歯と爪【新版】 (創元推理文庫)/東京創元社

¥994
Amazon.co.jp

みなさんこんんばんは。
2014年も半分終わってしまいましたね。
早い。とにかく早いです。
今年の目標は順調に達成できているでしょうか。
残りの半分、前のめりに張り切ってまいりましょう。

さて、本日の本はバリンジャー『歯と爪』です。
バリンジャーという作家さんをはじめて聞いたのですが、どうやらテレビの脚本を書かれていた方のようですね。本作は彼の渾身のサスペンスです。

主人公は一人の奇術師。
印象的な言葉で物語は幕を開けます。

『まず第一に彼は、ある殺人犯人に対して復讐をなしとげた。
第二に彼は殺人を犯した。
そして第三に彼は、その謀略工作のなかで自分も殺されたのである。』

えっえっ結構大事なことネタばれしてますけど?
大丈夫?大丈夫?と読者は一気に物語に引き込まれるわけです。
奇数章にある殺人疑惑のかかった男の裁判、
偶数章に一人の手品師の物語が交互に展開されていきます。
複数のまるでばらばらの物語が、交差し終盤で収束するという手法は現代ではあまり珍しくないどころか使い古された感がありますが、当時はきっと斬新な手法だったのでしょう。

以下ネタばれ

手品師のリュウは着のみ着のままでニューヨークに出てきたタリーという女性と恋に落ち、結婚します。しかし、タリーは大きな秘密を抱えていました。彼女の銅版師であるおじが、偽札作りの片棒を担がされて、そのせいで殺されたかもしれないというのです。彼を殺したグリーンリーフという詐欺師からの電話が二人の幸せな時間を奪ってしまいます。

一方そのころ法廷では、アイシャム・レディックという運転手の殺害容疑で一人の男が裁判にかけられていました。死体は暖炉で焼かれ、その証拠は燃え残りの義歯と切断された指でした。証拠不十分を盾に弁護士は戦いますが、どうやら分が悪い様子。

事故に見せかけてタリーを殺されたリュウは復讐を誓い、自らをアイシャム・レディックと名乗りグリーンリーフに近づきます。ここね、冒頭でね、自分も殺されるって書いているから管理人なんかは「らめええええ、いったら殺されちゃうううう」と思って読んでいました。案の定グリーンリーフから反撃を受けて指を切断されてしまうリュウ。しかし彼は殺人者である前に、一流の奇術師でした。

なんと、自分の死体をでっち上げちゃうんですね!義歯と指と灰を使って。うーん!気持ちのよいイリュージョンですこと。法廷で裁かれていた男はグリーンリーフ、リュウは法律という力を使って彼を殺すことに成功したのでした。

歯と爪が今回の事件のキーアイテムなのですが、これは「苦労する」という意味のことわざでもあるようですね。気になる冒頭、ハラハラする展開、美しいラスト、一流のサスペンスを堪能いたしました。