてそれなりに通すとサウンドは変化するので、ステレオ音源に気軽に使えるのはメリット。










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