世武裕子

$Power Play Sound From 京都CF!-世武裕子

滋賀生まれ、京都育ち。幼少からクラシック・ピアノを学ぶ。’ 02 年、パリ・エコールノルマル音楽院映画音楽科に入学。卒業試験では、審査員として来ていたアントワーヌ・ドゥアメル(ゴダールの代表作「気狂いピエロ」のスコアを手掛けた作曲家)にも認められ、首席で卒業。’ 05 年に活動拠点を東京に移し、今作がデビューアルバムとなる。
http://www.myspace.com/sebumusique

この音楽から映画をつくってみたくなるような景色やざわめき、匂いや風まで感じる旋律

  「天才いました」 。 彼女に対する、くるり岸田繁の一言。今春に、くるりの主宰するレーベル宛てに送られたメールがその出会いだった。 彼女の楽曲に惚れ込んだ岸田は即リリースを決定する。
 その数年前、パリの音楽院に在学していた彼女は、 「ベティ・ブルー」や「イングリッシュ・ペイシェント」の映画音楽で知られる作曲家、ガブリエル・ヤレドとも親交を深めていた。ここでもきっかけは彼女からのアクションだった。
  「この映画音楽いいな、って思ってクレジットを見るとガブリエルのことが多くて。それで勝手に『あなたへの尊敬の気持ちを曲にしました』みたいな、ちょっと鬱陶しい感じの連絡をして (笑) 。その曲を気に入ってくれはって。今では私のおじいちゃん的存在」
 その留学時代にはアイルランドやアラブ、東欧の民族音楽にも傾倒。映画好きが高じて演劇もしていたそうだ。 そういった経験の後に生み出された今作は、 ピアノにヴァイオリン、 ヴィオラ、チェロの奏でる旋律に導かれ、 情景豊かに進んでいく。 アルバムタイトルにもそれは滲み出ている。
  「これからおうちを探すために、今までを振り返っている 1 枚かな。それは誰もが見つけていかないといけないところで。は~、大変やな、っていう(笑) 。でも楽しみもあるし、感情はいつも一個だけじゃないから。不安があったり、でも楽しみやったり。そんなんがあるから生きてるんかなって」
 確かに、ひとつの楽曲の中に、いくつかの感情が共存しているように感じる。女性特有の「泣き笑い」のような状態というか。聴く人によって、または同じ自分でも触れたときの心の状態によって音楽は(そして全てのことは)違ってくるものだけど、そういうのを理解できる音楽、なのだ。それはとても素敵なこと。
 滋賀県に生まれ、学生時代を過ごした京都にはパリと同じく思い入れがあるという。
  「京都駅に着いたとき、 『帰ってきた!』っていう安心感でひとり涙ぐむくらい。お寺とか紅葉とかじゃなく、例えば学校行くときの小道やったり、バスから見えるいつも気になってた変な看板とか、日常の細かい景色がずっと残っている」
 そういった原風景と、これからの体験が反応して、また新たな音楽になっていく。次の作品では今作で見せることのなかったヴォーカルも聴かせてくれるようだ。この才能の出現は、素直に嬉しい出来事だ。