サイボーグ犬
ちょっと前のことですが、わんこのご葬儀の御依頼を受けお伺いした時のことです。
お申し込み書には亡くなった子の年齢を記入する欄があるのですが、そこには「18才」と書かれていました。
私は「長生きさんでしたね。」とお声かけをしましたら
「でも、この子、小さな時に事故でケガをしたので体の中に金具があります。」と飼い主様。
「そうですか。御収骨の時に確認しながら進めますね。」とお返事しました。
御火葬の準備が整い、みなさんで炉前にて献花してお別れしていただきました。
その後、御火葬を進めまして、恙無く御火葬が完了しました。
ご家族様立会いのもと、火葬炉の扉を開け、炉台を引き出し、トレイに御焼骨を集めました。
その時、金属のプレートとボルトが見えましたので、
「これが入れてあったものですね。」とご確認いただきながら、御収骨させていただきました。
その後、トレイに集めた御遺骨を綺麗に並べる作業をするのですが、その作業中にも新たに金属のプレートやボルト、ワイヤーが出てきました。
こんなにたくさんの金属が体の中にある子は過去に経験がありませんでした。
プレートやボルト、ワイヤーは骨と一体化していたので取り外すことができず、そのまま、御遺骨として並べました。
綺麗にならべた御遺骨をご家族様の元へ運びました。
御遺骨を確認していただき、御遺骨の部位を説明させていただきました。そしてたくさんの金属のパーツも見て頂きました。
「サイボーグみたいですね。」とご家族様。
それからご家族様よりお話をお聞きしました。
「小さな頃に大きな事故に遭い、生死を分けるような大手術をしました。○○る動物病院の先生が夫婦で長時間にわたって治療にあたってくださり、なんとか一命をとりとめました。」
「でも、命は助かっても後遺症で歩けるかどうかもわからないと言われていましたが、ほとんど不自由なく生活できるまで回復しました。」
「それからはこの子の健康にはすごく気をつけながらこれまで過ごしてきました。」
奇跡的に助かった子が奇跡的に回復し、奇跡的に長生きする。まるでドラマのようなことがあるんですね。
でも同時にその奇跡もただ起きたわけではないと強く感じました。
「この子の命を助けよう」という病院の先生の情熱と強い意志。
大切に育てようというご家族様の深い愛情。
この子が生まれ持っていた生命力。
どれが欠けてもダメだったような気がします。
そして間違いなくこれらの奇跡はこの子とご家族様に幸福な時間を与えてくれたのだろうと感じました。