ゴールデンスケート、羽生選手の記事 | ロンドンつれづれ

ロンドンつれづれ

気が向いた時に、面白いことがあったらつづっていく、なまけものブログです。
イギリス、スケートに興味のある方、お立ち寄りください。(記事中の写真の無断転載はご遠慮ください)

真央ちゃんのジャパン・オープン出場が決まったみたいですね!


グランプリ・シリーズのアサインメントも発表されて、ジャパンオープン。いよいよ、シーズンへ向けての準備も着々。



5,6日前の記事ですが、ゴールデン・スケートのウェブサイトに載っていた記事を翻訳しました。

おそらく、もう皆さんの知らないことはなにも載っていないと思いますが、一応。


Golden Skateは、英語圏のスケートファンの人が多く読んでいると思います。


もと記事は、こちらで。 (6月20日づけ)



私は、羽生選手の元インタビューを読んでいないので、あくまでも英語をもとに日本語に起こしたものです。口調などが違っていたり細かいところが違うかもしれませんが、ご了承ください。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2014-15年のシーズンは、日本の羽生結弦にとって、ほとんどすべての試合で勝利したオリンピックイヤーに比べて試練の年だったが、彼はそれを「それも経験」と話す。


シーズンはじめ、この二十歳の青年は腰の故障でフィンランディア杯を棄権し、中国杯ではフリーのウオームアップ中に衝突事故、2週間練習ができなかった。NHK杯には出場したがベストコンディションからはほど遠く、4位。それでもグランプリファイナルへの出場を果たし、これは2年連続のタイトルを勝ち取った。


その2週間後、全日本選手権の王者のタイトルも守ったが、腹痛によりガーラは棄権、手術をうけて2週間の入院治療のうえ1ヶ月の安静を言い渡された。「壁を乗り越えたらまた壁があるんですよ…」とこのシーズンを彼は説明する。


2月、3度のナショナル・チャンピオンは右足首を捻挫し2週間の休みを余儀なくされ、トロントへ帰っての練習は不可能になった。かわりに上海で行われた2015年世界選手権まで彼は日本でコーチ無しに自主練習をすることになった。


体調的にはもう戻ったし、クリーンに滑れる自信はあると彼は話していたが、やはりきちんとしたトレーニングを受けられなかったせいで4回転ジャンプが不安定になり、世界王者のタイトルは今回、トロントのクリケットクラブでの友人、スペインのハビエル・フェルナンデス選手に譲ることになった。


「たぶん、試合の勘がなくなっていたんだと思います。この試合のためのピーキングに集中していなかったんだと思います。その結果、ベストを出すことができなかった。でも、ハビエルの優勝はうれしいですよ。自分の中では90%は悔しい気持ちがありますけれど。」とフリー・スケートのあとで、羽生は話した。


悔しさは、優勝しなかったことよりもシーズンを通してショート、フリーともにクリーンな演技を見せられなかったことにある。なので、この仙台出身の若者は、4月中旬に東京でおこなわれた世界団体戦に出場し、どちらのプログラムも成功させることでシーズンを終わらせたいと考えたのだが、残念ながら、思い通りにはいかなかった。


ショートではクワド・トウと3Aを決めたが、3ルッツ・3トウのコンビネーションで転倒。フリーではクワド・サルコウと8つのトリプルジャンプを決めたがクワド・トウがトリプルになってしまい、最後にトリプルトウをダブルにして、ザヤックを防がなくてはならなくなった。


どちらも1位で、結果として日本チームは銅メダルを手にしたが、彼は満足していなかった。「今まで何度も言ってますけど、やっぱり悔しいです!悔しくなかった試合って、ないですね。」


悔しかったシーズンからも、この世界選手権銀メダリストは何かを得ることができた。今シーズンの一番の収穫は、と聞かれて「今は、プログラムの中でクワド・サルコウをきれいに降りることができるようになりました。それに、練習中のラン・スルー(曲かけ通し)でも、前よりもずっと安定して滑れるようになりました」と彼はいう。


確かにクワド・サルコウの着氷率とGOEの点数は、シーズンを通して伸びている。「このシーズンが失敗だったかどうかは、見方によると思うんです。でも、失敗は成功へのステッピング・ストーンだから。失敗してみないとわからないことって、あると思うんですよ」と羽生は言う。


「手術に関しては不可抗力でしたが、このシーズンに起こったことの多くは、自分のせいだし体調管理もできていなかったと思っています。毎回ベストを出すということは現実には不可能ですが、それでもコンディションの調整をもっときちんとしなくてはいけないなと思います。世界団体戦のときのような良い演技をできるように努力しなくては、今後戦い続けていくことはどんどん難しくなるでしょう。」


世界団体戦のあと、羽生はトロントにもどり、新しいプログラムの準備を始めた。6月、彼は日本にもどってアイスショーでフリー・スケートの一部を初公開した。多くの人が驚いたことに、彼は「陰陽師」という映画のサウンドトラックを使い、「和」の世界を選んだのである。このプログラムで彼は、安部清明という陰陽師を演ずる。


「新しいシーズンでは、演技の枠を広げることに挑戦したいと思っています。いろんな音楽を聴いてどれが自分に合うかを考えました。その中で、今度は和風というのはどうだろうと考えました。今の現役日本人の男子スケーターの中でも、和ということを表現できるのは僕だろうと思っています。和の持つ繊細さと力強さを体の線を使うことで表現し、自分の特徴を生かしたプログラムを作り出したいと思っています。」とグランプリファイナルを二回制したチャンピオンは言った。しかし、日本人の振り付け師に頼むことなく、彼は今回もカナダのシェイリン・ボーン氏に振り付けを頼んだ。


「きっと日本人の方にお願いすればもっと日本的な振り付けになったと思いますが、あまり日本的になりすぎることを心配しました。シェイリンは、日本人でない目で選んだ「和の要素」を拾い出してくれると思いました。」


その過程のなかで、シェイリンは何度も日本の伝統的な舞踊や能楽を見て、動きを研究したそうである。彼のトレードマークのハイドログレーディングやレイバック・イナバウアなどの動きを取り入れたコレオグラフィを作り出したそうである。アイスショーではビールマンスピンはみせていなかったが、それもプログラムの練習では行っていると彼は明かした。


芸術面だけでなく、技術面でもさらに挑戦は続いて、フリーでは三回の4回転ジャンプを組み込むという。これは、もともと昨シーズンやりたかったことだ。クワド・サルコウではじめ、クワド・トウそして後半にクワド・トウのコンビネーションを入れるつもりだそうだ。


「ビョンチャン・オリンピックを目指すのなら、難易度を上げる必要があります。それだけでなく、我々の世代のスケーターは、このスポーツをどんどん進化させなくてはいけません。点数だけの問題ではないんです。点数は、うまく演技ができたときについてくるものです。スコアを上げるために難易度の高いことに挑戦するのではなく、自分を成長させるためにやっているのです。」


2種類の4回転を組み込んだ構成(サルコウとトウ)は、このオリンピック・チャンピオンの前に立ちふさがる壁である。


「サルコウも、トウも、ちゃんと降りなくてはなりません。最初のクワド・トウを着氷できなければ、後半の構成、特にトリプル・トリプルに響いてきます。僕はダブルアクセル(失敗が原因でジャンプ構成を変えなくてはならない場合)が苦手なので、最初のクワド・トウを決めることは重要です。2種類の4回転をプログラムに組み込むことで、プログラム・コンポネンツの可能性を広げることができるのです」と、グランプリファイナルのフリーでパーソナルベストを出した彼は言った。


壁は乗り越えなくてはならない。クワド・サルコウとクワド・トウループのほかに、彼はクワド・ループも練習しており、最近ではアイスショーでは跳んで見せたりしている。しかし、試合ではプログラムに組み込むつもりはない、と明言している。彼はショートプログラムで100点を超えている唯一のスケーターだが、2015-16年のシーズンを見据えて、自分を「追いかける立場」という。


「オリンピックで勝ったからって何も変わりません。ショートやフリーのあとに疲れきっちゃうことも変わらないし、世界選手権を取りこぼしたことも変わりません。今は、(フェルナンデスという)チームメイトを追いかける立場です。彼はいつも近くにいて、悔しさを思い出させてくれます。この悔しさをばねにして、また前に進みたいと思っています。」


とはいえ、他にもライバルがいて戦わなければならないこともよくわかっている。3度の世界選手権王者、パトリック・チャン選手とは、2015年のスケート・カナダで正面対決するのだ。グランプリ・シリーズのアサインメントの発表の前、羽生はチャンのカムバックを喜んでいた。


「すごく楽しみです。また追いつくという立場をモチベーションにして、楽しみたいと思っています。」チャンと対決するという経験は、自分を集中させるのに役立つのだと彼は話す。


「オリンピック・シーズンは、グランプリ・シリーズでチャン選手に勝てませんでした。勝たなくちゃ、勝たなくちゃ、と思いつめていて、自分の演技に集中できていなかったんです。その結果、大きな差をつけられて負けていた。でも、それからは自分のコンディションに集中して、演技に入り込むことを学びました。」


http://www.goldenskate.com/2015/06/yuzuru-hanyu-2/