土曜は渋谷まで。O-EAST。GARGOYLEの30周年のライヴである。80年代中期に結成しているバンドで今まで全く止まらずやってきた(特にメタルの)バンドは彼らを含めても数えるほどである。30年という年月をほとんどが固定メンバーでやってきているということ自体も奇跡的とも言えるが、またGARGOYLEは「ヴィジュアル系」とカテゴライズされるタイプのバンドの中でもさらに異質なスタイルであったし、海外を視野に入れてみても、同じような音のバンドはほぼない、というよりあり得ないというぐらいに個性的である。

ここで、30周年ということで、自分の中のGARGOYLEというバンドについて語ろうと思う。彼らのライヴに初めて行ったのは、ちょうど24年前に「天論」が出た時の地元の今はなきCLUB GIO市川でのワンマン2Daysの1日目(7/10)であった。その前から当時のギタリストの屍忌蛇さんという存在は物凄い影響力を俺に与えていたし、シアトリカルなアプローチを取り入れたプロフェッショナルに徹したステージングには圧倒された。ほどなくして屍忌蛇さんが脱退という報には驚きを隠せなかった…バンドの看板ギタリストが?という…。
その後の屍忌蛇さんの動きはANIMETAL、VOLCANO(「ボルカノ」も含む。)と進んでいくわけだが、GARGOYLEの方もまた次の年の1月にまさに今回の会場の向かいの(当時の)ON AIR WESTで見たし、その年の7月に国内のハードなバンドが集結した「LIGHTNING & THUNDER」の初回(CLUB CITTA'川崎)でも見た。(初回の関東公演の布陣はVOLCANO(ボルカノ)、YOUTHQUAKE、GUILTY VICE、AION、東京YANKEES、そしてGARGOYLE。)そしてさらに、2001年のオールナイトイベント(10組出演で、X.Y.Z.→A、BOW WOW、BEFORE CHRIST、BLINDMAN、大谷令文GROUPなどジャンルは多岐にわたり、屍忌蛇さんもカヴァーバンドで出演。)でもトリで結成10年以上を経たバンドはさらに凄みをましていた。
今回はその時以来にライヴに行く事になっただけに、バンドのサウンドはどのようになっているのか?など興味は尽きなかった。

最初にスペシャルオープニングバンドとして、ヴォーカルにNoGoDの団長さん、ギターにはLa'cryma ChristiのHiroさん、ドラムにはMAEKAWA SHINGOさんという方、コーラスにはPHANTOM EXCALIVERのKacchangさん、そしてベースにはDEAD ENDのCrazy Cool Joe御大!!というなんとも豪華なラインナップの本家のカヴァーバンド(自称:ニセGARGOYLE)が出演。Cool Joeさんが後輩にあたるGARGOYLEの曲を弾くというのは意外にも思えたが、すでにそこにこだわるというのは関係がないのかもしれない。
先週2回も書いた例の"Hit The Lights"式ドラム・フィル+パワーコードでスタートし、一気に、ファーストのタイトルがミステリアス過ぎた"“ぎ”"へ。この曲のリフの動き方や構成自体、GARGOYLEというバンドにしか作れなかったと思う節がある。さらに、途中の掛け合いもなかなか良かった"ないづくし"。この当時からGARGOYLEはファンクとメタルと日本民謡を融合させたような独特の曲を持っていたし、その他の曲でもとても実験的な部分を垣間見る事が出来る。そして、"ないづくし"は彼らの代表曲といえる完成度を持っているのだ。初めて聴いた時は理解を越えていたが、それはそれは斬新な曲だった。
メンバー紹介をして、ラストはスピードナンバーの"Gordian knot"を演奏して去った。

スペシャルオープニングバンド(偽GARGOYLE)@渋谷O-EAST 7/15
SET LIST:
1. “ぎ”
2. ないづくし
3. Gordian knot

(全てGARGOYLEのカヴァー)

15分もしないぐらいで、本家の登場。
まずは、幕が開くと4人が並んでいて、Kibaさんの30年前の1987年のファースト・ライヴの事などを回想しながらの30周年に向けての言葉が語られる。それが終わると、メンバーそれぞれが短くメッセージを伝え、それぞれの位置へと移動し、SEからパイロが大きく鳴らされて、"邪悪"が放たれる。2曲目は"ジェットタイガー"。ともかく、昔から鉄壁とも言うべきタイトなリズム隊は全く揺るぎがない。そしてKentaroさんのギターはサウンドは少々現在のメタルのシーンで考えると低音を削った感じの音だが、だからといってバンド・サウンドが軽くなるわけはなく、リズムはとてもへヴィだ。そして、シュレッド的なリードが物凄い。速度は速いがとても細かいニュアンスが出ていて、ギター・ヒーローとしての存在感が物凄く大きい。

"死に至る傷"、中間に重めのリフ展開を持つ"人間の条件"と続き、KibaさんのMC。今回のチケットは1枚で2人入れるという特殊なものなので、「(連れの人で)初めて見る人もいらっしゃることでしょう。今日は本当にありがとうございます。」と述べる。「GARGOYLEが30年という事は、人生のほとんどがこのバンドと共にあったわけで、ある意味では物心ついたらGARGOYLEみたいなもので…よく、人生長いか短いかとかっていうけど、僕にとってはこのGARGOYLEでの30年という年数しか知らないので、長いのか短いのかは分からないです。」と続けたKibaさん。なんとも重みのある言葉だ…。
そのまま「もう、23年も前になる。"約束の地で"。」とバラード調の名曲へと。収録されている「月の棘」は屍忌蛇さんが抜けて、オリジナル・メンバーの与太郎さんとKentaroさんが加入して5人編成になって初のアルバムであったが、この曲は、それまでにはなかったタイプの曲で、少し驚いたという記憶もある。Kentaroさんのヴォリューム奏法が印象的であった。そして、少し静寂が支配し、アカペラで歌い出したのは、「天論」の1曲目、"審判の瞳"!この演出もさすがだ。さらに"Dragon Skull"、"神風ギャング団"と続く。

「今回の30周年のライヴは1年前から計画していました。」とKibaさん。そして、ここで、「ちょっとゲストを呼びましょうか?」というと、凄い歓声が。
「屍忌蛇君!」現れた屍忌蛇さんは、「天論」の頃の衣装を着ている。未だにあの頃のイメージは俺の中では大きいものがある…。「こんな日がくるとはねぇ…。」とKibaさん。ホントに何度も「いつかは共演してほしい。」と思っていただけに、この30周年にこの競演は感涙という他はない。曲はまず、"月下濫觴"。この曲は、93年にGIOで見た時に1曲目であったということもあり、感慨深い。まさに24年前を思い出す…。そして、これはまずやらないわけにはいかないだろうという"Bala 薔薇 Vara"。この曲の展開も"“ぎ”"と同じく初期の独特の雰囲気を持っている。Kentaroさんと屍忌蛇さんのツイン・リードが炸裂!うおお!!そして、「璞(あらたま)」のトップの、鋭いリフと「首を変えろ!」という詞が鮮烈な"真王"!もう、なんとも言えない気分だ。24〜5年前の色々な事が甦る!

屍忌蛇さんは一度ここでステージを去り、また現在のラインナップへと。「よく『長く続けている秘訣は何ですか?』というような質問をされる事はあるんだけど……やめる事には理由があるんだけれども、やめない事には理由がないんですよ。」とKibaさん。禅問答的?とも言える感じだが…「我々もね、やっぱり躓いたりとかそういう事は色々あったし、屍忌蛇君が抜けた時なんかも大変だった。それでも前へ進んでいくという事がまず大前提としてあったから、いくら躓いたりとかしても、なんとか次に進んでいけるはずだと…そう思ってやってきたから、結局今があるというか、そうやって、またこれからも進んでいくんだと思います。」と、やめるという選択がなかったという事を述べていた。しかし、これはやはり意志をもって次に進むというのには物凄いパワーが要ると思えるし、ピンチを何度も"乗り越える"ことが出来た人達の言葉には重みがある。30年以上全く止まらず続けて来たメタル関係のバンドは数えるほどとは冒頭にも書いたが、その年月を考えるとやはりとてつもないことである。
大作の"曼陀羅の民"、ベースのイントロから始まる"異血"と続き、次は、掛け合いのやり方を冒頭で示して、"VIVA!-aso-VIVA!"。途中でバルーンが降って来て、ToshiさんがMCを取る。盛大な盛り上がりである。そして、"死ぬこととみつけたり"、「フューチャードラッグ」から"Genom"、ラストはまたまた激速の"影王"。スモークが視界を埋め尽くした…。ここで本編は終了…それにしても、激速ナンバー連発でツーバス全開…Katsujiさんのスタミナはハンパない…。

10分ぐらい経ってアンコール。Kibaさんは赤い衣装に赤いハットを被っている。そして出てくると、オーディエンス側から"Happy Birthday to You, GARGOYLE♪"と大合唱される。サプライズで驚くメンバー。
ToshiさんのMCがここであり、「俺とKibaで最初に始めて…1年やって何もなかったらやめようといっていたのがなんと30年ですよ。」と。KatsujiさんもMCを取り、さらに再び呼ばれた屍忌蛇さんからも「継続は力なり!それに俺も今もやってるからね!『今からやぞ』!」と熱きメッセージ。始まった曲は、ファースト「禊(みそぎ)」のトップ曲にしてPVも作られた(当時のインディーズでカラーであそこまでコンセプトのしっかりしたPVはおそらく初だったのでは?と思う。)"Destroy"。速弾きツインの部分は屍忌蛇さんとKentaroさんが向かい合って弾く!超絶!!中間でサイレントになりKibaさんの「破壊せよ!」の声がだんだんと大きくなり、後半パートへと入る。ううむ、感無量…。
そして、また一度屍忌蛇さんは去り、ここで、「もう1人ゲストを……与太郎!」下手袖から現れるオリジナル・ギタリストの与太郎さん。これは全くアナウンスされていなかったし、本編で屍忌蛇さんが呼ばれた時、「与太郎さんも来ればなぁ…。」と思っていただけに、物凄く驚いた。もちろん、フロアからは大歓声をもって迎えられる!!「月の棘」のラインナップになってから最初に演った曲と言って、"完全な毒を要求する"を演奏。今は特にギタリストとしては活動していないという与太郎さんだが、ギターは何も遜色はなかった。屍忌蛇さんが再び呼ばれ、「与太郎君が作って、屍忌蛇君がギター・ソロを付けて完成した初期のこの曲を!」と言って、なんとトリプル・ギターで演奏されたのが"Hunting Days"!!これはおそらく、今日の最大のハイライトであったのではないかと思う。会場に着くまでの暗い気持ちがパン!となくなった!

2回目のアンコールも10分少ししてベートーヴェンの「第九」をSEにメンバー登場。なんと、BATTLE GARGOYLE(全身レザーの過激な衣装に身をつつみ、激速曲だけで構成したライヴをするというコンセプトでのバンド形態。)時の衣装を着ている!このアンコールだけ、BATTLE GARGOYLEとしての演奏のようだ。
曲はまずは"ヂレンマ"。この曲はGARGOYLEではアンコールで演奏される事が多い激速ナンバーで、所謂ヴィジュアル系とカテゴライズされた当時のバンドの中ではXの"No Connexion"と共に、本格的なブラストを取り入れているという面で自分の中ではかなり意味深い曲でもあるが、エレクトリックのギター・ソロに移る前にスパニッシュ色の強いアコースティックのソロが導入されているという構成も何ら無理ないもので、セカンド・アルバム「檄(ふれぶみ)」の中でも一際印象深いナンバーである。
続いて、"Fire King"、そして、「璞」のラスト・ナンバー、"Dogma"をさらに過激にアレンジした"Super Dogma"と3曲立て続けに演奏してBATTLE GARGOYLEとしてのセカンド・アンコールが終わった。

3回目のアンコールはそれほど時間を経ずに現れ、代表曲である"Halleluyah"を演奏。個人的にはここでもトリプル・ギターでやってほしかった感もあるが、それは贅沢過ぎるかな…。Toshiさんが「GARGOYLEに関わってくれた全ての人に感謝します。」と告げ、さらにKibaさんが「自分はこれまでGARGOYLEとして恥ずかしくないようにと日々考えてきました。GARGOYLEはこのメンバー4人だけではなくて、お客さんも含め、色んな方がいてGARGOYLEなんだと思っています。これからも恥ずかしくないGARGOYLEでいたいと思っています。」としめた。

ラストに記念撮影。ほぼ3時間ほどの30周年ライヴが終わった。
"ヂレンマ"の歌詞にあるように、これが「始まり」でもあるのだ。

GARGOYLE@渋谷O-EAST 7/15
SET LIST:
1. SE〜邪悪
2. ジェットタイガー
3. 死に至る傷
4. 人間の条件
5. 約束の地で
6. 審判の瞳
7. Dragon Skull
8. 神風ギャング団
9. 月下濫觴(With 屍忌蛇)
10.Bala 薔薇 Vara(With 屍忌蛇)
11.真王(With 屍忌蛇)
12.曼陀羅の民
13.異血
14.VIVA!-aso-VIVA!
15.死ぬこととみつけたり
16.Genom
17.影王
-Encore1-
1. Destroy(With 屍忌蛇)
2. 完全な毒を要求する(With 与太郎)
3. Hunting Days(with 屍忌蛇、与太郎)
-Encore2-(BATTLE GARGOYLE)
1. SE:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」〜ヂレンマ
2. Fire King
3. Super Dogma
-Encore3-
1. Halleluyah


 

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