さて、内外痔核の手術では、内痔核の一番奥までの処置が必要なこと、また手術中は肛門を開いておかなくてはいけないために、下半身麻酔(腰椎麻酔)で行う、という話は以前に行いましたね
また、手術後は肛門管内に傷があるために、術後の痛み、特に排便時の痛みはある程度予想されます
ですから、『内外痔核根治切除術』の場合は一般に、 『術後の排便が、ラクに安心して行えるようになるまで入院している』のが推奨されます。
通常一番多いのは術後1週間の入院ですが、痛みが少なく、排便が上手くいけばもっと早く退院できますし 逆に排便がうまくいかなければ痛みも長引き、退院も遅れます
もちろん痛みなどの原因となる要素は、排便以外にもいくつかあります。ですから、入院期間は
排便の良し悪し
・・・痛みだけでなく、便が硬かったり、強くまた長くいきんだりすると、出血などをおこす原因になる。
手術創の数と大きさ
・・・痛みの強さに直接関連する。
肛門括約筋の状態
・・・肛門を締める力が強いと、キズをその力で締め付けることになってしまうので、痛みが強くなりやすい。また、緊張する(恐怖でカタまる)と筋肉が強く収縮し、痛みの原因になる。
痛みに強いか弱いか
・・・仕方ないところですね。
年齢
・・・一般に高齢者は痛みが少なく、また長く入院していると、一時的な記憶の錯乱などを来たすこともあるため(痴呆が進むこともあります)、できるだけ早めの退院をすすめることが多い。
病院との距離
・・・これは非常に大切な要素です。
肛門の手術の場合に、昔から知られていることですがが。
術後6~14日目頃に突然出血し、縫わないと止まらないという『晩期出血』をきたすことがあるのです


うーんそうだねぇくろにゃん。
基本的にはやはり、排便がうまくいかないと、手術創がなおりにくい、というのはあるようです。
【17】でもお話したように、手術で使うのは『吸収糸』ですからね。糸が弱ってきたところに強いいきみや固い便などの負担がかかればより危険は高まるでしょう。
ただ、それだけとも思えない場合も実際にはあるわけで。いろいろ調べたり、統計をとったりしてるんですけれども、わからないんですよね。
私も、この点に関しては学会で二度報告しましたが。残念ながら原因不明、としか言えない場合もありました。
はっきりしているのは、この『晩期出血』が起こる確率は0.2~0.5%前後と多くはなく、起こるとしたら術後二週間まで(特殊な状況を除く)である、という二点。
…ということは

肛門の術後二週間は、『無理しない



もちろん、起こる確率はごく低いですから、その二週間ずっと入院してる必要は本来はなくて


おうちが病院から遠いと、『何かあったらすぐに来る』のは実際問題できない

その、『晩期出血』の可能性がある時期を、入院して過ごすしかない、ということになってしまうのです
