注文 | ロンドンつれづれ

ロンドンつれづれ

気が向いた時に、面白いことがあったらつづっていく、なまけものブログです。
イギリス、スケートに興味のある方、お立ち寄りください。(記事中の写真の無断転載はご遠慮ください)

 

フィギュアスケーティングのライブストリームやテレビ放映を見ていて、気になることがある。

 

カメラワークである。

 

前に、NHK杯で、チャン選手が演技が終わったとたんに「スカイカムがすごく気になった」とコーチに発言したことを書いたが、(実際は、Fxxxing sky-cam..! と) スケーターを頭上から撮るアングルである。

 

選手がスピンに入るとすぐにスカイカムに切り替えて、真上からくるくる回るスケーターを撮る時がある。 これは、本当にやめてほしい。 なぜなら、足元が全く見えないからである。 スピン途中に、エッジを変えることもあるし(前方向のアウトエッジから後ろ方向のインエッジへ、など)、スピンがトラベルしているかどうかは、上からのアングルではまったくわからない。 姿勢を変えるコンビネーションも、わかりずらいのである。

 

また、スカイカムで遠くから追って寄っていったりすると、「選手は気が散らないかしら」とこちらも気になるのである。 実際気が散るから、チャン選手の発言があったのだろう。 さあ、ジャンプの軌道、などという時に、ガーッとよってくるスカイカムが目に入れば、タイミングをのがすかもしれない。

 

 

また、上半身をやたらにアップにするカメラマンがいるが、フィギュアスケートを全く知らないんじゃないか。 フィギュアスケートは足元がとても大事なのである。 これもまた、スピンなどでアップによりすぎて、シットスピンなどで回転する選手の頭の位置に合わせてカメラを左右に振ったりするカメラマンがいるが、本当にやめてほしい。 酔いそうになるし、そもそも、下半身を映さなければどんなスピンをしているかわからないではないか。チェンジフットスピンで,フットを映さなくてどうするのだ。

 

あるいはまた、足元だけをアップにするカメラマンもいるが、スケート靴だけを大アップにしたりすることも意味がない。フィギュアスケートは全身の動きを見なければ意味がないのである。 上半身をどのぐらい使っているか、あぶないバランスの姿勢で難しいフットワークをしていれば、それだけ難易度の高いコレオグラフィである。腕の動きと足の動きの関連性など、全身を見なければわからないことはいっぱいあるのだ。顔のアップなども必要ない。アイドルの歌を鑑賞しているわけではない。フィギュアスケートはスポーツなのだ。全身の動きを評価して、スコアがつくのである。基本的には常に全身を映していてもらいたいものだ。

 

もう一つカメラマンに注文したいのは、コントラストである。コントラストが強すぎると、氷が白く光りすぎて、スケーターがまるで空中に浮いて滑っているように見えるのである。これをやられると、氷上を走るブレードの軌跡が全く見えなくなり、ジャンプの時のプレロテーションやアンダーロテーション、あるいはスピンがトラベルしているかどうかがわからなくなるのだ。 日本のテレビ局にこれが多い。 

 

フィギュアスケートの「フィギュア」とは、「形」という意味で、氷上にスケートのブレードで描かれる「形」から来ているのだ。氷上に描かれる形をしっかりなぞることができるかは、エッジを正しく使っているかどうかにかかっていて、例えばスリーターン、ロッカー、ブラケットなどのターンも、氷上に形を想像しながらエッジチェンジをしてターンをするのである。 ジャンプ着氷後のエッジの走りも、軌跡をみることは大事なのだ。氷が真っ白になって軌跡がまったく見えなくなってしまい、そしてスケーターの衣装が黒く見えすぎて、右の足か左の足かわからなくなるほど衣装のひだがみえなくなるようなコントラストは良くない。

 

また、6分練習の時にコマーシャルを入れたり、あるいは観客の姿ばかりを映すテレビ局があるが、これもやめてほしい。6分練習は、次にやってくる本番に密接に関係してくる。それぞれの選手がこのウオームアップでどのような練習をするかに興味のある人は大勢いるはずだ。その時間にCMが入ってしまったり、観客の様子をずーっと映したりすると、がっかりするのである。我々が見たいのはスケーターであって、観客ではないのだ。(とはいえ、アジア大会では、ザンボーニの時間に観客の子供たちをたくさん映していて、それはほほえましかったが)少なくとも、選手がリンクに入っている間は、選手の動きを中心に撮ってもらいたい。

 

また、特定選手だけを放映することなく、すべての参加選手をくまなく放映してほしいが、それが無理だというならせめて演技以外の余計な演出を長々と入れないで(例えば一部選手のオフリンクのウオームアップのオッカケとか)、一人でも多くの選手を放映してほしいものである。フィギュアスケートはスポーツなのだ、何度も言うが。オッカケられる選手だって、集中できなくてうんざりするだろう。

 

さらに、解説である。今回アジア大会は、あるライブストリームを見ることができたが、演技中に解説者がしゃべり続けるのである。しかも、デニス・テン選手の演技の最中に、全く関係のない韓国の女子選手のことを延々と話し続け、演技にまったく集中できなかった。これは、デニスにも失礼であろう。私がBユーロの解説を好きな理由の一つは、彼らは基本、演技前と演技が終わった後に話すのであって、演技中の解説は必要最小限にして、なるべく黙っているのである。 音楽が聞こえなくなるほど大声でずーっとしゃべりつづける解説者を使う傾向のあるロシアやイタリアの動画は見ないことにしているが、今回のライブストリームの解説は(英語だったが)今までの中でも一番ひどかった・・・。夫など「だまってくれ!」と何度も叫んでいた。

 

ISUは、どの国で試合が開催されようと、「フィギュアスケートの試合ではこういうことに気をつけてもらいたい」というマニュアルをテレビクルーに渡したらどうか。そして、解説者は、多く語れば自分の仕事をしていると思わないことだ。あくまでも主役は選手たちとその演技であって、演技中の解説者の声は最小限に控えてほしい。あとでスローモーションがあるんだから、その時に解説すればいいではないか。

 

 

もう一つの注文は、リンク上に投げ込まれたものである。 今回のアジア大会も、演技後に何度か選手自身がリンクの上の異物を拾っているのを見たが、一回は白っぽい封筒のようなもの、一回は黒い小さなものであった。 観客の投げるプレゼントや、前の選手の衣装の一部だったりするのだろうが、スケーターがリンク上の異物の上を滑ることは大けがにつながる危険なことなのである。 前のユニバーシアードでも、選手の演技中に投げられたのか大きなぬいぐるみがリンクに落ちていて、その上に、あわやジャンプ着氷をするところだった。

 

プレゼントは、フラワーガールの子供たちにも見えやすいように、白っぽいものや、小さいものなどは投げないことだ。またリンクでは異物の回収をすべて子供に任せないで、誰か大人がしっかりチェックするべきではないかと思う。事故があってからでは遅いのだ。事故がなくとも、演技中にリンクの上に異物を発見すれば、集中力を欠くであろう。

 

 

しかし、最後にひとついいたい。

 

今回、参加のインドや北朝鮮の選手たちに温かい声援が送られ、演技後に花束が投げ込まれたという。 こういう花束こそ、意味がある。 インドの選手たちは日本の観客たちに感謝の意を表したという。 国を問わず、またスコアの上下を問わず、すべての一生懸命に演技した選手たちに温かい応援をすることのできる日本の観客の皆さんを本当に誇りに思います!