脊髄小脳変性症
1.MSNA
SCD群では頭部挙上負荷による血圧とMSNAの増加反応も低下しており、起立性低血圧のみられないSCD患者であっても潜在的なノルアドレナリン作動性自立神経系の異常が認められるものと考えられた。
これは明らかに血圧低下が起こる人はもちろん、全ての患者様に注意が必要ということがわかります。
2.SSNA
SCD患者において、安静時のSSNA活動の全般性の低下傾向に加えて、SCDの自律神経障害が高度となるにつれてSSNA反射性バースト活動潜時は延長し、振幅も低下して、最後には導出不能となることが推測された。

筋交感神経活動も皮膚交感神経活動も低下していることがわかります。
SCDでは当たり前に言われている事ですが、自律神経障害には注意が必要です。

以上です。詳細は下記または文献をご覧ください。
明日はPDです。

Microneurographyの神経変性疾患の応用
新藤和雅  BRAIN and NERVE 61(3) : 263-269,2009


Ⅱ.脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration : SCD)
1.MSNA
広義のSCDの中での、起立性低血圧による失神を繰り返すなどの自律神経障害のみられる多系統委縮症(multiple system atrophy : MSA)では、MNGによる末梢交感神経活動記録は困難なことが多いとされている。KachiらはMSA患者でMSNA記録を行い、基礎活動が低下し、起立負荷に対する反応性も低下していたと報告している。またHakusuiらは、食事性低血圧のあるMSA患者では経口ブドウ糖負荷によるMSNAの上昇反応が欠如していたと報告し、MSAにおける重篤な低血圧発作の原因としては代償性の交感神経賦活がみられないことが重要と述べている。筆者らは、立位負荷試験にて起立後明らかな血圧低下のみられないSCD患者を選んでMSNA記録を行った。その結果、SCD患者群ではどの年齢でも対照と比較してMSNAは低値を示す傾向が認められた。SCD群では頭部挙上負荷による血圧とMSNAの増加反応も低下しており、起立性低血圧のみられないSCD患者であっても潜在的なノルアドレナリン作動性自立神経系の異常が認められるものと考えられた。
2.SSNA
SCD患者において、SSNAを記録した報告は山本らのものが最初であり、MSA患者7例では安静時のSSNA基礎活動が低下し、暗算などの負荷刺激に対する反応性も減弱していたと報告している。筆者らは12例のMSA患者を含むSCD患者でSSNA記録を行った。その結果、安静時のSSNA活動の全般性の低下傾向に加えて、自律神経症状の少ない皮質性小脳萎縮症患者群では軽度、明らかな自律神経障害のみられたMSA-C(multiple system atrophy-C)群では著しく、SSNAの反射性バースト活動の潜時が延長し、ふり幅は有意に低下していた。高度の自律神経障害のために日常生活に制限があるMSA-M患者では、神経幹内に微小電極を刺入し、電気刺激を加えても自発性バースト活動は1例も確認できなかった。この検討により、SCDの自律神経障害が高度となるにつれてSSNA反射性バースト活動潜時は延長し、振幅も低下して、最後には導出不能となることが推測された。すなわち、SCDにおける中枢を含めた自律神経障害をSSNA反射性活動記録により検出できる可能性があるものと思われた。また、その後の自律神経系に影響を及ぼす基礎疾患のない高齢者と健常若年者とのSSNA潜時の比較検討では、両群には有意な差がみられなかったことから、SCDにおけるSSNA異常は正常の加齢変化とは異なる病態によるものであることが明らかとなった。

引用:BRAIN and NERVE 61(3) : 263-269,2009