熊本地震 で 被災された みなさま、
いまなお 余震が続き 不安な時 を お過ごしのことと 思います。
心より お見舞い 申し上げます。
地震が おさまり 安心して 生活できますように お祈りしています。
polarislove
『 Yちゃん の おはなし 』
私が 小学校 5 年生 のとき でした。
当時 私は バス通学 を していました。
私のおうち は 郊外にあり バス停まで 子供の足 で 1時間 くらい かかりました。
毎日 かなりの距離 を 往復する のですが
嫌とも 思わず こんなものだ と 思って 歩きました。
最初は 私の姉妹 を 含めて 6 人 で 集団登校 を していましたが、
そのうち Y ちゃん という 男の子 が 加わりました。
Y ちゃんは 小学 3 年生 くらいだった と 思います。
Y ちゃんは いつも にこにこしている 男の子 でした。
Y ちゃんは 足が 悪くて ひょっこ ひょっこ と 体を 左右に ゆらして 歩きます。
聞き取りにくい 発音で 単語 を ゆっくり 首を 前に ふりながら しゃべります。
Y ちゃんは 長文 を 話すことは 難しいよう でした。
いつも 「 あ・り・がっ・とぉ。 」 と 言いました。
Y ちゃんは それまで お母さんが 小学校まで 付き添って 登校していたのです。
Y ちゃんは 歩くのが ゆっくりでしたから
6 年生 の 私の姉 が Y ちゃん と 並んで 歩くように なりました。
歩く順番 は 5 年生 の 私が 先頭になり
その すぐあとを 1 年生 の 男の子 が 続きます。
そして 私の妹 や 女の子達 が 続き
列の 最後に Y ちゃんと 私の姉 が 歩きました。
ランドセル を せおった 7 人 の 小学生 が
毎日 同じ 小学校 まで バス に のって 通いました。
私たち 7 人 の 乗る バス停 は バス の 車庫 でした。
バス の 発車時刻 は 決まって います。
Y ちゃんが 集団登校 に 加わってから
バス停 に たどりつくのに 時間 が かかるように なりました。
このままだと 予定 の バス に 乗り遅れます。
そこで 私たち 7 人 の 小学生 は 考えました。
それは
「 バス ひきとめ 作戦 」 でした。
バス ひきとめ 作戦 とは
まず 元気の良い 妹たち が 先発隊 として バス停 まで いっきに 走ります。
次を 私 と 1 年生 の 子 が 走ります。
そして そのあとを Y ちゃんと 姉 が ゆっくり 走ります。
バス停には 私たち 小学生 が 乗る バス が すでに 横づけ されていて
扉 を 開けた状態 で 出発 を 待っています。
そこへ
先発隊 の 妹たち が まず たどりつき
そのバス の 開いた 扉 の 階段 に 片足 を のせ てすり を 持ち
「 今 まさに 乗りますよ。」 と いう かっこう を する。
妹たちは 走っている 私たち に むかって
「 はやくー、 はやくー。 」 と 叫びます。
そこへ 2 番手 の 私たちが 到着します。
バス停 に 到着した 私たち も いっしょになって バス の 乗降口 で
Y ちゃんと 姉 を 待ちます。
「 がんばれー、 Y ちゃん がんばれー。 」 と 大合唱 に なります。
そして そこへ 息 も たえだえ の Y ちゃん と 姉 が 到着します。
そうやって 小学生 7 人 の 考えた 「 バス ひきとめ 作戦 」 は
見事 な チームプレー とともに 成功 したのです。
それは 毎日 成功 しました。
こうなると もう 集団登校 ではなくて 集団脱走 の ような かんじ でした。
Y ちゃんは バス停 まで 真剣 な 顔 で ひょっこ ひょっこ 走ってきて
大歓声 の 中 到着 すると
とっても うれしそうな 顔 で
まっかな ほほ を して
「 あ・り・がっ・とぉ。 」 と おじぎ を して 言いました。
私たち 小学生 7 人 は バス に 乗る とき
運転席 に 座っていた 車掌さん や
バスの中 で 出発 を 待っていた ビジネスマン に
遅い と 言って 怒られたことは ありません。
たぶん バス の 出発時間 は いつも 遅れていた と 思うのです。
私たち 小学生 が 走って やってくるのを いつも 待っていて 下さったのです。
大人の人 は みんな
足の悪い Y ちゃん が 早く 走れないことを 知っていたのでした。
そして いっしょうけんめい 走ってくる Y ちゃん や 私たち 小学生 を
やさしく みまもって 下さったのでした。
ありがたいなぁ と 思います。
小学生 の 集団登校 を みると あの時 の Y ちゃん を 思い出します。
Y ちゃん が 私たち と いっしょに 登校する ことを 喜んでいて
Y ちゃん の お母さん は
他の子供 ( 私たち ) と いっしょに 通学できたこと を 感謝していた と
私の母 から 聞きました。
Y ちゃんは 今 どうしているかしら。
今でも にこにこ 笑って
「 あ・り・がっ・とぉ。 」 と 言って おじぎ を しているのかしら。
Y ちゃん 元気 ですか。
Y ちゃん に 会いたいです。
Y ちゃん の まわり に やさしい人 が いっぱい いますように、
Y ちゃん が 笑顔 で 暮らして いますように、
いつも お祈りしているよ。