桧原村のつづきです。
遥か向こうに見えるのは、観音の滝。
この辺りは、大小いくつもの滝があります。
次回は、この滝まで行ってみたいものです。
ランチを予約していた三頭(みとう)山荘に着きました。
お風呂に入りにきたらしい家族連れが、入って行きます。
食事する別館は、大きな古民家です。
日曜日のお昼だというのに、お客は私たち二人だけ。
この建物の右側の方が洋間になっていて、皇室の方々が、ここでお食事をされたようです。
秋篠宮ご夫妻、今上天皇ご夫妻の若い時の写真などが飾ってありました。
広い縁側から、水車が見えます。
私たちは、古民家にとってつけたような洋間より、畳の部屋の方が落ち着きます。
庶民だからでしょうか?笑
たくさんの山の幸。
そして、秋川牛の霜降り肉が出てきました。
なかなかのお味です。
天ぷらの揚げたてのも出てきました。
珍しい食材がいろいろ使ってありますが、聞かない限りはウンチクを語ったりしません。
さすが皇室御用達の鷹揚さがあります(笑)
こんなに食べきれるのかしら…と思いましたが、無事に完食。
ホトトギスの咲いている庭を眺めつつ、お風呂のある本館へ。
湯殿の向こうは山です。
湯殿の隅に階段があり、そこを登ると、展望露天風呂があります。
素晴らしい眺めでした。
入浴料とランチ込で、3900円でしたが、お値段以上の満足感がありました。
「お帰りですか?」
屋敷稲荷のあたりから、ガマさんが出てきました。
「またどうぞお越し下さい」
「それじゃ、ごめんなんしょ」
スタスタスタ…
<クマ吉くん>
安部麗子
他愛のない歌を歌いながら、動物達が下草を刈っています。
村長のクマ五郎さんが、蜂蜜のなめすぎとお酒の飲み過ぎで体を壊し、遠くの街の病院に入院してから、二週間が経ちます。
「長引くよ」とは言われていましたが、村長さんがいないと、今ひとつ仕事が楽しくありません。
「仕事は楽しくやりましょう。
楽しくなければ仕事じゃない。」
村役場の壁には、村長さんの達筆なポスターがかかっています。
それで、なるべく楽しくなるように歌を歌っているのですが、あれ以来、誰も心から楽しいと思った事はありません。
ある日の昼下がり、子供達が、ランドセルをカタカタ鳴らしながら走ってきます。
「大ニュース大ニュース!村長さんが帰って来るよ」
「向こうの山の麓から、ゆっさゆっさとやって来るよ」
「あれは間違いなくクマ五郎おじさんだ」
動物達は一気に活気づいて、歌声も弾んでいます。仕事も、今までの二倍もはかどって、しかも疲れたりしません。
しかし、現れたのは、クマ五郎さんではなかったのです。
クマ五郎さんにそっくりな若者でした。
「うぉーっ!」というもの凄い声で、一声吠えたのが挨拶です。
「叔父に頼まれて、村長代理として、今日から着任した、甥のクマ吉と申します。
街で金融業をやっとりますが、しばらく人に任せて助っ人に参りました。
よろしゅうおたのんもうします」
ジロリと一同を睨みます。
あっけにとられて、みんな黙っていますと、いきなりバッシーン!とそばの木を打って、黙って事務所に入ってしまいます。
その日からクマ吉は、一日中事務所に閉じこもって、パソコンを睨んでいます。
見かけはそっくりですが、クマ五郎さんとはゼンゼン違います。
三日目の朝の事です。
クマ吉が突然外に出てきたかと思うと、バッシーン!とこの前の木を打ったのです。
みんな、震え上がります。
「お前ら、やる気があるのか?
帳簿を見せてもらったが、なんだーこりゃー!
ウォー…!
いいか、仕事というのはなあ、利益が出てなんぼなんじゃ。
利益も出さねえくせに、歌なんか歌いやがって、百年はええというもんだ。
仕事もしねえで給料だけ持って行くやつは、ドロボーだ。
オイラがここにいるうちは、仕事の出来ねえやつはやめてもらうからそう思え!」
一時間もウダウダと、そんな説教をするのです。
いくらクマ吉が怒鳴りつけたって、山仕事はそんなにすぐにお金になるというわけには行きません。
草刈りや枝打ちをしながら、長い時間をかけて木を育てるのです。
金融道しか知らないクマ吉は、とうとう我慢出来なくなって、ある日、大きなまさかりを持って山に入り、メチャクチャに木を切り倒し始めます。
「いいか、お前ら!
仕事とは、こんな風にやるもんだ。
よく見とくがいい!」
ガッツーン!ドッシーン!
恐ろしい音が響き渡ります。
まだ切ってはいけない若い木も、神様の祀ってある老木も、おかまいなしです。
みんな、顔を見合わせて、何か良くない事が起こると感じています。
その時、「ぎゃーっ!」というもの凄い声が聞こえてきます。
ああ、やっぱり…クマ吉は、切り倒した大木の下敷きになって、死にかけていたのです。
病院に運ばれたクマ吉を、誰も見舞いになんか行きません。
クマ吉は、痛いのと寂しいのとで、毎日泣いています。
(なぜなんだ?
オイラはみんなが幸せに暮らせるようにと考えてるだけなのに…みんなのためを思っているだけなのに…なぜ?)
一方動物達は、前のように歌を歌いながら、のびのびと仕事をしています。
そこに、ヤマネの奥さんがやってきました。
あの日、ちょっと目を離した隙に、子供が倒れてきた木の方に、チョロチョロと行きかけたのだそうです。
潰された、と思った瞬間、クマ吉が大きな体で受け止めて、子供を逃がしてくれたというのです。
もっと早く来たかったのに、あまりのショックに腰が抜けて、今まで動けなかったとの事。
みんなで病院にお見舞いに行きます。
「クマ吉くん。君を誤解していたよ」
「早く良くなるといいね」
クマ吉は、涙がこみあげて来るのを感じます。
「いやいや、オイラが悪かった。
山には山の決まりがあるんだよな。
せっかく命が助かったんだから、これからは謙虚に生きるよ」
「良くなったら、快気祝いをするからね!」
「え?本気にしていいの?」
「もちろんさ!」
クマ吉は、痛みがスーッと軽くなって行くような気がしました。 了
豚バラ肉と大根とネギとゆで卵を、コトコト煮たヤツです。
実はこの3日ほど前の夜、同じものを作って、次の日のお昼に暖めて食べました。
その夜、冷蔵庫に入れる前に、もう一度火を通そうとしたら、もうカビていたんです。
ヌタ~っと気味悪く糸を惹きました。
暑い日、というより、湿気のもの凄い日でした。
悔しいので、もう一度同じのを作ったのです。
黒いツブツブは、山椒の実を醤油で煮たものです。
今度は失敗しないように、なるべく早く冷蔵庫に入れて、無事でした。
うまし!
遥か向こうに見えるのは、観音の滝。
この辺りは、大小いくつもの滝があります。
次回は、この滝まで行ってみたいものです。
ランチを予約していた三頭(みとう)山荘に着きました。
お風呂に入りにきたらしい家族連れが、入って行きます。
食事する別館は、大きな古民家です。
日曜日のお昼だというのに、お客は私たち二人だけ。
この建物の右側の方が洋間になっていて、皇室の方々が、ここでお食事をされたようです。
秋篠宮ご夫妻、今上天皇ご夫妻の若い時の写真などが飾ってありました。
広い縁側から、水車が見えます。
私たちは、古民家にとってつけたような洋間より、畳の部屋の方が落ち着きます。
庶民だからでしょうか?笑
たくさんの山の幸。
そして、秋川牛の霜降り肉が出てきました。
なかなかのお味です。
天ぷらの揚げたてのも出てきました。
珍しい食材がいろいろ使ってありますが、聞かない限りはウンチクを語ったりしません。
さすが皇室御用達の鷹揚さがあります(笑)
こんなに食べきれるのかしら…と思いましたが、無事に完食。
ホトトギスの咲いている庭を眺めつつ、お風呂のある本館へ。
湯殿の向こうは山です。
湯殿の隅に階段があり、そこを登ると、展望露天風呂があります。
素晴らしい眺めでした。
入浴料とランチ込で、3900円でしたが、お値段以上の満足感がありました。
「お帰りですか?」
屋敷稲荷のあたりから、ガマさんが出てきました。
「またどうぞお越し下さい」
「それじゃ、ごめんなんしょ」
スタスタスタ…
<クマ吉くん>
安部麗子
他愛のない歌を歌いながら、動物達が下草を刈っています。
村長のクマ五郎さんが、蜂蜜のなめすぎとお酒の飲み過ぎで体を壊し、遠くの街の病院に入院してから、二週間が経ちます。
「長引くよ」とは言われていましたが、村長さんがいないと、今ひとつ仕事が楽しくありません。
「仕事は楽しくやりましょう。
楽しくなければ仕事じゃない。」
村役場の壁には、村長さんの達筆なポスターがかかっています。
それで、なるべく楽しくなるように歌を歌っているのですが、あれ以来、誰も心から楽しいと思った事はありません。
ある日の昼下がり、子供達が、ランドセルをカタカタ鳴らしながら走ってきます。
「大ニュース大ニュース!村長さんが帰って来るよ」
「向こうの山の麓から、ゆっさゆっさとやって来るよ」
「あれは間違いなくクマ五郎おじさんだ」
動物達は一気に活気づいて、歌声も弾んでいます。仕事も、今までの二倍もはかどって、しかも疲れたりしません。
しかし、現れたのは、クマ五郎さんではなかったのです。
クマ五郎さんにそっくりな若者でした。
「うぉーっ!」というもの凄い声で、一声吠えたのが挨拶です。
「叔父に頼まれて、村長代理として、今日から着任した、甥のクマ吉と申します。
街で金融業をやっとりますが、しばらく人に任せて助っ人に参りました。
よろしゅうおたのんもうします」
ジロリと一同を睨みます。
あっけにとられて、みんな黙っていますと、いきなりバッシーン!とそばの木を打って、黙って事務所に入ってしまいます。
その日からクマ吉は、一日中事務所に閉じこもって、パソコンを睨んでいます。
見かけはそっくりですが、クマ五郎さんとはゼンゼン違います。
三日目の朝の事です。
クマ吉が突然外に出てきたかと思うと、バッシーン!とこの前の木を打ったのです。
みんな、震え上がります。
「お前ら、やる気があるのか?
帳簿を見せてもらったが、なんだーこりゃー!
ウォー…!
いいか、仕事というのはなあ、利益が出てなんぼなんじゃ。
利益も出さねえくせに、歌なんか歌いやがって、百年はええというもんだ。
仕事もしねえで給料だけ持って行くやつは、ドロボーだ。
オイラがここにいるうちは、仕事の出来ねえやつはやめてもらうからそう思え!」
一時間もウダウダと、そんな説教をするのです。
いくらクマ吉が怒鳴りつけたって、山仕事はそんなにすぐにお金になるというわけには行きません。
草刈りや枝打ちをしながら、長い時間をかけて木を育てるのです。
金融道しか知らないクマ吉は、とうとう我慢出来なくなって、ある日、大きなまさかりを持って山に入り、メチャクチャに木を切り倒し始めます。
「いいか、お前ら!
仕事とは、こんな風にやるもんだ。
よく見とくがいい!」
ガッツーン!ドッシーン!
恐ろしい音が響き渡ります。
まだ切ってはいけない若い木も、神様の祀ってある老木も、おかまいなしです。
みんな、顔を見合わせて、何か良くない事が起こると感じています。
その時、「ぎゃーっ!」というもの凄い声が聞こえてきます。
ああ、やっぱり…クマ吉は、切り倒した大木の下敷きになって、死にかけていたのです。
病院に運ばれたクマ吉を、誰も見舞いになんか行きません。
クマ吉は、痛いのと寂しいのとで、毎日泣いています。
(なぜなんだ?
オイラはみんなが幸せに暮らせるようにと考えてるだけなのに…みんなのためを思っているだけなのに…なぜ?)
一方動物達は、前のように歌を歌いながら、のびのびと仕事をしています。
そこに、ヤマネの奥さんがやってきました。
あの日、ちょっと目を離した隙に、子供が倒れてきた木の方に、チョロチョロと行きかけたのだそうです。
潰された、と思った瞬間、クマ吉が大きな体で受け止めて、子供を逃がしてくれたというのです。
もっと早く来たかったのに、あまりのショックに腰が抜けて、今まで動けなかったとの事。
みんなで病院にお見舞いに行きます。
「クマ吉くん。君を誤解していたよ」
「早く良くなるといいね」
クマ吉は、涙がこみあげて来るのを感じます。
「いやいや、オイラが悪かった。
山には山の決まりがあるんだよな。
せっかく命が助かったんだから、これからは謙虚に生きるよ」
「良くなったら、快気祝いをするからね!」
「え?本気にしていいの?」
「もちろんさ!」
クマ吉は、痛みがスーッと軽くなって行くような気がしました。 了
豚バラ肉と大根とネギとゆで卵を、コトコト煮たヤツです。
実はこの3日ほど前の夜、同じものを作って、次の日のお昼に暖めて食べました。
その夜、冷蔵庫に入れる前に、もう一度火を通そうとしたら、もうカビていたんです。
ヌタ~っと気味悪く糸を惹きました。
暑い日、というより、湿気のもの凄い日でした。
悔しいので、もう一度同じのを作ったのです。
黒いツブツブは、山椒の実を醤油で煮たものです。
今度は失敗しないように、なるべく早く冷蔵庫に入れて、無事でした。
うまし!