1963年4月に自身2枚目のアルバム『THE FREEWHEELIN'』に収録するために録音した中の1曲が「Masters Of War」(邦題:戦争の親玉)です。

当時アメリカは公民権運動が盛んだった時代。ワシントン大行進が8月に行われる前夜にボブ・ディランは、その後ヴェトナム戦争に投入される兵器ビジネスの実体を見抜いていたことになります。


残念ながら、オリジナル音源はYouTubeには上がっておりません。数年前に買ったCD『ブーツレグ・シリーズ』にはデモ録音(音楽出版社にて制作した音源)ヴァージョンもありましたが、それもありません。

止むを得ず、ライヴ録音(収録日時場所不明)にスターリン等の写真を編集した映像をディランの歌唱ヴァージョンとして使わせていただきます。歌詞にご注目ください。

ボブ・ディラン ライヴ 歌詞がカラオケ状態で付いています(笑)。




昨年注目を浴びたイギリスのシンガー・ソングライター、エド・シーランがこの歌をギター一本で切々と歌っています。心に沁みます。彼のアルバム『X』(と書いて、マルチプライとよむそうです)も味わいがあってよかったです。

エド・シーランのアコースティック・ヴァージョン




次はオルタナ・ロックのパール・ジャムが、アコースティックな演奏で出演したテレビの映像。ボクも何枚かアルバムを持っていますが、ここではビックリするほど生音。歌詞を伝えたい時には、サウンドは生音で控えめに、というのが流儀なのでしょう。




最後に日本でも70年代に人気があったアメリカのパワフルなロック・バンド、マウンテンがオジー・オズボーンをフィーチャーして演奏しています。
残念ながら、このバンドの人気を支えていたフェリックス・パッパラルディは参加していませんが。





ボブ・ディランを米コロムビアレコードでデビュー・アルバムを契約することができたのは、同社のプロデューサーのジョン・ハモンドのゆえ。

ジョンは、1930年代からジャズのプロデューサーとして、企画コンサート『FROM SPIRITUAL TO SWING』をカーネギー・ホールで開催して、
ライヴ録音を録るなど、ジャズをアメリカ文化史として捉えていた人物。

そのハモンドがA&Rを努めたディランのファーストアルバムは、カヴァー曲中心であった(ディランの自作は全13曲中で2曲のみ)ためか、殆んど売れなかったという。

コロムビア社内でも「ディランはハモンドの趣味」と揶揄されていたらしい。それでも2枚目を自作中心で録音できたのも彼の信念だったといわれています。

「風に吹かれて」「北国の少女」「戦争の親玉」「はげしい雨が降る」「くよくよするな」「第3次世界大戦を語るブルース」「アイ・シャル・ビー・フリー」など、今の日本でも通用するテーマを多く歌っています。

時代を見据えた慧眼ぶりに驚くばかりです。