最近、ありえないニュースがたくさん飛び込んできています。
例えば、日産自動車は派遣社員を全員解約してしまうそうです。雇用の調整弁として利用してきた派遣社員が、底をつくまで無くしてしまうということです。
派遣全員解約、中途解雇も=国内で7万8000台追加減産-日産 12月17日15時0分配信 時事通信
日産自動車は17日、今年度内に国内4工場で7万8000台を追加減産すると発表した。(中略)同社の派遣社員は期初時点で約2000人在籍していたが、これまでに削減を公表していた1500人と合わせ、これで全員を解約することになった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081217-00000099-jij-bus_all
また、トヨタ自動車は週休3日制を導入するそうです。生産性世界一で世界から学びに来るトヨタが販売不振で生産のペースを調整しなければならないとは皮肉なものです。週休3日なんて体制が起きる状況が前代未聞なのではないでしょうか。
<トヨタ>国内工場で週休3日導入へ 車体も同調 12月16日14時15分配信 毎日新聞
トヨタ自動車は16日、世界的な販売不振に対応するため、来年1月末以降、ほぼすべての国内工場で週休3日を導入する方針を固めた。土曜、日曜に加え、一部の金曜も生産を休止する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081216-00000055-mai-bus_all
今までも、「下流社会」「希望の格差」「ワーキングプア」という言葉が生まれるくらい、雇用の現場は厳しいものがありました。それでも、失業率が目に見えて増加していくなんてことはなくて、雇用は厳しいながらも緩やかな小康状態を保ってきました。それが、世界金融危機を前にして状況が急激に悪化し、深刻な雇用の危機状態が訪れようとしています。
なぜ、このような事態が起きているのでしょうか。
そして、どうやってこの状況を解決していったらいいのでしょうか。
いま、目の前に訪れている危機は、グローバル資本主義経済の失速によって引き起こされています。世界経済を牽引してきたアメリカの新自由主義、すなわち市場万能主義が、金融経済の腐敗により崩壊してしまったのです。
かつて、世界恐慌に陥ったときに立ち直る手段として、国家主導の景気刺激策が多用されてきました。1933年のアメリカのニューディール政策に代表されるように、国が公共事業を多発して、市場にお金をばら撒くことで、建築業が潤い、周辺のサービス業が潤い、の連鎖で経済を再びまわしたのです。
日本も、不動産バブルが崩壊して経済成長が停滞したとき、「総合経済対策」で経済を活性化させようとしました。1992年から1995年まで毎年行われ、総額60兆円近くが市場に投入されました。その結果として、一時的な景気回復効果が生まれました。しかし、その後の展開はどうだったでしょうか。
1997年から1998年にかけて、かつての名門金融機関が相次いで破綻しました。山一證券や北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行などが破綻していきました。
1992年には178兆円だった公債残高は、2001年には392兆円と9年で倍以上に増えました。(出典:財務省 )
2001年から構造改革と称してアメリカの新自由主義の考え方を取り入れ、「痛みを伴う改革」を行った結果、現在の厳しい雇用状況が作られてきました。公債残高は、2008年現在、553兆円となっており、2001年からの7年で1992年比 3倍にまで膨れ上がりました。(出典:財務省 )
かつて、アメリカが1933年にニューディール政策を行って、経済を回復させようとしましたが、一時的な回復はあったものの、1930年代後半には再び危機的状況に陥っているのです。しかし、このときは、その後第二次世界大戦が起こり、戦争特需でアメリカ経済が回復したため、ニューディール政策の是非が問われることがありませんでした。
すなわち、ニューディール政策が、本当の意味で経済を回復させることができたのかどうかについては、いまや誰も確かめることができないのです。にもかかわらず、ニューディール的政策は、政治家の選挙対策と相性がいいことも相まって、古今東西、いろいろな時代でいろいろな国で、繰り返し繰り返し行われ続けています。
日本が行ったニューディール政策である「総合経済対策」が、本当に経済を回復させることができたのか。それがどのような結果を作ったのかは、今ここに生きる私たちが、生活の中で身にしみて感じることでしょう。
ニューディール政策とは、老朽化した経済に無理やりお金を突っ込んで、回れ、と言うような政策なのです。
例えるならば、老いて血管が詰まった体に血液を輸血して、ポンプをさらに追加して回るようにさせるようなものです。例えるならば、疲労して疲れ切った体に、栄養ドリンクを注ぎ込み、さらにカフェイン漬けにして、仕事をさせるようなものなのです。
不健康な体に、いくら血液を輸血しても健康になることはできません。疲弊した経済に、無理やりエネルギーを投入すれば、経済が壊れてしまうのです。
これについて、日本のリーダーは、一体どう考えているのでしょうか。
いま、日本の政治のリーダーは、過去と全く同じ政策を繰り返そうとしています。しかも、将来のために蓄えてあるお金を切り崩してやろうとしているのです。
「埋蔵金」流用、10兆円規模=綱渡りの財政運営に -08~10年度・政府 12月17日17時5分配信 時事通信
政府は、麻生太郎首相が「日本経済は全治3年」と指摘した2008~10年度の財政運営を、「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特別会計の剰余金・積立金から10兆円規模を流用してやり繰りする方向だ。期間中は景気対策で大規模な財政出動が必要とされる一方、深刻な税収不足も予想される。借金である国債の新規発行額を少しでも抑えるため、財政当局は綱渡りの対応を強いられる。 財源に充てる埋蔵金の大半は、財政投融資特別会計に積み立てられている金利変動準備金。既に10兆円の積立金があり、当面は年1兆~2兆円程度の剰余金が発生する見通しだ。
不具合が生じて、うまく回らなくなった経済を立て直すためには、不具合の症状の正確な診断と、危機を突破していくための精密な処方が必要なのですが、日本の政治のリーダーにそれがあるのでしょうか。
日本のリーダーが言う「全治3年」とは本当なのでしょうか。
日本のリーダーがやろうとしている「大規模な財政出動を伴う景気対策」は、本当に経済を回復させることができるのでしょうか。
過去に失敗した政策の焼き直しで傷口をさらに深めてしまうことはないのでしょうか。
今の日本のリーダーに、私たちの大切な税金の使い道を任せて大丈夫だといえるのでしょうか。
今、私たちは真剣に考えるべきときにきているのだと思います。