Mr. G | 1分で真島吾朗と恋したい!

1分で真島吾朗と恋したい!

龍が如くと真島さんが大好き。真島の兄さんの二次創作・恋愛小説を綴る。また、真島さんと澤村遥の禁断恋愛小説「般若の素顔と極道の天使」も連載中!



★小説内の主人公を好きな名前に変えて読めます❤
→「夢小説:Mr. G

「これからは、時々メシ作りに来てくれや」
そう吾朗さんに言われたあの日から一ヶ月が経った。私は週三回、彼の家へご飯を作りに通っている。彼の高層マンションは新築で生活感がなくショールームのよう。築十年の私のマンションとは大違いだ。

今夜は、吾朗さんが大好きなから揚げを多めに作った。
「これやったら、から揚げ一個で白メシ一合は食えるでぇ」
「もう。大げさだよ」
目を細めながら、ご飯を頬張る吾朗さんを見ていると、思わず箸が止まり、胸が幸福感で満たされる。

結局、大きなお茶碗にご飯三杯とから揚げを私の分まで食べた吾朗さんは、
「あ~、食った、食った。ほな、今日は皿洗ったるからなあ」
と、ニカッと笑いながら言い、目の前のお皿をガチャガチャと重ねていく。
「いいよ!吾朗さん、仕事で疲れてるし、私がする!」
「ええて。美香は座っとき」
「大丈夫!吾朗さんはテレビでも見てて、ね?」
「お、おう」

私は、お皿を吾朗さんから奪うように取り、キッチンへ運んだ。また、お皿を取りにテーブルへ戻って来ると、吾朗さんはソファにごろりと寝転がって、ケラケラ笑いながらバラエティー番組を見ていた。司会者を囲むように、芸人やタレントがそれぞれの体験談を話しているようで、笑い声が流れている。私は残りのお皿を重ね始めた。

「なあ、美香、この芸人、面ろいなあ。何ちゅう奴らや?」
「え?誰~?」
ぐるりと振り向いたその時だった。視界の端を黒い影が横切った。
「えっ?」
ぽつりと呟き、その影を目で追う。だけど、影はキャビネットの下へ消えて行った。
「なあ、美香、知っとるやろ?こいつ」
吾朗さんの声にはっと我に返り、テレビに映っている若手のお笑い芸人に視線を移した。
「ああ、この人たちね、ウーマンアワーっていうんだ。面白いよ~」
「せやなあ。せやけど、早口過ぎて分からへんとこあるわ~。やっぱ親父になってしもうたのぉ」
私は、そんな会話をしながらも、さっき見た影のことが頭から離れない。キャビネットの下を一度確認してから、お皿を運ぼうと手に抱えた時だった。足の下を黒光りするアレがはっていた。ゴキブリだった。

「きゃあ~、吾朗さん!ごきぶり、ごきぶり~!」
私は悲鳴を上げた。
「な、なんやて~!」
私は、ガシャンとお皿をテーブルの上に置くと、椅子に飛び乗った。吾朗さんを見ると、ソファの背に上ってしゃがみ込んでいる。
「吾朗さん、何してるの?早くごきぶり殺して~!」
「美香、何度もごきぶり言うな!聞いただけでも、アカンねや!」
「じゃあ、何て言えばいいの!?」
両腕で自分を抱きかかえながら、ソファの上で小さくなっている吾朗さんに訊いた。
「せや、『G』って言え!」
「じゃあ、今、『G』が私の椅子の近くにじっとしてるから、仕留めて……」
私は「G」を指差しながら、声を潜めた。

「なんで俺がやらなアカンのや……」
吾朗さんは、髪をガシガシと掻いて大きくため息をついていたが、両ももをパンと勢い良く叩いて立ち上がり、蛇柄のジャケットをソファに脱ぎ捨てた。それから、ローテーブルの上にあった雑誌を丸めだした。
「ご、吾朗さん、その雑誌ダメ!今日買ってきたばかりのアンアンなの!」
「んなこと知るかい。他に叩くモンが無いやないけ」
「あぁ……。まだ読んでなかったのに……」
「そないな顔せんでもええやろ?『G』退治に役立つ思うて喜んどき。ヒヒッ」
今回のアンアンには、好きな俳優さんのヌードも載っていた。それがごきぶり叩きになるとは思いもよらなかった。

吾朗さんは、丸めたアンアンを持って、恐る恐る「G」に近づき、狙いを定める。肩に描かれている白蛇が怯えているようだ。
「このドアホ!」
アンアンを「G」へ振り下ろした。だが、アンアンが「G」に当たる前に、「G」がなんと吾朗さんへ向かって羽ばたいたのだ。

「うぉ~!」
吾朗さんは、動物のような速さで椅子の上にいる私に抱きついてきた。背中の般若の刺青は、どことなく情けない顔に見える。「G」はゆっくりとまた別の方向へと飛んでいる。
「そこはアカーン!」
吾朗さんがそう言ったのも空しく、「G」が飛んだ先は、ソファに脱ぎ捨てられた吾朗さんのジャケットだった。「G」の黒い羽が胸ポケットの上で光っている。

「ハァ~。どないしたらええんや……」
吾朗さんは、私の肩に回した手に力を込めて呟いた。付き合って三ヶ月。こんな弱っている吾朗さんを見たのは初めてだった。いつも「俺より強いヤツなんておらへん」と、豪語していた吾朗さんが、まさか、ごきぶりでこんなに弱くなってしまうなんて……。
(ここは、私が吾朗さんを守る番だ!)

「吾朗さん、アンアン貸して?」
「なんでや」
「私が仕留める!」
私は、胸の前でガッツポーズを作った。
「アホか。女にそないなことさせれる訳ないやろ」
「でも、吾朗さん、すごく怖いみたいだし」
「そ、そないなことあるか、ボケェ!今までのは冗談や!」
「え?」
「今からスパーンと殺したるわ!見とけ!」

吾朗さんは、私からパッと離れると、ソファの上にあるジャケットへゆっくりと近づいた。
「死ねや!」
アンアンを「G」に叩きつけた。動かなくなった「G」を確認すると、吾朗さんは、「ハァ~」と言って、その場にへたり込んでしまった。
「やった~!さすがだね、吾朗さん!」
椅子から飛び降りた私は、吾朗さんのもとへ走り、首に手を回した。

「なあ、このジャケットもう着られへんなあ」
放心状態の吾朗さんがぽつりと言う。
「え?でも、クリーニングとかしたら、着れるんじゃない?」
「アホか。気色悪うて着れるか」
吾朗さんは、汚いものを触るように、袖を少しつまんで離した。

「美香、この「G」、捨てといてくれや」
「え?私が?ここまできたら、吾朗さんお願い!」
私は、吾朗さんを見上げ、すがるように言った。
「何で俺やねん!そや、じゃんけんで負けたほうが始末や。わかったな?」
じゃんけんが始まった。
「最初は、ぐー、じゃんけんぽん」
二人とも、気合を入れようと、大声を出す。
「なあ、何でパー出すんや~!」
吾朗さんは、グーにした手を恨めしそうに見つめていたが、ふと企みを含んだ笑みを浮かべた。

吾朗さんが、座ったまま腕を伸ばし、少し強引に私の腰に手を回して私を引き寄せた。
「なあ、今日の美香、メッチャ可愛いなあ」
「えっ?普通だと思うけど……」
首筋に当たる息遣いがドキドキを加速させる。
「せや。今から、新宿のPホテルのバーで夜景見ながらシャンパンやワインでも飲まへんか?」
「今から?」
「せや。ほんで、今夜泊まってくやろ?一緒に風呂入って、美香の身体キレイに洗ったるでぇ」
「そ、そんなのいいよ……」
洗ってもらっている光景をちょっとだけ想像してしまい、どくんと心臓が跳ねた。頬が熱くなっていく。腰に回された手にぎゅっと力が入った。
「なあ、美香、『G』片付けてくれへん?」
吾朗さんが低い声でささやいた。
「うん……。はっ!?」
思わず、私が「G」を始末する羽目になるところだった。私は、全身の力を込めて吾朗さんの身体を引き離した。

「もう知らない!私、もうお風呂に入って寝ます」
私はバスルームに向かって歩き出す。
「美香ちゃん!嘘に決まっとるやん。ほれ、もう捨てるでぇ。……お、捨てた!捨てたでぇ!」
背中にかかる声が、甘えてくる子供みたいだ。聞こえないフリをして、バタンと扉を閉めた。ワンピースのジッパーに手をかけた瞬間、扉が勢い良く開いた。不意に、吾朗さんが私を後ろから強く抱きしめる。

「きゃっ」
「一緒に入って、身体洗ってやるって言うたやろ?」
「ねえ、『G』は?」
「そんなんもう暗いとこに始末したったわ。ほな、入るでぇ」
吾朗さんがゆっくりジッパーを下ろしてくれる。さっきの彼の慌てぶりが次々と頭に浮かんでくる。私はついに無敵の吾朗さんの弱点を知ってしまった。
(カップルって、こうやって仲良くなっていくんだよね……)
ワンピースがするりと脱がされ、下着姿の私を吾朗さんが優しく抱きすくめてくれた。


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