③
もっとソフトな部活だと勝手に思い込んでいた。
サッカーとか、バレーとか。
まさか野球部とは。
ものすごく硬派ではないか。
別に、嫌じゃないけど。
夜、ご飯を食べ終えるとすぐに、いそいそとテレビの前に座り込む弟。
釘付けになっているのはプロ野球。
私の肩にも満たないちびっ子なのに、ルールはしっかりわかっている。
「ねえ、野球のルール教えてよ」
姉としてのプライドを捨てて、そう頼み込んでみた。
が、返事はない。
完全無視だった。何もそこまで集中しなくても。
「ねえってば」
隣に膝をつき、軽く揺さぶる。
すると弟はちっと生意気な舌打ちをした後、テーブルに置いてあった
一冊の本を投げてよこした。
「それ持ってどっか行って」
それきり、私とは一言も口を利いてくれない。
この子はまだ、例の女の子にふられたことを根に持っているのか……。
そう解釈し、すごすごと自室へ引き上げる。
弟が貸してくれたのは、「わかりやすいベースボール」と題した
野球のルールに関する漫画だった。
これを明日までに読まなきゃ。
気付くと、階段を上る両足に力が入っていた。