ブエノスアイレス(1997年 98分)

監督:ウォン・カーウァイ

出演:トニー・レオン、レスリー・チャン

 

風呂に入っていると猛烈にポエティックな感情に包まれたので、ウォン・カーウァイ見てた。

 

過去作は天使の涙と恋する惑星を中学生くらいのときに見て以来、両作とも、特に恋する惑星は何度も繰り返し見るくらい好きなんだけど、他は見たことがなかった。

 

ずいぶん前にDVD買ってそのままだったブエノスアイレスをこの機会に見てみた。

 

 

この手の類の映画は好きなものが多くて、マイプライベートアイダホだとか、日本映画でも一番好きな映画のうちの一つである、46億年の恋なんかを連想させた。

 

さっき出した二つは抑制して抑制してある一点で今にも消えてしまいそうな灯火のように、一瞬だけ輝いて燃え尽きてしまうような彗星のように感情や思想を吐露するのに対し、これは主演二人のエネルギーが常に画面からはみ出るくらいに爆発している。乾いた質感や荒涼みたいなもが強く印象に残っている。

対照的に、画面を常に覆う雰囲気はとても綺麗なんだけど、どこか寂しげで静かでそれでいて冷たい。

 

ウォン・カーウァイ映画でよく見られるわざとピンぼけしたカットなんかももちろん挟み込まれていて、その画というものが一枚の絵画のように美しく、荘厳ささえ感じる。

この監督の、青だとか緑を使った描写が好きすぎる。

 

アルゼンチンのブエノスアイレスの街並みの切り取り方は、全く違う質感の作品ではあるけれど、ヴィム・ベンダースのパリ、テキサスやバグダッド・カフェを思い出した。

 

主演の二人の無骨さの中にある美しさみたいなものも素晴らしい。常にボロボロなレスリー・チャンも最高だし、どこか虚ろなトニー・レオンも最高だ。恋する惑星でも見ることのできた、トニー・レオンのブリーフ姿、この世界で一番かっこいいブリーフだ。

 

こんなに映像が綺麗なのに、目よりも耳が大事だ、心の声がより聞こえるみたいなフレーズを登場人物に言わせるなんてずるい。

 

ラストシーンの巨大な滝のように理由もなくどこからか湧き出してきたのかわからない感情は消えてゆき、世界の果ての純粋で壊れやすい愛を僕は見た。

 

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