ことし1年、無病息災で…

2015年01月07日(最終更新 2015年01月07日 10時48分)
西日本新聞朝刊より

 ことし1年、無病息災で。けさは、そんな願いを込めた七草がゆが多くの食卓に並ぶことだろう。優しい味は、正月の料理と酒で疲れた胃腸に心地よい

▼1月7日に7種類の野菜を食べる中国の風習が日本に伝わったのは平安時代。室町時代に七草をかゆにして食べるようになった。江戸時代には幕府が公式行事にしたことで庶民にも広まったという

▼江戸期の風俗習慣を記録した喜田川守貞の「守貞謾稿(まんこう)」に〈正月七日 今朝、三都(江戸、京、大坂)ともに七種の粥(かゆ)を食す〉とある。春の七草は当時も、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの7種類

▼〈しかれども今世、民間は一、二種を加えるのみ〉。庶民には7種すべてそろえるのはぜいたくで〈京坂は薺(なずな)に蕪菜(かぶな)を加え煮る。江戸にても小松という村より出る菜を加え煮る〉と

▼もとより、雪に覆われる北国では野辺に七草を求めようもない。ニンジンやゴボウ、山菜、キノコなど手近な食材を使った七草がゆが各地に残る。納豆や豆腐、こんにゃく、油揚げなどを7種のうちに数える地域もあるそうだ

▼7日は1年で最初に爪を切る日ともされる。守貞謾稿は〈今日、専(もっぱ)ら爪の斬初(きりぞめ)をなすなり〉と記す。ナズナを入れた茶わんの水に指を浸して爪を切る「七草爪」は邪気を払うおまじない。七草のかゆと爪切りで、たちの悪いインフルエンザの撃退にも効果がある、かも。