アキバ系社会人ドクターのすすめ | サイバーエージェント 公式エンジニアブログ

こんにちは.技術本部・秋葉原ラボのエンジニア,2年目(そろそろ3年目)のKazumiです.

弊社のエンジニアブログでは,技術の話が多いですが,
今回は,社会人ドクターをしている私の社会人ドクタースタートの経緯や,エンジニアと社会人ドクターの二足のわらじ生活,社会人ドクターを始めて気づいたことなどをご紹介したいと思います.


博士課程に興味のある社会人の方や,就職あるいは進学で悩んでいる学生の方の参考になれば幸いです.

自己紹介

私は,現在入社2年目でD1になります(このエントリーが公開される頃には入社3年目でD2??).技術本部・秋葉原ラボでデータ分析・機械学習システムの開発・運用を担当しながら,とある国立大学の博士後期課程で金融工学の研究をしています.

もう少し具体的に説明します.
業務でやっていることは,Java・R・Pythonを使ったデータ分析や機械学習システムの設計・開発・運用です.現在は,トレンド検知システムやスパムフィルタリングシステムに携わっています.

一方,大学院での研究テーマは,新聞記事などのテキストから人々の心理や世の中の雰囲気を表すインデックスを作成し,株価との関係を明らかにすることです.研究の詳細については,論文共同研究者の記事などをご覧ください.  


【研究室風景】


入学までの経緯

きっかけ

博士後期課程へ進学したいと強い気持ちがあったわけではありません.

しかし,入社後も,修士時代に行なっていた研究をほそぼそと続けていました.
そんなとき,共同研究者の方に「博士後期課程に進学してはどうか?」と勧められたのが
博士後期課程進学へのきっかけとなりました.

秋葉原ラボには,Ph.D.の方が数名在籍しており,アカデミアとの連携や知識は必要だと考えていたので,トレーナーとラボ室長(現メディア事業CTO)に,この話を相談しました.幸いにも了承を得ることができたので,博士後期課程入学を決意しました.

準備

まず,志望する大学・研究室を決めなければいけません.仕事をしながら研究を行なうので,平日に大学に通うことは難しいです.そこで,共同研究者の方に紹介頂いた,社会人ドクター受け入れ実績のある教授にメールを送りました.メールでは,具体的な修了要件や研究指導についての確認をして,取り組みたい研究を伝えました.

志望する研究室が決まったので,いよいよ入試勉強を始めます.
試験科目は,英語と面接でした.英語に関して,私は経済学専攻でしたので,Pop Internationalismや,表紙がイケてるhappiness & economicsを読みました.


面接対策では,認められる業績を作ることを意識していました.入学前に論文を執筆していると,面接で有利になりますし,また論文執筆自体も博士後期課程修了条件になっているからです.

面接

修士時代の成績について話がありました.博士後期課程に進学できる成績だったので,成績については,特に問題にはならなかったと考えています.

それよりも,博士後期課程で取り組む研究の計画や目標が話の中心になります.
例えば.研究が既存の研究と比べてどのような新規性があるのか,また,先行研究よりも「良い」結果を出すためのアイディアについてなどでした.

業務と研究

無事に入学することができ,社会人ドクター生活がスタートしました.

平日の深夜や週末に指導教員の研究室などで研究・作業をするというスタイルです.
ここからは,二足のわらじ生活を始めて,良かったことと悪かったことについて書きたいと思います.

PROS

社会人ドクターを始めて少し経った頃からいいことがいくつかありました.  

第一に,業務と研究が有機的なつながりを持ち始めたことです.
たしかに,私の専攻している金融工学は,業務と直接的な関係はありません.業務で,株式市場の予測を行なったり,特定企業の業績の分析をしているわけではないからです.しかし,関連している箇所もあります.研究で行っているシステム設計・データ収集・リアルタイム性・時系列分析・モデル解釈に関する知識と経験は,業務にも役立ちます.また,その逆もあります. 

第二に,プログラミングをする時間が圧倒的に増えました.
平日はもちろん,休日もプログラミングをしたり,コードリーディングをしています.周りの達人の方々のレベルと同じ!とまではいきませんが,少しは成長できたかなと思います.

第三に,大学の先生方・学生さんとのパイプを広げることができたことです.
多くの学会・研究会に参加することになるので,自然と名刺交換ができます.いつか大学の研究者の方々と協力をして,いいサービス・仕組みを作ることができればいいなと妄想しています.

第四に,フィードバックの豊富さです.
会社でやっていることは守秘義務があるので,問題解決のためのアドバイスが社内のみで限定的になりがちです.しかし,研究報告は,会社と比べて制限はほとんどないので,多くのフィードバックを期待できます.ある問題に対する見方・解決策が,会社員と研究者の間で同じであったり異なっていたりすることが,面白く気付きが多いです.

第五に,学割です.
アカデミックオプションがある場合は,積極的に活用するようにしています.同僚から「学割せこい!」と言われたときには,学割を利用するために支払った金額を説明しましょう.

CONS

もちろんいいことだらけではありません.

第一に,休む暇がありません.
業務後の深夜と休日に研究をして疲れが溜まって,業務に支障を来すことはあってはならないことです.自分なりのストレス発散方法が必要です.私の場合,もうくじけそうなときは,水炊きと焼肉です.

 


第二に,お金の問題です.
入学金・授業料は決して安くはありません.約3年通うとすると,入学金と授業料で約200~250万円必要です.いつお金が必要になるかわかりません.もしものために医療保険には若いうちから加入しておく必要があるでしょう.

第三に,休暇申請に関することです.
学会・研究会など,業務と関係のないイベントは有給を取って参加しなければなりません.「もう有給がない!」という状況に陥る可能性が有ります.社会人ドクターをするには,徹底した健康管理が必要かもしれません.弊社シェアハウスに設置されているトレーニング器具で体を動かしたりしています.

まとめ

Be the Worstという言葉があります.これは,チームの中で最低であることを自覚して,地道に努力する必要があるという意味です.私のような若手エンジニア・若手研究者にとって,良き指導者・同僚のいる環境に身を置くことは,会社でも大学でも重要だと感じた社会人ドクター1年目でした.

今後は,博士論文の執筆と研究成果を業務に取り入れることを考えながら,残りの社会人ドクター生活を(周囲に感謝の気持ちを忘れず)駆け抜ける予定です.

参考

社会人ドクターやっておいた方がいいことリスト

  • お金の準備
  • TOEIC / TOEFLの勉強
  • 入学前に論文執筆
  • 共同研究者との連携
  • 謝辞

    社会人ドクターをご理解頂いている職場と進学を勧めて頂いた先輩社員に,この場を借りて感謝致します.