以下の内容について相当迷ったが、やはり計算機将棋界の発展の為に心を鬼にして書くことにした。


進歩5p.173では、▲ハイパー将棋▽KFEnd戦が採り上げられている。これも二次予選からではあるが、まさに関西計算機将棋界の最高峰の将棋で、現実の将棋界に喩えるなら▲内藤▽谷川戦に匹敵する対局だ。


左図は、教授のご指摘通り96手目▽75角と進めた局面。p.174「…筆者の推測では、図から▽75角に対して▲31竜があるからだろう」。私はこの一文を読んで、顔面にハリセンが飛んで来たような衝撃を感じた。


…教授、それ、先手頓死です。


具体的な手順は▽39角成▲同金▽18金!▲同玉▽17銀▲29玉▽39竜▲同玉▽28金までの9手詰だが、ご愛嬌ということで。人間はミスをする。大学教授だろうが専門棋士だろうが人間である。が、KFEndは人間でなく、これを読み落とすことはない。


そもそも▽75角は先手玉に詰めろをかけた手で、仮に▲36金と歩を払っても▽39竜以下頓死になるし、▲26銀と金銀5枚で守っても▽39角成▲同金▽17金▲同銀▽37銀▲同銀▽39竜▲同玉▽37歩成▲同金▽同桂成までの11手必至がある。だからと言って▲57歩と受けても教授の解説の通り▽同角成以下13手必至、▲29金と苦肉の策を使っても▽49銀以下13手必至で後手の勝ちである。


さて話を戻して、何故KFEndが▽75角と指せなかったのか真相は判らないが、単に▽75角以下相当変化の多い必至を短時間では読み切れなかっただけのことだと思う[*1]。後は教授の解説と大同小異で、多少の読みでは▽75角より駒得になる▽37銀、しかも先手玉の守備駒を剥がせるので、その探索値の方が高かったのだろうと推測する。


KFEndの棋風は、概ね局面を単純化しようとする傾向がある。力をためるより駒を取り合う手順を好んで深く読むような気がする。もし、この局面のように▽75角と指せる程読めるとするなら、互角のまま終盤に入って計算機将棋に勝ち切るのは専門棋士と言えども確かに厳しそうだ。


[*1] 因みに謎電では、前稿を含めて本稿の必至問題も(最短手順解を得ようとするなら)[分]の単位では解けない。