今回はビッグバンドをアレンジするに際して覚えておきたい管楽器の特殊な奏法を紹介していきたいと思う。


1,シェイク
 金管楽器の演奏者であれば、出した音に倍音列状で次に高い音へ高速でピッチを振動させるという奏法である。具体的な奏法としてはリップスラーを小刻みに行うことでシェイクを表現します。
そのためリップスラーが出来ないとシェイクも出来ないということになる。

 また、シェイクの演奏上の注意としては、基音を演奏した直後にシェイクをすぐに始めないということである。すぐにシェイクを始めてしまうと基音が曖昧になりシェイクの効果を最大限に得ることができない。
シェイクはあくまで装飾である事を忘れてはいけない。
また、リードトランペット以外はシェイクを演奏する際には基音よりも少しアタックを弱めに奏する事を心がけなくてはならない。

 厳密にはシェイクではないが、木管楽器におけるシェイクのような役割を持つものにトリルがある。木管楽器でトリルを奏する際には、基音の次に高いダイアトニック、又はクロマティック・ノートへトリルをする。

(記譜法)
シェイク


次の動画の3分6秒の辺りでトランペットがシェイクを演奏している。
A Night In Tunisia / Count Basie Orchestra Live in Tokyo 1985


次の動画の52秒辺りでトランペットがシェイクしている。
Take The A Train / 原信夫とシャープス&フラッツ


次の動画の18秒の辺りでサックスによるトリルが演奏される。
Don't Sit Under The Apple Tree / GLENN MILLER ORCHESTRA



2,フォール(フォール・オフ、スピル)
 フォールはある特定のピッチから不特定のピッチへ加工させるテクニック。
ブラスプレイヤーにおいては、トランペットの場合はハーフバルブ、トロンボーンの場合にはスライドを用いて倍音列を素早く滑らかに下がる。
ウッドウインドプレイヤーにおいてはフィンガリングを用いてクロマティックスケールを素早く下っていく。

(記譜法)
フォール

次の動画の4分47秒辺りでトランペットとトロンボーンがフォールしている。
Take The A Train / 原信夫とシャープス&フラッツ


3,スミア(またはベンド)
 スミアとはトロンボーンの場合にはフラットした音からスライドアップし基音へ向かう奏法。または、ベンドアップして正しいピッチまで上げていく奏法。
ジャズのテイストを醸し出すにはとても有効な奏法、ただし多様しすぎると原曲を壊してしまう事が多い。注意するべき点である。

(記譜法)
スミア

次の動画の22分2秒辺り曲のエンディングでソプラノサックスがベンドアップしている。
Summer time / Wynton Marsalis



 今回3つの特殊効果をもたらす奏法を紹介したが、このような特殊な効果をもたらす奏法は数限りなくある。その中でも特に有名なものを紹介した。
機会があれば他の特殊効果をもたらす奏法についても紹介していきたいと思う。