◆東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶融事故で、菅直人内閣で、事故対応について口裏合わせの「誓約書」が作られていたことがわかった。誓約書は事故にかかわる対外発信にかんしては関係閣僚間で申し合わせたこと以外は口外しない、という趣旨で、関係閣僚にたいして署名捺印が求められた。
誓約書は福山哲郎官房副長官が作成し、原発事故担当の細野豪志首相補佐官が関係閣僚に持ちまわって、署名と捺印を求めた。細野氏が首相補佐官の立場であることから、「誓約書」の提出を求める指示は菅直人首相から出たと見られる。
菅首相と枝野幸男内閣官房長官で主導した政府の原発事故対応は、当初から事態の重大性をかえりみない無謀さと被曝可能性がある住民の安全第一とする対応が欠けていたとの指摘と批判があった。
口裏合わせの「誓約書」の存在は、現在、検証作業を進めている国会に設置されている東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(委員長・黒川清元学術会議会長)も把握している模様だ。国会事故調のヒヤリングに呼ばれた閣僚が「誓約書」への署名捺印の有無を問われたとの情報もある。
現在連載掲載中の「朝日」の原発事故検証記事「プロメテウスの罠」でも、事故当時、首相官邸内の無政府状態が暴かれている。福島第一原発の炉心溶融事故は首都圏を含めて日本の総人口の3分の1を超える住民に直接間接の被害を及ぼしている。放射能汚染、被曝、避難生活、風評被害など、それらは今後長期にわたる。首相官邸が司令塔となった緊急、適切な対応が欠けていたことが、被害を広げたのは間違いない。都合の悪い事実と情報を隠ぺいしようとした「誓約書」問題の真偽については、当事者から進んで明らかにされる必要がある。