パーソナリティ障害
(パーソナリティしょうがい、英語: Personality disorder, PD)とは、
文化的な平均から著しく偏った行動の様式であり、
特徴的な生活の様式や他者との関わり方、
または内面的な様式を持ち、
そのことが個人的あるいは社会的にかなりの崩壊や著しい苦痛や機能の障害をもたらしているものである。
青年期や成人早期に遡って始まっている必要がある。
症状が著しい苦痛や機能障害をもたらしていないものは、正常なパーソナリティである。
従来の境界例や精神病質の受け皿にあたる概念である。
以前は、人格障害(じんかくしょうがい)の訳語が当てられていたが、
烙印あるいは偏見的なニュアンスが強いことから現在の名称に変更された。
なお以前は同様の意図から性格障害と言われることもあった。
パーソナリティは、見方や反応の仕方、考え方、人とのかかわり方、振る舞いの仕方といったことの持続的なパターンであり、その人らしさを形成している。
それが、適応的にできなくなり、臨床的に著しい苦痛や機能の障害をもたらしている場合にパーソナリティ障害である。
世界保健機関は以下のように定義する。
パーソナリティとは、個人の生活様式と、他者との関係の仕方における様々な状態と行動のパターンである。
パーソナリティ障害は、根深い持続する行動のパターンであり、文化による平均的な人間のものから偏っている。
パーソナリティ障害は、小児期、青年期に現れ持続するものである。
従って、成人期に発症したなら、ストレスや、脳の疾患に伴って起きる別の原因がある可能性がある。
各々のパーソナリティ障害は、行動上の優勢な症状に従って下位分類されているだけであり、排斥しあうことはない。
— アメリカ精神医学会、精神疾患の診断・統計マニュアル、IV-TR[21]
A. その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った、 内的体験および行動の持続的様式。この様式は以下の領域の2つ(またはそれ以上)の領域に表れる。
- 認知(すなわち、自己、他者、および出来事を知覚し解釈する仕方)
- 感情性(すなわち、情動反応の範囲、強さ、不安定性、および適切さ)
- 対人関係機能
- 衝動の制御
B. その持続的様式は柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている。
C. その持続的様式が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
D. その様式は安定し、長期間続いており、その始まりは少なくとも青年期または成人期早期にまでさかのぼることができる。
E. その持続的様式は、他の精神疾患の現れ、またはその結果ではうまく説明されない。
F. その持続的様式は、物質(例:薬物乱用、投薬)または一般身体疾患(例:頭部外傷)の直接的な生理学的作用によるものではない
— アメリカ精神医学会、精神疾患の診断・統計マニュアル、IV-TR[21]
参照:オールポートの「パーソナリティの定義」
「パーソナリティとは、精神身体的組織をもった個人内の力動的体制であって、彼の特徴を現す行動と思考とを決定するものである。」
参照:「産業カウンセラー」第6版 p154より
パーソナリティ障害の分類
治療の方向性 参照:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html
パーソナリティ障害の治療には、比較的長期にわたって患者と治療者が協力して努力を続けることが欠かせません。
そこでは、どんなことが問題になっているのかということや、その対策について一緒に検討します。ここではとくに、患者が積極的に治療に参加することが大切です。
治療では、支持的精神療法、認知行動療法、精神分析的精神療法などの精神療法(orカウンセリング)が行われます。
境界性パーソナリティ障害に対する治療プログラムが科学的に有効であることがわかり、効果の高い治療法も開発され、実際の治療に活かされています。
薬物療法では、感情調整薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や少量の抗精神病薬がパーソナリティ障害の症状を軽くするのに有効であることがわかっています。
また、合併しているほかの精神疾患の治療も重要です。
かつては、パーソナリティ障害はなかなか変化せず、長期間にわたって患者を苦しめると考えられてきました。
しかし最近の研究では、パーソナリティ障害の特徴の多くは、年齢とともに徐々に軽快することが明らかにされています。
また、治療によって回復が早くなると考えられるようになっています。