内痔核の治療の場合、その部分に到達するために、治療内容によっては麻酔をして、肛門がよく拡がるようにしてやらないといけないという話を前回しましたが
日本では、肛門科の手術の場合、麻酔は腰椎麻酔(下半身麻酔)か、仙骨ブロックという方法で行うことが多いです。
患者さんの中には、腰椎麻酔を怖がる方がいらっしゃいます。
ひとつには、「腰からの麻酔は痛い」というウワサ話があるんですね。
実際、盲腸などの手術の時に、腰椎麻酔が痛かったという方は時々いらっしゃいます。その痛みは、そこにたまたま細い神経があって、麻酔の針があたってしまう時におこります。確率については特に報告がないのですが、うちの病院での印象だとせいぜい数%程度つまりほとんどの人は、腰椎麻酔そのものは痛くないのです
ただ、麻酔が痛かった人は人に話しますが、痛くなかった人は治療の方に意識が向いてるので、麻酔について人に話すことってないですよねなので、そういうウワサ話が流れてるのが現状なんではないかと思います。
実は、腰椎麻酔や仙骨ブロックには、肛門の痛みがなくなるということの他に、括約筋の緊張がとれて、肛門が緩みやすくなるという利点もあるのです
ですから、肛門は、麻酔をしないとせいぜい直径2cm強までしか拡がらないのに、腰椎麻酔をかけると直径4cmくらいまで拡がるんですね。
ちなみに、全身麻酔の場合は、意識や痛みは落ちても、それだけでは筋肉の緊張はとれないんです。ですから、筋肉の緊張をなくすには「筋肉弛緩剤」を使わないといけない
でも、この薬は、肛門だけではなく、全身の筋肉が緩んで動かなくなるので、人工呼吸管理をしないといけなくなるんです。そうすると、気管の中に呼吸器につなぐ管をいれなくてはいけないなど、非常にオオゴトになってしまう
だから、肛門科の手術では、通常は全身麻酔だけで手術をするということはまずなくて。手術中に眠っていたい 意識を落として欲しいという方には、腰椎麻酔をしてから全身麻酔薬(または、麻酔薬まではいかなくても眠れる薬)を使うという方法をとることが多い。
結局、手術をするためには、ただ単に痛みがとれればいいということではないんですね手術しやすい環境を作らなきゃいけない
麻酔っていうのはそのためにあるんです。