「はーい!じゃあ、お昼兼ねて休憩になりまーす!」
午前中のシーンを撮り終えたキョーコは、前を歩く光を見つけた。
「光さんっ…!」
走り寄るキョーコ。
「京子ちゃん、お疲れ様っ。」
「光さん、お昼、ご一緒にいかがですか?」
にっこりと微笑むキョーコに光は、
「えっ…// お昼?
嬉しいけど…、俺午後は別の仕事入ってるから、もう行かなきゃいけないんや…。」
「そうなんですね。
ブリッジロックとしてのお仕事ですか?」
「うん、そうだよ。」
「お二人にもよろしくお伝え下さいね!」
「うん!またね!」
光はせっかくのキョーコからの誘いに乗れず、心底悔しがった。
(あ~~~~~~っ
京子ちゃんとのランチがぁっ…
それにしても…、ストレートロングの京子ちゃんも可愛いなぁ…
……よしっ!
この映画撮影中にもっと仲良くなるんやーっ!)
そして、光を見送ったキョーコの後ろから、社が話しかけて来た。
「キョーコちゃん!お昼行こう~。」
「社さん!…と、敦賀さんっ。
ハイ!
いいんですか?ご一緒しても…」
「もちろんだよ!行こう~!」
スタッフからロケ弁を受け取った3人は、気候の良さからロケバスや控え室ではなく、
撮影場所であるテニスコート脇の木陰のベンチに腰掛けた。
「あの航太役の男の子って、確かうちの事務所のタレントだよね?
キョーコちゃん、もともと面識あったの?」
社がキョーコに尋ねる。
「あっ、はい。そうなんです。
同じ部署の、先輩に当たるので、、、」
「それにしても、仲良さそうだよね?
共演とかしたことあるの?」
「えっ!っと、きょ、共演っ…。
そ、そうですね!そんな感じですっ…。」
(どうしよう~っ……
坊のことは絶対バレたらまずいし、
あんまり深く聞かないでぇっ、社さんっ!)
一方キョーコの隣に座る蓮は、終始無言…。
(ん??
なんか、怨キョレーダーが……
どうして…?)
「あのぅ………、敦賀さん?
何か、私、気に触ることでも……?」
キョーコは恐る恐る蓮の顔を覗き見る。
「……ん?
あぁ…
ちょっと、考え事してただけだよ?」
(どうしてこの娘には分かっちゃうんだろう…
俺の僅かな感情の変化を……
それにしても、あの彼と共演??
最上さんの出演番組は、全てチェックしてるつもりでいたけど、
彼のことは見たことがない筈………)
3人がロケ弁を食べ終わる頃、社の携帯が鳴った。
「…っと、電話だ。
蓮、キョーコちゃん、
悪いけど、俺先に行ってるね。」
2人だけ残された状態になり、キョーコは先程の怨キョレーダーのこともあって、何となく気まずい空気を感じていた。
そんな空気を打ち破ったのは蓮であった。
「最上さん、ロングのウィッグ、久しぶりだね?」
「あっ、はい!そうですね。
でもストレートは今だけで、この後は女子大生らしく巻き髪になっていくみたいなんですけど……///」
キョーコはウィッグの髪を手に取りながら、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「…そうみたいだね。
ストレートロングは、あの日以来……だね?」
「えっ?あの日……」
キョーコが蓮と視線を合わせると、何故かそこには………
(よよよよ、夜の帝王~~~っ!!!?)
蓮はキョーコのウィッグの髪を一束手に取り、
「………ホントに、君をどうにかする日が来るとは、
ーーーね?」
キョーコの耳元でそう囁き、耳朶をペロリと舐めた。
「えっ!?………ひゃんっ!!?/////
今っ、なっ!?舐めっ!!?/////」
キョーコは驚き、
舐められた耳朶を押さえながら、顔を真っ赤にして蓮を見遣ると、
蓮は、ニッと悪戯な笑みを浮かべた。
「~~~どどど、どうにかってっ…/////
それにっ、君…って!?/////
どうにかされるのは、私じゃなくてっ!由紀ですからぁっ!!
紛らわしい言い方、しないで下さい~~~~っ!!!/////」
キョーコはロケ弁の空箱を片手に、真っ赤な顔を隠しながら、その場を走り去った。
「ーーーフゥ………。」
そして蓮は、キョーコと光の関係に対するヤキモチから、つい意地悪をしてしまった自分を自嘲した。
⇒Intertwined love (5) へ続く