◆菅直人首相が9月26日昼、東京・八王子にある池田大作創価学会名誉会長が設立した東京富士美術館を突然、訪れた、ネジレ国会への対応に苦慮する菅首相がみずから、その支持母体・創価学会施設へ足を向けることで、公明党の協力・支持を取り付けに動いた、など真意を探る報道が飛び交った。一ヶ月余を経て、その真相が程永華駐日中国大使との密会だった、ことがわかった。
程永華大使は、この日、大使館の外交官車を利用せず、自家用車で東京富士美術館へ出向き、菅首相の来訪を待った。菅首相は同日午前、東京・青梅市の慶友病院を視察し、八王子市の日本料理店で昼食をすませ、午後1時50分過ぎに同美術館へ入った。開催中の『ポーランドの至宝』特別展を鑑賞した。3時前に同館をでた。
この間、菅首相は同53分から2時6分までの14分間と同38分から54分まで、2回にわたって同館貴賓室で館長らと懇談した、というのが公式発表である。菅首相と程永華大使の会談は、この貴賓室で1回ないし2回行われたというのが日中外交筋の証言である。程永華大使は、中国の対日外交関係者に多い創価大学留学組である。
3日後、細野豪志民主党前幹事長代理が須川清司同党政調事務局部長、日中貿易にかかわる民間人らと極秘訪中し、北京で中国の戴秉国国務委員らと会談した。この一連の動きをうけて、10月4日にブリュッセルで開催のアジア欧州会議(ASEM)のなかで、菅首相と温家宝首相の「会談」がセットされ、尖閣問題で緊張が高まった日中関係は落ち着きを取り戻した。

<藪から棒の岡田幹事長の企業献金受け入れ発言のナゾ>
◆26日の民主党常任幹事会で岡田克也幹事長は「党として企業団体献金の受け入れを再開する」と表明、献金自粛方針と公約を事実上撤回した。唐突な方針転換に同じ主流派の前原誠司外相、仙谷由人官房長官らさえ批判のコメントをした。党内のほとんどが寝耳に水のことで、岡田幹事長の真意がいぶかしがられた。
実際、民主党本部事務局で企業・団体献金を担当する豊原昭二事務局次長は9月、昨年まで民主党へ献金していた関係先企業に対して「今年はお願いにうかがいませんから」と連絡を入れていた。事務方は、企業献金自粛ですでに動いていた。ライバル自民党の政治資金担当者は「民主党は余裕だ。献金をくれるという企業に『もう結構です』と断っている。そんなに資金豊富なのか。わが党は野党転落で党財政は逼迫状況だ。今年末まで党本部職員の削減もせざるを得ない」。我が世の春を謳歌する民主党を横目で見ながら唇を噛む。
岡田幹事長の変身は、なにが原因か。岡田氏は記者会見で、党財政について「過度の国費依存でいいのか」と、その理由を挙げている。過度の国費依存とは、党財政の84%を国からの「政党交付金」(税金)収入が占める現状を語ったものだ。国費依存からの脱却という方向には有権者の納得は得られる。だが、だからといって企業献金自粛方針を撤回し、企業・団体献金受け入れを再開するのは結構だと理屈には無理がある。大方の有権者の納得も得られまい。
確かに、税金の無駄遣いを正すという看板を掲げる民主党だが、党財政の交付金依存をことあるごとに野党、メディアから突かれてきた。有効な反論を示せないまま推移してきている。民主党にとってアキレス腱の1つともなっている。
民主党本部関係者は、岡田幹事長の思惑を解説する。民主党本部関係者は「幹事長は総選挙と参院選で政権公約にかかげた衆院比例定数80削減を優先して実現したい思いが強い。その真意は、国会議員が身を削って範を示す定数削減を実行し、そのうえで消費税税率アップ、そして財政再建という方向を追求したい。しかし、そこへ踏み込む前に、税金で成り立っている民主党が、税金の無駄使いをいえるのか、という批判が先にくる。そのネックを外すには、党の献金収入増をはかって交付金依存度を小さくするほかないというわけだ」。
党財政のかさ上げで交付金の占める割合を小さく見せる、という話は一種のトリックである。交付金そのものを減額するという話ではまったくないのだ。

<勲章余話>
秋の叙勲の受賞者が内定した。今回目立つのは引退議員、落選議員がこれまでになく名を連ねていることだ。今回、最高位の桐花大綬章は扇(林)千景元参院議長(元参院議員・自民)、続く旭日大綬章は泉信也元国家公安委員長(元参院議員・自民)、井上喜一元内閣府特命相(元衆院議員・自民)、田名部匡省元農水相(元衆・参議員・民主)、南野知恵子法相(元参院議員・自民)、広中和歌子元環境庁長官(元参院議員・民主)、深谷隆司元経済産業相(元衆院議員・自民)、松田岩夫元内閣府特命相(元衆・参議員・自民)。矢野絢也元公明党委員長(元衆院議員)、渡辺秀央元郵政相(元衆・参議員・新党改革)の9人。以下、旭日重光章は8元議員、旭日中授章7元議員。これまでにない大盤振る舞いである。昨年の総選挙、今年の参院選で大きな新旧議員の入れ替わりがあった余波と見られる。
民間人で注目は、閣僚級の旭日大綬章を受けた氏家齊一郎日本テレビ網(NTV)会長である。氏家氏は、渡辺恒雄読売新聞グループ会長とは刎頚の友。両者は福田内閣当時の07年秋、福田首相と小沢一郎民主党代表との「大連立」劇を仕掛けたことで最近では知られる。氏家氏は、石原伸晃自民党幹事長の「親代わりの叔父」と自称することで知られる。叙勲名簿を決済するのは実質的な責任者は仙谷内閣官房長官。矢野元公明党委員長といい氏家氏といい、政治的思惑が滲む今秋の叙勲劇である。