今回は、特にとらえにくい「にせものの空腹感」についてです。


空腹感には本物の空腹感にせものの空腹感の2種類があって、本物の空腹感の感覚がわかれば、見分けられるとお伝えしました。


にせものの空腹感は、イライラや不安など、主に心理的な不快感が原因となっているのですが、それ以外の原因も存在しています。




今回は、心理的な不快感とは異なるものが原因となっているにせものの空腹感についてです。
これは本当に恐ろしいものです。ずっと原因を突き止めようとし続けて、2年半ほど前にようやくわかるようになったものです。



摂食障害で苦しんでいる人たちから、
「しっかりと食べて、それなりに満足できたつもりだったのに、食後しばらくして(1分~20分くらい)、急激に強い空腹感に襲われます。これはいったいなぜなのでしょう?」
というような質問をたくさんいただいていました。


この相談を受けると、適切なアドバイスもできなくて、苦しんでいました。


「しっかりと食べたのに強い空腹感に襲われる?」
本物の空腹感ではないだろうけど、心理的な不快感を感じているわけでもないようだから、にせものの空腹感とは言い切れないし・・・」

「いったいどういう理由なんだろうか?」


悲しいけれど、ずっとわかりませんでした。



あるとき、自分も朝食のあとに、妙な空腹感を感じることに気づきました。

「あれ、もしかしてこういう感覚のことなのか?」
と思いました。


最初は、血糖値なのだろうか、ホルモンなのだろうか、と考えていたのですが、姿勢を変えるだけで、この空腹感の感覚は変わるということがわかりました。


どうやら血糖値などの液性情報以外の可能性が高そうだと考えるようになりました。

そして、あれこれ考えていて、ようやくたどりついたのが、睡眠不足による不快感が原因ではないかということでした。


そのとき、ちょうど睡眠不足が続いていたので、それが原因ではないかと考えたのでした。特別な原因というのは、それくらいしか思い当たるものがありませんでした。



それで、その後もあれこれ調べていて、どうもこの睡眠不足による頭や体のだるさ、不快感などを空腹感の苦しさと感じてしまうようだと強く感じるようになっていきました。



でも、睡眠不足からくる不快感を空腹感の苦しさと感じてしまうなんて、さすがにそんな馬鹿なことはないだろうと思いました。
「いくらなんでも、そんなに感覚がいい加減なはずはない。」
と思ったのです。


でも、やっぱりそうみたいでした。



食後は血液を胃腸に大量にとられてしまうため、睡眠不足による不快感が急激に強まってしまうということが原因だったようです。
食後、眠くなるというのと原理は同じです。



摂食障害で苦しんでいる人は、ほとんどの人が睡眠不足や睡眠障害でも苦しんでいます。
睡眠を十分にとれていないということが、食後すぐに、特に強烈な空腹感を感じさせる原因となっていたようです。



 

体からの信号は不快というたった2つの情報が基本になっています。
そのため、イライラによる不快感を空腹による不快感と錯覚してしまったりするのです。
人間の感覚というのはあまり細かいものではなく、意外と大ざっぱなものなのです。



もともと、食べものを食べると、味やにおいの刺激でにせものの空腹感が強まり、食後もそれが残ることが多いです。
そのにせものの空腹感と、睡眠不足による頭や体のだるさといった不快感がより強烈になった不快感が、同じ不快感ということで一体となってしまい、それを強烈な空腹感と感じてしまうのだということがわかったのでした。


この強烈なにせものの空腹感にだまされてしまうと、
「どれだけたくさん食べても満足できない」、と恐怖におびえて、
食事をとること自体を恐れるようになってしまうのです。




また、睡眠不足による頭や体のだるさと同じく、肩や背中など、体のコリによる不快感というものも、にせものの空腹感につながります。

肩こりもひどくなると、頭痛がひどくなったり、体がだるくなったりするようになります。
慢性的な痛みや苦しみは、だんだん原因がはっきりとわからなくなり、単なる強い不快感としか感じられなくなっていくのです。

それで、空腹感の苦しさと不快感という点で共通しているので、別物だと区別できなくなってしまうのです。




そもそも、食欲、性欲、睡眠欲はどれも密接に関わり合っているので、どれかが狂ってしまうと、他の欲求に大きな影響を与えてしまうということも忘れてはなりません。

食欲の問題を乗り越えるためには、睡眠もなるべくうまくとるようにしていく必要があるのです。





まとめ


空腹感には、本物の空腹感にせものの空腹感の2種類があります。

そして、にせものの空腹感は心理的な不快感によるものと、睡眠不足体のコリなどが原因の不快感によるものがあります。

また、食べものの刺激や騒音など五感による刺激にせものの空腹感の原因となります。


解決は簡単ではないかもしれないけれど、原因がわかっていれば、かなり楽になるはずです。

やるべきことも見えてきます。

原因がわからないままだと、自己嫌悪になって、パニックになってしまうのも仕方がないと思います。

それほど恐ろしいものだからです。


何か、参考になれば嬉しいです。



次回は、にせものの空腹感を弱める簡単な方法と、大半の人が経験したことがある、「感覚のいい加減さの例」を紹介したいと思います。医学的に最近わかってきたことです。


睡眠不足の不快感を空腹感と錯覚するなんて、そんな馬鹿な話は信じられないなあと思う人も少なくないと思います。感覚は意外なほどあてにならないという例を紹介して、納得してもらいたいと思っています。