品格というもの | ぴぴ王子学府

品格というもの

 最近「なんとかの品格」という本がベストセラーになったことにより、やたらと品格という言葉が使われるようになり、「○○の品格」みたいなテーマで話題になったり、「品格を身に着けるためには」みたいな講座があったり、とんでもない人のことについての報道などで、「なんて品格のないことでしょう」という結びのことばもに使われたりもする。


 こうなると流行語ということになるが、我輩としては大笑いである。


 まず、その発端となったベストセラーは我輩は見ていないので、その本のことをどうこう言うわけじゃないです。読んでない本のことは何一つ語れるものではないし、ベストセラーとなったからにはそれなり以上に楽しい内容なのだろうと思う。いつか読むかもしれないけど、今のところは読んでないので、それをまず前提にします。


 そもそも品格とはなにか?

 人間の精神における高潔さのことである。

 決して上っ面の礼節とかマナーとか服装とか立ち居振る舞いのことではない。


 例えば、ビシッとブラックスーツ(※ブラックスーツとは黒いスーツに限らず濃紺のスーツも含む)を着てワイシャツにネクタイ、ピカピカの黒いプレーントゥを履き、髪を6.4に分けて整えて髭もちゃんと剃っているビジネスマンがいたとしよう。キチっと礼儀正しく、姿勢も良く、言葉遣いも丁寧でにこやかである。彼の名はぴぴを君という。

 このぴぴを君は品格があると言えるか?

 必ずしも言えない。

 どんな卑劣漢であっても、外見的なものは上記ビジネスマン、ぴぴを君程度には装えるからだ。いや、卑劣な人間であればこそ、卑劣であることがバレないように尚更に装うということすら考えられる。

 ぴぴを君は他人に安心感を与えられるような外見を備えているキチっとした人だということは言えるが、品格のある人だとはまだ言えない。


 もう一人、カミグチ君という人がいる。

 髪はボサボサで無精ひげ、派手なアロハシャツを着てボロボロのジーンズを穿いて薄汚れたワークブーツを履いていて、ドクロのリングをはめたりブレスレットをしたりとチャラチャラとアクセサリーをつけ、口癖は「おっぱい命」。さして礼儀正しいわけでもなく、キツいジョークやツッコミを入れたり皮肉な笑いをしたりする。

 ヒマなときはコンビニの駐車場に座り込み、タバコを吸いながら女性の乳房や尻、脚を鑑賞しているのだという。

 このカミグチ君は品格が無いと言えるか?

 言えない。怪しげなやつだし、変質者のようでもあるし、なんだかだらしないなあということはできても、品格が無いとは言えない。


 例えば、ある日その二人がたまたま同じ場所にいた。


 カミグチ君はドでかい派手なアメ車をコンビニの前に停め、缶コーヒーを買って駐車場に座り込んでタバコを吸っているとき、ぴぴを君は国産のピカピカの中型車に乗ってそのコンビニにやってきた。ぴぴを君は「なんだか係わり合いになりたくないような男がいるなあ」と思ってチラッとカミグチ君を見た。

 そのとき、「あーれーーーー」と悲痛な叫び声が聞こえた。カミグチ君ぴぴを君が同時に声のした方を見ると、おばあちゃんが倒れていて、屈強な感じの東南アジア人がハンドバッグを持って走っていくところだった。「ドロボーーー」とおばあちゃんがまた叫ぶ。

 ぴぴを君は「おっと、おれはそんなことにかかわっている場合じゃない、コンビニでシッコして取引先に行かなければ。君子危うきに近寄らずだ( ̄ー ̄)フッ」と思い、コンビニに入る。

 カミグチ君はさっと立ち上がり、バッグをひったっくった外国人の若者を追いかけ、とうとう追いついてタックルし、バッグを取り戻した。両腕を擦り剥いてしまったし、外国人は取り逃がしてしまったが、バッグを持っておばあちゃんのところに戻り、「ばあちゃんケガはないかい?」とバッグを渡す。そして「これからは気をつけないとね」とニッと笑い、派手なアメ車に乗って走り去った。


 こういうことなのである。

 人間の品格とは、なんとなく漂いはすれど、究極の場面で初めて現れるものなのだ。

 なにも装っていない自然体の中に本当に品格のある人間がいるものなのだ。

 社会的に信用されそうな外見のぴぴを君は、実は自分のことしか考えてないウンチ野郎に過ぎなかったわけだ。


 やたらと「お嬢様風に」を意識した服装をしたがる人はヤリマンだったり、セレブ風を目指す人は貧乏人だったりするように、装いとはなにかを隠すことなのだ。

 

 礼節を軽視し、無礼な態度をするとかマナーが悪いことが「品格が無い」というのとは違う。単に「礼儀をわきまえてない」「マナーが悪い」というに過ぎない。


 そもそも礼儀もマナーも「社会においてお互いがなるべく快適に共存できるように」という原則でうまれたものである。だから、「あんたは礼儀を知らない、マナーが悪い」と一々探し出して喚き立てる人こそ礼儀もマナーもわかっちゃいない人なのである。


 礼儀をわきまえ、マナーの良い人に出会うと確かに安心する。大切なことだとは思う。我輩もそのようでありたいと思う。しかし、礼儀をわきまえずマナーが悪いことがイコール「品格が無い」ということではない。そこを間違わないで欲しい。


 そして品格は、「こうありたいものだ」と目指すものでもある。

 決して、他人を裁いたり批判するためのモノサシではない。

「あの人は品格があるなあ」となんとなく感じることはあれど、「なんて品格が無いんだ(`ε´)プンプン」と怒るためのものではない。

「品格が無いですよね」「こうなってくるともう一度○○の品格というものを考えさせられますねえ」なんてことを平気で言う人こそただのウンチ野郎であり、他人をとやかく言う前に自分の品格を考えろってこと。


 他人の品格をとやかく言う人は100%品格の無い人だと断言する。


 品格のある人は他人のことをとやかく言わないものだからだ。


 繰り返すが、品格とは人間の精神における高潔さのことである。

 決して上っ面の礼節とかマナーとか服装とか立ち居振る舞いのことではない。


 我輩は一日中おっぱいのことを考えているからといって、それが品格が無いなどとは二度といわないでくださいね(`ε´*)プンプン