出典:PTSDに効果的な「持続エクスポージャー療法」  2014年3月13日記事

 

*PTSD=Post Traumatic Stress Disorder

*PE=Prolonged Exposure therapy 持続エクスポージャー療法

 

 

災害や暴力などで心の傷を負って発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)。

治療効果が証明された研究が最も多いのが

持続エクスポージャー療法(PE)だ。

 

 東京都の20歳代の無職A子さんは、東北地方に住んでいた2010年5月頃、当時勤務していた会社の上司に「引っ越しの手伝いに来てほしい」と自宅に呼ばれ、レイプされた。

 以来、眠れなくなり、恐怖体験の場面がよみがえる「フラッシュバック」に何度も襲われた。男性を見ると上司を連想し、怖くて外出できない。自分は生きる価値がないと考え、何度も「死にたい」と思った。

 

 翌11年3月、東日本大震災の津波が自宅をのみ込んだ。高台に避難して難を逃れたが、波が引いた後の荒涼とした光景に身がすくみ、震災の恐怖も心の傷(トラウマ)に加わった。

 

 同年8月、仕事が見つかり上京。症状が続いたため、知人の紹介で昨年1月、東京都小平市の国立精神・神経医療研究センター成人精神保健研究部長の精神科医、金吉晴さんを受診、PEを受けることにした。

 

 PEは、患者が、避けていたトラウマ記憶にさらされる(曝露

 

 

 

 

 

 

(ばくろ)=エクスポージャー)作業を繰り返し、治療者と話し合いを重ねて、恐怖を乗り越える。治療は週1回で1回90分ほど。

二つの曝露法が中心だ。

 

 一つは、実生活の中で避けていたことに向き合う「現実エクスポージャー」。

これによって「慣れ」が生まれて不安が減る。

 

 A子さんの場合、上司に似た屈強な男性の写真を、30分間見続けた。

人混みも怖かったため、駅前まで30分歩いたり、スーパーで30分、買い物をしたり。毎週こうした「宿題」が出され、その時の不安が100点中何点かを記録する。

最初は70点だった不安も、回を重ねるごとに50点、30点と減っていった。

(参照:系統的脱感作法(トラウマ・ケア/恐怖症克服)

 

 もう一つの曝露法は、トラウマ体験を話す「想像エクスポージャー」。

A子さんは毎週の治療で40~50分間、レイプされた時の状況を思い出しながら話した。

体験を話す度に、金さんに「考え方や感じ方はどう変わったでしょうか」などと質問され、

話し合う。その時の自分の話を録音し、自宅で聴くことも宿題だ。

 

 最初は怖くて、泣くこともあった。「こんなことを話すぐらいなら死んだ方がまし」とさえ考え、治療を受けた日は落ち込んだ。

 

 しかし話し合いの中で、それらはトラウマを受けた後の自然な感情だと理解でき、その感情を治療の中で受け止めてもらうことで落ち着いた。これを繰り返すうちに、体験を冷静に話せるようになった。

 

 治療6回目には、

▽トラウマ体験を話してもそれは記憶に過ぎず、また怖いことが起きるわけではない

▽悪いのは自分じゃない――と理解し、恐怖を感じなくなった。

 

震災の恐怖も同様に治療し、元気になった。

 

 「治療を受けて本当に良かった。被災してトラウマに苦しんでいる人もこの治療を受けられるといい」とA子さん。

 

金さんは「国内には治療できる専門家が少ないため、養成して普及に努めたい」と話している。(山口博弥 2014年3月13日記事

 

上記の二つのエクスポージャーのほかに、

トラウマや治療法の意味を学ぶ「心理教育」と、

気持ちを落ち着けたい時の呼吸法「呼吸再調整法」の練習からなる。

 

日本では昨年、金さんらがこの治療法の普及を目指す組織

「PE Japan」(http://pe-jp.org/)を設立した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【PE:持続エクスポージャー療法の4本柱】

PE=Prolonged Exposure therapy 

①現実エクスポージャー

②想像エクスポージャー

③トラウマや治療法の意味を学ぶ「心理教育」

③気持ちを落ち着けたい時の「呼吸再調整法」の練習

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Regions of the brain affected by PTSD and stress.

参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Posttraumatic_stress_disorder

 

出典:http://www.psycom.net/iwar.1.html

 

出典:http://www.nayamijiten.com/staticpages/index.php/momose_itv

 

 

【呼吸再調整法】

 

「過呼吸」は、過剰に息を吸ってしまうことで、

血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れて起きます。

 

そこで、対処法としては、酸素をこれ以上体内に入れずに、

二酸化炭素を体外に出さないようにすれば良いのです。
 

①安静な姿勢をとります。

②息を止めて10秒数えます。息を吸わないように気をつけましょう。

③10まで数えたら、息を吐いて、静かに落ち着いた調子で自分に「リラックス」と声をかけましょう。その時に息は必ず鼻から吸いましょう。

④その後は、3秒間息を吐いて、3秒間息を吸うことを気持ちが落ち着くまで繰り返しましょう。
 

●ためしてガッテン ・・・・・・ 過呼吸の正しい応急処置法

  • 息を吐くことを意識
  • 「吸う:吐く」が1:2になるくらいの割合で呼吸する
  • 1回の呼吸で10秒くらいかけて吐く
    (息を吐く前に1~2秒くらい息を止めるくらいがベター)
  • 胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す

出典:http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20120829/index.html

 

 

【ペーパーバック呼吸(紙袋を口に当てて呼吸する)】

 

⇒ このやり方は、効果がなく、危険でさえある、とのこと。

            ↓

過換気の原因が重篤な病気である可能性も有り、その場合には死亡させる危険もある、二酸化炭素そのものが患者さんの不安を助長させる可能性もある、低酸素を来たし死亡させたと言う報告もある、などからペーパーバッグは勧められず、有効性もほとんどないと書かれています。

 

出典:http://kekimura.blog.so-net.ne.jp/2007-06-04-1 救急科専門医の独り言

 

参照:「特別な出来事」(業務による心理的負荷評価表より)

 

参照:過換気症候群への対処:呼吸再調整法