さて。閑話休題。
今回は『肛門三大疾患』の残り一つ、『痔ろう』へ進んでまいりましょう。
痔ろうの多くは、肛門のちょっと脇に触ると痛いしこりができた、という状態で来院されます。
診察するとその痛いしこりの中には膿が溜まっている。だから、膿を出せばラクになります。
ただ、問題は。
「なぜ、そんなところに膿がたまるようなことが起こったのか?」です。
膿が溜まるというのはすなわち、どこかから細菌感染を起こしたということです。
その細菌の進入口が、そのしこりの部分の「皮膚(毛穴)」からであれば、これは単なる「おでき」で済みます。
ところが、細菌の進入口が皮膚ではなく、肛門の奥、直腸側に開いていることがあるんですねこれが「痔ろう」になるんです。
下の図をもういちど見て下さい。
歯状線のギザギザのひとつひとつには、「肛門小窩」というちっちゃなポケットがあります。
この「肛門小窩」に、何かのはずみで(下痢などをした時に多いですね)、便や便の中にいる細菌が進入することがあります。
細菌がポケットから奥へ侵入すると、そこには「肛門腺」という小さい空洞があります。細菌が肛門腺内で増殖していくと「感染」を起こし、炎症を起こすのです。
炎症が進むと「化膿」して、肛門周囲に膿がたまります。化膿巣がどんどん拡がり、大きくなると、肛門の外から触ってもそこに膿がたまっているのが判るようになります
この状態を『肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)』といい、腫れて痛いので、この状態で肛門科を受診される方が多いのですね。
膿が溜まっているんだから、そこを切開して膿を出せば痛みはおさまる。または、この状態でもガマンしてガマンしていると、腫れたところが破れて自然に膿が出てラクになることもありますが。
この場合、膿がたまる細菌の入り口は「肛門小窩」つまり「歯状線」という肛門の奥であり、そこから肛門の外まで膿のたまるトンネルが出来ているわけですよね
つまり、いくら膿の出口をキレイに保っても、細菌の入り口が肛門の奥なんですから、そっちをふさがない限りは細菌がいつ感染してもおかしくない状態です。
これが『痔ろう』なのです