ヘルシンキのワールドで! | ロンドンつれづれ

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羽生選手。
 
フリーは、勝った。
 
スピンもステップもすべてレベル4をとった。
 
PCSも6点ほど高かった。
 
しかし、総合点で負けた。
 
 
今回の敗因は、羽生選手が一番よくわかっているだろう。
 
クワド・サルのコンビネーションジャンプ。
 
これをSPでもフリーでも、できなかった。
 
コンビネーションをパンクしたとたんに、夫が Ooooh, he left the door wide open for Nathan...! (ネイサンにチャンスを与えてしまったね)とうめいた。 
 
 
今回、SPでの6点の貯金と、フリーで3Loのところをクワド・サルに変えて、ネイサンは羽生選手に勝った。 そして彼は大きなミスはしないで滑り切った。 3Aでの乱れがあったにしろ、すっぽ抜けたジャンプはなかったし、コンビネーションジャンプもリカバーしたし、転倒もなかった。
 
羽生選手は、フリーですっぽ抜けたクワドサルのセカンドジャンプをせめてつけていたら、僅差で勝てたかもしれない。 キスクラにもどってきた羽生選手に開口一番、ブライアンが Why?! と聞いた。
 
おそらく、羽生選手自身も、「なんで?!」と自問しただろう。 なんで、またクワドサルをパンクさせてしまったのか?? あれだけ練習したのに?? また、考えすぎたのかもしれない。 ジャンプはは考えすぎるとできなくなるものである。 今は転倒で大きく点を引かれる。それも、慎重になる原因かもしれない。 しかし、今シーズン、フリーでクワドサル・トリプルトウのコンビネーションはほとんど失敗しているのである。 Why? どうして?
 
 
しかし、夫は、Now it is becoming a proper battle....(これで本物のバトルになってきたぞ・・・)と、却って嬉しそうである。 Hanyu needs to be cornered.  (追い詰められないと彼は本気にならない)というのである。追い詰められた時、彼は強くなる、と。
 
 
羽生選手が今シーズン、本当に勝ちたいのは、世界選手権。 ピークはそこに持ってくる。 きっと、ブライアンは「4CCはこれでいい」と思っているのではないか。 そして、その先にはオリンピックがある。
 
 
ネイサンという素晴らしいライバルが現れて、羽生選手の闘志にはいま、メラメラと火がついているだろう。
 
クワド・サル、トリプルトウのコンビネーションをなんとしても試合でモノにしなくては、こういうことになる、と。 
 
すべてはメンタルだろう。 クワド・サルは、羽生選手の得意ジャンプのはずだ。 コンビネーションになったとたんに跳べない、というのはメンタルブロックがかかっているからだ。
 
もちろん、クワドループの精度を上げてきたこととも無関係ではないだろうが、彼に跳べないコンビネーションではないはずだ。
 
そしてそれがわかっているからこそ、コンボをポップした後の彼の演技は、しばらく心ここにあらず、という風が見えた。「まただ!どうして?」と思いながら滑っている風に・・・。
 
 
ブライアンは、ワールドで勝つために、クワドのコンビネーションをクワド・トウ、トリプルトウに変えることを勧めるかもしれない。 それなら、確実に跳べるだろうし、勝てるプログラムになるだろう。しかし、結弦君がそれでウンというかどうかは、わからない。
 
彼は、今度のワールドはぜったいタイトル奪還を目指しているだろう。 それも、彼の思い描く、今できる一番挑戦的なプログラム構成で。
 
 
ワールドでは、タイトルをめざしてライバルはネイサン、宇野選手だけでなく、フェルナンデス選手、そしてパトリックだって転倒をしなければ、まだまだメダル争いの圏内だし、1か月でボウヤン・ジン選手がジャンプのGOEを上げる練習をしてくれば、怖いライバルになる。
 
これからブライアンと羽生選手は、じっくり作戦を練り、それに合わせた練習をしてくるだろう。1か月かけて。
 
4CCで見つかった課題ははっきりしている。そしてやらなくてはならないことも。
 
 
今回宇野選手は、勝つつもりというよりは、ワールドに向けてのテスト飛行だった。だから、3位でもOKという表情だった。 クワド・ループをきれいに決めて、ハッピーだった。しかし、ワールドでは勝ちに来るかもしれない。
 
ネイサンは、ワールドに向けて、一段とメディアの注目も増えて、プレッシャーも増えるだろう。そういうことが次の演技に影響してくるかもしれない。まだ若い彼は、そのストレスを抱えきれるだろうか。
 
ハビエル君は、ワールド3冠王を狙ってくるかもしれないし、ミスなく滑れば、高いGOEとPCSも手伝って、強敵だ。
 
夫の言うように、ワールドは、見ごたえのある競技会になりそうだ。 誰が勝っても、おかしくない。 ミスをしたものの負けだ。 
 
限界まで研ぎ澄まされた技術を競い合って、ミスをすればトップにはなれないという、正当な闘いになる。
 
それは、肉体的技術だけでなく、芸術的な表現、そしてそれを本番の日にデリバーできる強いメンタルと、すべてを試される戦いになるだろう。
 
あと1か月。
 
 
今日の羽生君は、悔しくて眠れないだろう。 自分でも「なんで?!」と頭をポカポカやっているんじゃないか。 しかし、ワールドで、そしてその先のオリンピックで勝つために、きっと4CCでの敗北は必要だったのに違いない。
 
 
そして、フィギュアスケート競技の一ファンとしての私と夫は、実はもう今からワクワクして、「こりゃあ、ますますワールドが楽しみだなあ!」と思っているぐらいなのである・・・。 
 
だって、ヘルシンキでは必ずや、メラメラ燃えて、最高に気合の入った羽生結弦選手を見ることができるだろうから・・・。 そして、私の目にはポディアムの一番高いところで笑顔を見せる羽生選手の姿が、浮かんでいるのだから・・・。
 
動画、感謝してお借りします。