ポロトの森どうぶつ病院 -3ページ目

ドラッカー的考察牧場編5

「イノベーション」に関して、生産界以外にも目を向けてみると、競馬場・トレセンの厩舎や騎手に関しても考察出来ます。また、その他、競馬新聞、予想紙、競馬関連雑誌などの出版関係、さらに競馬関係のインターネットサービスなどなど、もちろん、JRAや地方競馬の競馬主催者に関しても同様にイノベーションを考察することが可能です。

「企業のマネジメントとは何か?」

さて、次に事業のマネジメント=経営とは何でしょうか?
「事業のマネジメントとは、マーケティングとイノベーションによって、顧客を創造する活動である」・・・これまで考えてきたことですね。

1,「事業のマネジメントとは、“企業家的”でなければならない」
つまり、官僚的では駄目で、立案的、チャレンジングなものでなければならないのです。

2,「事業のマネジメントは、環境適応的な仕事ではなく、環境創造的な仕事でなければならない。マネジメントは経済に単に適応するのではなく、自ら経済を創造し、もしくは経済を変革するとき、事業をマネジメントしていることになる」
積極的でクリエイティブな活動でなければならないのです。

3,「マネジメントは、業績のみによって評価される意識的な活動でなければならない。・・・実現可能なことに対して適応するだけでなく、実現が望ましいことについて、自ら目標を設定しなければならない」
今現在、実現可能なことだけでなく、やれたらいいな、と思うことを目標に設定するということです。

ドラッカー的考察牧場編4

『マーケティング』

マーケティングは、企業=牧場の基本的活動であり、企業の全領域に浸透させることが不可欠であるとのことでした。
マーケティングは、特に生産者にとっては苦手な部分ではないでしょうか?私も実はそうで、売り込みはかなり下手で、なかなか仕事を増やす事ができません。
それはおいておくとして、生産者のマーケティングとは、どういうことでしょうか?

まず、考えるのはセリにおける宣伝、広告と展示方法です。
セリではほとんどがカタログで購買するかどうかを決めていますから、より多くのお客=購買者が見るカタログに記載されなければなりません。ところが、セリ名簿の中で目立たないと逆に見てもくれません。どの客層にアプローチをするかをあらかじめ決めておく必要があるのです。つまり、どの馬をどのセリに出すかというところからマーケティングが始まっているのです。

具体的な宣伝広告の方法は、ネットオークション以外は、競馬関係の新聞や業界紙に広告を入れること、独自のカタログやビデオを製作して調教師や馬主に送付することだろうと思います。

個々の馬の宣伝広告と牧場単位の宣伝広告とがあります。後者は主に大きな牧場が行うキャンペーンであり、牧場のネームバリューを利用してお客=購買者を引き寄せようとしています。それに対し、小さな牧場では頭数がいないため、前者の広告だけとなり、目立つことは難しくなります。
したがって、個々の馬の宣伝広告はなかなか効果が出にくいと考えられます。

どのようなセリであれ、上場すること自体が宣伝広告になるという考え方もあるでしょうが、多数の馬の中から購買者の購買意欲をかき立てなければ、声をかけてもらえず、また一人しか購買希望者がいなければ一声で終わってしまい、競り上がりません。

では、どうすればセリ名簿の中から選んでもらえるかというと、やはり血統ということになるのでしょう。
つまり、本馬の親や親の兄弟姉妹、または本馬の兄弟姉妹の競走成績が目立っているか、まだ兄弟の競走成績がないけれど、似たような配合=ニックスで目立って競走成績が良い馬がいる場合、などでしょう。

ただし、掘り出し物を探している購買者も一定数いると思われるので、馬の血統によってはそういう購買者をターゲットにした宣伝広告の方法も考えることができるでしょう。

また、最近は新しい若い馬主が増え、インターネット関連企業の馬主も増えていると思います。関連企業のオーナーでなくても、若い人はSNSなどで情報収集することが多いので、そのようなツールを使用した宣伝広告も増えてくるでしょう。

セリ以外の販売に関してはどうでしょうか?
セリ以外の販売路としては、クラブ法人の募集、インターネットオークション(これもセリに入りますね)、昔ながらの庭先取引、などでしょう。
これらの場合もやはり、新聞や業界紙への宣伝広告、SNSなどがマーケティングの手法となるでしょうし、そもそも人気のあるクラブに出すこと自体がマーケティングとなり、クラブ法人自体も会員をより多く集め、魅力あるクラブにすることがマーケティングになるでしょう。また、魅力ある血統を配合することで、種牡馬の名簿に掲載されたり、新聞や雑誌の取材を受けるなどもマーケティングにつながります。

企業=牧場にとっての第2の基本的活動である

『イノベーション』

について、私は以前は「新しい価値=商品」を生み出すこと、と考えていましたが、『より優れた、より経済的な財やサービスを創造することである。・・・単に供給するだけでは十分ではなく、より優れたものを創造し、供給しなければならない』ということでした。
今まで存在した商品とは異なる全く新しい概念の商品を生み出すだけがイノベーションではなく、今ある商品に改良を加え、よりより製品にすることこそイノベーションであると考えられるのです。

つまり、企業=牧場にとってのイノベーションは、

『より丈夫で、より速い、より強い馬を生産、育成すること』

であり、競馬サークル全体に広げて考えると、

『飼料会社が、より優れた飼料や機能性サプリメントを開発すること、またそれをサービスとして持続的に安定的に供給すること、薬品会社などでは、より優れた効果的な薬品や医療機器を開発・販売することであり、獣医療においても同様に、より先端的、効果的な診断治療・予防法を提供すること』

なのです。

ドラッカーの次の言葉が印象的です。

「企業にとって、より大きなものに成長することは必ずしも必要ではない。しかし、つねにより優れたものに成長する必要はある」

牧場は成功すると規模が拡大する性質を持っていますが、カントリー牧場がそうであったように、大きくはならずとも、より良いものに成長することはできるのです。

ドラッカー的考察牧場編2

ドラッカーの言葉を馬に置き換えて考えてみましょう。


まず、顧客の創造について。

もっとも分かり易いのは、種牡馬でしょう。
新規種牡馬を導入する際、その種牡馬には種牡馬としての実績はなく、全くの未知数です。それを本馬の競走成績や血統背景による将来への期待度によってシンジケートの価格と交配料が設定されます。これも顧客の創造と価値(財)の創造であって、その種牡馬を交配したいという顧客の欲求を生み出すわけです。
これは新規繁殖牝馬の導入や、産駒の販売にとっても同じ事がいえるわけです。
子馬、1歳馬あるいは2歳馬の販売においても、その血統を創出するという意味では、顧客を創造することになるのです。

また、トレーニングセールや繁殖牝馬のセリ、ネットオークション、DMMのバヌーシーなども、新規顧客を創造しました。これらは、次に述べるマーケティング活動でもあります。

 

次はマーケティングとイノベーションについて