世界中がかたずをのんで観たソチ五輪の浅田真央のフリー演技の音楽は、ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの最高傑作といわれるP-CON2番です(文字数の関係でこう略させていただきます)。

ネット上ではそのピアノ演奏者は、ボリス・ベレゾフスキー (Pf) ということになっていますが、あの4分30秒は生涯観た人の心に残りそうな名演技と名演奏だったと思います。





まことに口はばったいですが、ボクは高校生のころラフマニノフのP-CON2番にハマりました。バイロン・ジャニスというピアニストが著名なのかどうか、いまも分かりませんが、あの暗く重々しい演奏をLPで(それこそ溝が擦り切れるくらい)繰り返し
聴いては感動していました。(その後、ルービンスタインやクライバーンなど、多くの演奏家の演奏も聴きましたが、ボクにはバイロン・ジャニスの演奏が最高だったと未だに固く信じています)


クラシック名曲をポピュラー・ソングに仕立てるのもアメリカ音楽業界お得意のノウハウです。

古くはアル・ジョルソンの「虹を追って(I'm Always Chasing Rainbows)」(1918年にヒット)の元ネタは、ショパンの「幻想即興曲」の中間部のメロをアダプトしたもの。
(後にサミー・デヴィスJrがカヴァーしたものもステキでしたが)マイ・ブログでもその他、いろいろ取り上げていますので、興味のあるかたはどうぞ。


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このラフマニノフも数々のアダプテーションがありますが、どうやらこれが最初のアダプトみたいです。

英語のタイトルが「Full Moon and Empty Arms」というタイトルでアメリカのバリトン歌手、ネルソン・エディが歌っています(1945年)。これはピアノ協奏曲第2番の第三楽章の第2主題が原曲です。

ネルソン・エディ




それにしてもラフマニノフが作曲者であることは明白なのですが、この「Full...」はバディ・ケイとテッド・モスマンが共作したことになっているそうです。

さて次は異色のリズムアレンジ、日本のポップス界でも人気のあったこのかた、カテリーナ・ヴァレンテのラフマニノフ。冒頭の音頭的リズム感がたまりません。伸びやかな声が良かったですよね?といっても古すぎますかね。




さて1946年にフランク・シナトラがヒットさせた「Full Moon and Empty Arms」を聴いてみたいと思います。昭和でいうと21年。日本では♪赤いリンゴに・・・の頃ですか。感無量です。




調べてみると、シナトラにはもう一つのラフマニノフ主題をモチーフにした「I Think Of You」という曲があります。多彩というかなんというか(笑)。




さてさて、このシナトラの前者「Full Moon...」を聴いたボブ・ディランがカヴァーしちゃったのですよ、このアルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』で。

ボブ・ディランで「Full Moon and Empyty Moon」です。うーん、どうですか?みなさん。




さてロック・アーティストがラフマニノフのP-CON2番をアダプトして有名なのは、ラズベリーズから独立したEric Carmenの「All By Myself」。

言うまでもなく、この曲は同曲をモチーフにしていますが、このテレビの公開番組ではまさにその「主題と変奏」の様相を呈しています。とてもデリカシーに富んでいてステキです。

なお、この番組で司会のヘレン・レディ(彼女がこんな番組のMCをやっていたとは・・)が「All By Himself」と紹介したのは、なにかの間違い?




かくしてディランの新録音アルバムから2曲もご紹介したので、このCDも買った値打ちがあったというものです。これからは、我が家のCDラックの奥の院に鎮座していただくことになると思います。



そういえば昨年の12月に念願の竹内まりやさんの武道館コンサートを観ることができたのですが、中で歌われた「静かなレジェンド」という曲について、まりやさんがMCで「ソチでの浅田真央さんのフリーの演技にインスパイアされて作った」のだと話しておられたのが忘れられません。