前回は、
側頭葉腹側部のニューロンが
特定の複雑な図形を
短期記憶しているということが
ユニットレコーディング法で
初めてきっちりと分かった
という Nature 論文を紹介しました
拙ブログ『記憶と側頭葉(2)』
ところで、
宮下博士らの実験で
特筆される工夫の一つが
フラクタル図形の使用です
サルに見させる図形や画像は
実験を始める前から
見慣れたものであってはいけません
しかも、
見慣れない図形を
たくさん用意しないといけない
そんなとき、
フラクタル図形は
パラメータを少し変えるだけで
全く違う図形が簡単に得られるのです

さて、
前回ご紹介した、宮下博士による
複雑な図形の短期記憶に関する
Nature 論文は、1988年の1月号
同じく、1988年の10月号に
また宮下博士の論文が掲載されます
しかも、単著
今度は、長期記憶です
Miyashita Y (1988)
"Neuronal correlate of visual associative long-term memory in the primate temporal cortex"
Nature 335: 817-820.
前の論文と同様に
遅延見本合わせ課題をサルにさせ
側頭葉腹側部から
ニューロン活動を記録します
遅延見本合わせ課題というのは
ある見本の図形を少し見せた後に消して
しばらく経って、また図形を見せて
それが見本の図形と同じか否かを
答えさせる課題でしたね
もちろん、
サルに見せる視覚刺激は
フラクタル図形です
違うのは
遅延見本合わせ課題をトレーニングして
成績が85%になっても
見せるフラクタル図形の順番を固定して
2週間ほどトレーニングを続けたこと
オーバートレーニングというか
学習というか
順番を覚えないといけない
わけではないのですが、
何となく覚えてしまうのを狙います
そして、
ニューロン活動を記録するときには
その学習したフラクタル図形だけでなく
新しいフラクタル図形も使います
学習した順序も関係なく
両者からランダムに
すると、どうでしょう
新しい見本図形を見せたときには
図形が消えると反応がなくなっても
オーバートレーニングで使った図形では
図形が消えた後も反応が持続する
ニューロンがあったのです
しかも、
特定の見本図形でなく
学習した際の順序が近い近い図形にも
少し弱いものの同様に反応しました
つまり、
学習したときに順番が近かった図形も
連想記憶していて、それを担っている
ニューロンだと考えられるのです
長期記憶に関わり、しかも
連想記憶にも関わるニューロンが
側頭葉腹側部にあることが
分かったということです
同じ年に first author で
2本の Nature 論文
スゴいですね。。
宮下博士は
1988年まで東大医学部講師でしたが
翌年、助教授を飛ばして
東大医学部教授に昇任されています
(おしまい)
文:生塩研一
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