弘前行きを決めてから、その次に考えたのはこのさざなみ温泉に寄れないかということだった。それほど印象に残るいいお湯だった。以前は風呂があれば満足したが、最近は泉質の良さにこだわるようになってきた。この温泉は、荒々しい感じの泉質で私にはインパクトが強かった。

 

 

「信州から2年ぶりに来た」と告げると、受付の女性は驚いた様子だったが、そんなファンが全国にはやはりいるらしい。貴重品を預けるついでにカメラの充電をお願いすると快く受けてくれた。しばらくまちの様子など教えていただくが、やがて訪れた地元のお年寄りと話し出すと、私には未知の外国語のようでまったく理解できない。

 

昼前時分ということもあり、客はほとんどいない。若者が入っていて地元客かと思っていたら、後に駅で一緒になった。どうやらこの温泉に魅せられている人は意外に多いのかもしれない。大きな浴槽(写真左)と熱めの小さな浴槽がある。季節のせいか、冬に訪れたときよりも、やや塩気が少ないような気もするが、やはり私の肌にはよく合う。
 

 
風呂上がりの缶ビールを片手に
弘前城址の夜桜見物へと針路をとる
 

合川駅に着き、自転車をたたむ。ここからはもう自転車に乗らないから、県道沿いのコンビニでビールを買い求め、風呂上がりの一杯を楽しむ。駅前にはかつては繁盛していたと思われる酒屋がある。その意匠は昭和時代の懐かしい建築で思わず見入ってしまう。造り酒屋は争って看板を掲げてもらうよう店主に請うたのだろう。

 

 

合川駅の向こう側にはまだ桜が残ってくれている。ちょうどホーム上の駅名標と木製の電柱の後ろにあり、春らしいいいカットになる。桜が待っていてくれた。そんな自分に都合のいいように考えながら、移ろい行く春を名残りを惜しむ。
 

 

合川駅からは輪行で鷹巣駅をめざす。前回訪れた際はこの駅から上り方面に発った。途中下車しながら結局角館駅まで乗車したので、これから鷹巣駅まで行けば、秋田内陸縦貫鉄道は全線乗車することになる。こんなかたちで制覇するとは思いもしなかった。(写真/合川駅から鷹巣駅方面を望む)