性善説に基づく「口コミ」にも限界がある!... ネットでは自然淘汰は期待できない | 神戸大学 教養原論「情報の世界」講義(大学院工学研究科 森井昌克 教授)

神戸大学 教養原論「情報の世界」講義(大学院工学研究科 森井昌克 教授)

2006年,2007年度,実際に開講された講義のブログです.今年も講義はありませんが,引き続き「仮想的」に書かせて頂きます.非常勤講師や講演の依頼は、メールにて直接、連絡をお願いします。

「食べログ」訴訟、店の要望受け入れ情報削除
佐賀市の飲食店経営の男性(32)が、利用客の投稿でつくるインターネットのグルメサイト「食べログ」を運営するカカクコム(東京)に、掲載されている自分の店の情報を削除するよう求めて佐賀地裁で争っていた問題で、両者は15日までに、カカクコムが店の情報を削除し、男性が訴訟を取り下げることで合意した。男性は訴えを取り下げ、情報もサイトから削除された。 金銭の支払いもあったというが、 .......... ≪続きを読む≫


カカクコム側の事実上の敗戦処理でしょう。


佐賀新聞社から取材を受けて、「敗戦処理」という言葉を使ったのは私なのですが、カカクコム側の「口コミだから...」という論理は無理があると思われます。従来の地縁社会の口コミとネットでの口コムは明らかに違います。まず一番大きいのは、地縁社会での口コミは時間や距離と言うフィルターが、自然淘汰と言うか自浄効果が期待できるのに対して、ネットでは必ずしも期待できない場合もあるということです。特に有名店では口コミ効果が期待できますが、そうでない一般店舗での口コミでは自浄効果が期待できません。


口コミの内容に関しても、誹謗中傷とどこで線を引くかと言う問題もあるわけですが、この訴訟の場合、情報の新鮮さ、つまり古い情報をそのまま掲載し続けることに対して修正を求めたわけですから、それに対しては真摯に対策を講じなければなりません。「情報」を生業にするわけですから、その情報の正確さ(真偽)に対して十分な取組を行わなければならないのです。