オバマキャンペーン立役者、Mike Slabyから学んだこと | IT企業のPR

オバマキャンペーン立役者、Mike Slabyから学んだこと

先日、六本木の豚組しゃぶ庵において、オバマ大統領を勝利に導いたオバマキャンペーンの元チーフ・テクノロジー・オフィサーで、現在、エデルマンでグローバルにおけるデジタルPRを指揮するMike Slabyを迎えて交流会を行いました。

Slabyの話を聞いて、様々な啓発があったので、個人的に感じたことを書きたいと思います。まず、最も印象に残ったことは、従来からあるPR(パブリックリレーションズ)の概念が大きく変わってきたことです。日本ではPRという言葉の意味がよく勘違いされていますが、パブリックリレーションズという英語の言葉が示すように本来PRとはパブリックすなわち公の人たちとの関係構築をどのようにしていくかという一種のアートだと言えると思います。

ただ、今日までに一般的に確立してきたPRは基本的にマスメディアなどのマス媒体を通じて一方通行のメッセージを伝えることや、いかにして企業が伝えたいメッセージをコントロールするかということに主眼が置かれてきたと思います。これは、もちろん企業にとってこれからも重要なことであり、マスに向けたメッセージを発信することはこれからも重要だと思いますが、現在、企業の多くが、マーケティング部や広報部のみによって決められたメッセージを一方的に伝えるというだけで、自社にとって都合が悪いことはなるべく表に出ないように隠そうとする体質が多いように感じています。

Slabyは、これからのPRはコミュニティマネジメント的な発想で、最終的な目標達成に向けて、様々なコミュニティに所属する人たちと草の根の対話や情報共有をしながら、人々の信頼を得ていくことが最も重要であることを、オバマキャンペーンの事例を通して語ってくれました。Slabyのチームは、「オバマが大統領に就任すること」を目標にして、全ての活動がこの目標達成に結びつくことを考慮し、このキャンペーンに携わった人々が上から下まで同じ価値観を共有しながら、目標達成に向けて連動性のあるコミュニケーション活動を続けていったことが勝利につながったと述べていました。

その中では、マスに向けたメッセージ発信は一つの手段であり、もっとも重要なことはメッセージをコントロールすることではなく、目的達成に向けた様々なコミュニケーション手段、例えば、Twitter、YouTube、FacebookなどのSocial Mediaや、広告などのPaid Media、記事掲載などのEarned Media、自社のウェブサイトなどのOwned Mediaを駆使することによって、人々とオンラインとオフラインでエンゲージしていくことが企業や団体にとって重要であることを教えてくれました。そして、PRの世界において、コミュニティマネージャーとしてのスキルがこれからより一層重要となってくることを述べていました。

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また、現在の企業のコミュニケーションの多くが、それぞれの部門ごとに一貫性のないサイロ型になっていて、マーケティング部や広報部などがそれぞれ実施するコミュニケーション活動が連動していない状況について触れて、パブリックから信頼されるためには、企業全体として一貫性のあるコミュニケーションをしていく体制を作っていかなければいけないことも述べていました。企業の外の人から見れば、広報部が発信するメッセージも、マーケティング部が発信するメッセージも同じ会社からのメッセージであり、そこに一貫したものがなかったら混乱してしまいます。

Slabyも言っていましたが、もし5年前だったら、彼のようなバックグランドをもった人がPRのプロフェッショナルとは言えない時代でしたが、今では、彼のようなスキルをもった人がPRで重要な人材として求められ始めています。PRの概念が大きく変わったきたことを改めて実感した機会となりました。