先日、豊橋市八町通の文化財建築2棟を見てきました。

 
 〇 豊橋市公会堂
 
 
 一つ目は、八町通2丁目22番地の「豊橋市公会堂」。
 
  側面にはあまり特徴が感じられないのですが、正面のファサードは、かなり個性的。
 
 
 エントランスの大階段を昇り、2階に玄関。
 
 コリント式の列柱4本が並び、その上は半円アーチです。
 
 
 私が思うに、注目は階段室の屋上で、
 
 ドーム屋根と基部のモザイクタイルは、豊橋市美術博物館のウェブページ「豊橋市公会堂」の言い方を借りると、“中近東の建物を思わせます”。  
 
 さらに四囲には羽根を広げた大鷲が周囲を睥睨するという、威厳に満ちた装飾が見られます。
 
 
 現地の説明板によると、1931年、豊橋市制25周年を記念して建築されたもので、1998年、国の登録文化財に指定されたそうです。

〇 豊橋ハリストス正教会

 さて、私が見たかったもう一つの建築は、八町通3丁目15番地の「豊橋ハリストス正教会」。
 
 
 日本正教会のウェブサイトでは「豊橋ハリストス正教会・聖使徒福音記者マトフェイ聖堂」です。
 
 ダヴィド・水口優明編著『正教会の手引』(日本ハリストス正教会教団全国宣教委員会、2013年改訂)の「固有名詞対照表」によると、「ハリストス」とは他宗派における「イエス」であり、マトフェイとは「マタイ」。
 
 さらに同書を見ると、、
 
 聖堂は、普通、何かしらの祭や聖人を記念して建てられます。その祭や聖人の名前が、そのまま聖堂の名前になります。
 
と書かれているので、この教会は「聖使徒福音記者マトフェイ」、使徒であり福音書の記者であるマトフェイ(マタイ)を記念した聖堂ということになります。
 
 
 なお、この聖堂は国の重要文化財。
 文化財としての登録名は「豊橋ハリストス正教会聖使徒福音者馬太聖堂」です。
 
 

 正教会の聖堂建築の特徴は、まず入口が西であること。

 

 前掲『正教会の手引 改訂版』によると、

 

  聖堂は普通「東向き」に建てられます(入口が西ということ)。太陽という光の昇る方向である東に向かうということは、ハリストスという救いの光に向かい、神の国を待ち望むという姿勢を表すからです。

 

 二つ目は、入口の真上に鐘楼があること。

 

 

 三つ目は、玄関から東に、啓蒙所、聖所、至聖所が並ぶということ。
 
 前掲『正教会の手引』によると、この構造は、旧約時代のモイセイの幕屋やソロモンの神殿がひな型だそうです。
 
 そしてもう一つ忘れることができないのは、ドームの上の十字架なのですが、
 
 
 横棒の上にもう一本短い横棒、下にも斜め棒がつく、「ロシアン・クロス」です。
 
 前掲『正教会の手引 改訂版』によると、上の短い横棒は罪状書き。下の斜め棒は足台であり、天国を指し示しているそうです。