これは完全なるフィクションである。
登場人物は実在の人物とはまるで関係がない。
では、はじまりはじまり。。。。

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「お客さん、全然こないね・・・・」
家内のみゆきは壁の時計を見ながら、ため息をついた。
時計の針はすでに20時を回っていた。
田園都市線溝の口駅から徒歩3分の雑居ビルの地下に
「花の大江戸フォーク村ぴのきおらんど」という居酒屋をオープンして
早3ケ月。連日閑古鳥が鳴いているありさまだ。
30人くらいのお客さんが入るくらいの席は用意しているが
全席埋まったことなど一日もない。どころか一日平均2~3人のお客。
「考えが甘かったんじゃない・・・・・・」みゆきは続ける。
カウンターには、お客さんが一人。名前は「佐々木」さんという。
職業は警察官。40代半ばのお客さんで酔うと、たちが悪い。
今、カウンターで酔っぱらってつっぷして寝ている。
まだ生ビール2杯しか飲んでないというのに。元々アルコールが弱いらしい。
悪酔いすると、もう止められなくなるのだ。かなりの変わり者で
非番の時にも拳銃を持ち歩く。指摘すると「趣味と護身用だ」とわけわからんことを
不敵な笑みで答えるから、ちょい怖い。先週は酔っぱらって拳銃を取り出し
「ロシアンルーレットだぁ!」と叫んで弾を4発詰め込んで、側頭部に銃口を
当て引き金を引いた。よくぞ死ななかったもんだ。
先々週はまだ、ひどかった。お店のギブソンのギターに3発撃ち込んだ。
そして銃口をふっと吹く。そんなバカ警官である。
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オレは警官佐々木さんに言った。
「佐々木さん、佐々木さん、うちは寝るお店じゃないよ。もう飲まないだったら
家に帰りなよ」
揺り動かしても起きない。起きない。
「どうせお客さん来ないんだし、そのままにしておけばぁ」みゆきは言う。
「いいんだよ!だいたいこのバカ警官のせいじゃねえの?酔っぱらうとすぐ拳銃
ぶっぱなすし、だから客がこねえんだよ」とオレは答えた。
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「佐々木さんのせいにしないの!」みゆきは言う。
「だって実際そうじゃん!どこの店に銃弾が飛び交う店があるんだよ!
出禁にしようぜ!このバカ警官」
そのとき、お店の玄関の扉の鈴がなって扉が開いた。
お客さんだ!
「いらっしゃ・・・・・・・い」
お客さんじゃなかった。火曜日と木曜日にバイトを
お願いしているまっちゃん事「松吉」だった。みゆきが申し訳なさそうに言う。
「ごめ~ん。。。まっちゃん。今日お客さん入りそうもないから、今日はバイトなしって
言うメール夕方送ったんだけど・・・・」
「いいの!いいの!今夜はお客さんとして来たから」
まっちゃんはカウンターの突っ伏したバカ警官を見て
「ちょっとやだ。やだ。またこのバカ警官来てるの!」
みゆきは言う。
「まっちゃん、ダメ!そんな事言っちゃ!聞こえたら大変な事になっちゃうから」
まっちゃんは、バカ警官から4席空けてカウンター席に座る。
まっちゃんは携帯のメールをチェックしながら話を続ける。
「やばいよねえ・・・お客さん。。。このまま来なかったらつぶれるんじゃない?」
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「ちょっとオレ、駅前でチラシ配って集客してくる」
そう言い残して店を出た。
うまくいくと思ったんだけどなぁ・・・・・
こんなにお客さん入らないなんて・・・・このままじゃやべえぞ!
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一方お店では。
いきなりバカ警官「佐々木」がむくっと起きた。
そして言う。
「やっとマスター出ていったか・・・・ふふふ・・・」
バカ警官佐々木はそう言うと、スボンのベルトをゆるめはじめた。。。

つづく。。。