おまけ

8月31日

朝飯抜きで6:30のバスに乗る。実際には、朝食は5:30なので、1便のバスに乗る人も、充分に朝食を取る時間はある。

小さなマイクロバスなので、荷物を抱えるしか無く、結構つらい。
バスの運転手のおじいさんは、仙人風の容姿の話のおもしろい人で、聞いていて飽きない。

沼尻のゲートまでは道が悪く、所々落石の名残がある。これでは一般道路としては無理だろう。
運転手のおじいさんの話だと、いろいろ裏ルートがあって、一般車がゲート内の林道に入ってくることもあるそうだ。(実際一般車と見られる車をみた。)

笊ヶ岳(?)
笊ヶ岳(?) posted by (C)picotan

椹島付近で工事をしている関係で、こんな朝早くからダンプが入る。そのたびすれ違いに難儀する。(ただ送迎バスの運転手は慣れた物だった)

ほぼ時間通り、臨時駐車場前に到着。みんなが駐車場に向かう中、一人車道を歩き始める。
沼尻ゲートから先の車道は、きちんとアスファルトで舗装されているので、通行には何の支障も無い。
井川駅まで25kmくらい、普段なら訳ないんだけれど、さすがに荷物が大きく、山行ですでに身体がオンボロ、ガラクタの状態では、少々しんどい。

30分ほどで白樺荘に着く。白樺荘の駐車場の脇にヘリポートがあって、小さなヘリコプターが止まっている。おそらく「ラマ」だとおもう。かっこいい。

白樺荘
白樺荘 posted by (C)picotan
白樺荘のヘリポート
白樺荘のヘリポート posted by (C)picotan


そこから10分ほどで畑薙第二ダム。ここでトンネル。全く交通量が無いというわけでも無く、ちょっと怖かったので、ペンライトをぐるぐる回しながらトンネルを通過。

畑薙第二ダム
畑薙第二ダム posted by (C)picotan
畑薙湖
畑薙湖 posted by (C)picotan


路肩に500m毎に距離標識があるので、あとどれくらい歩くのか分かりやすい。臨時駐車場は静岡から80km。1時間5kmのペースであるく。体調がよければ軽く走りながら、というのを考えていたけど、足がもたない。。。
もう少し景色の良い(大井川をみながら)ところを歩くかと思ったが、殆どが樹林に覆われた、いわゆる林道で味気はない。

井川までの道すがら、何度も支沢を渡るのだけど、なかには水を補給できそうな箇所もあって、沢山の水を担ぐ必要は無いかも知れない。(一応用心のため、2Lほど椹島で汲んでおいた。)

結局2時間10km歩いたところで、運良く拾ってくれる車があって、そこから井川の駅まではあっという間。

ドライバさんは横窪沢小屋を手伝っている人だそうで、いろいろ話をする。
「横窪沢小屋は、みんな通過しちゃう小屋なんで、ほとんど泊まる人なんかいないんですよ。それで毎晩小屋番と二人で酒飲んでね。何やってんだか(笑)」

だそうだ。確かに位置的には、横窪沢ではなく、茶臼まで行っちゃうのかもしれない。
でも静かな小屋が好きな人。狙い目ですよ(笑)
横窪沢なら水も豊富だろうし、結構いいんじゃないかと思う。もっとも南アルプス最南部の小屋であれば、激混みというのは、おおよそなさそうだけれど。

車で走ると、改めて自分が歩こうとした道の長さ(無謀さ)を思い知らされる。
しかも、当初期待していた、井川本村から井川ダムまでの渡船は、渇水でダム湖の水位が下がっているため、運休していることを井川の駅で知る。危ないところだった。拾ってくれた運転手さんにはホントに感謝。(恥ずかしながら、そういうチャンスを全く考えていなかった、と言ったら嘘になるのだけど。)

井川駅の到着が早かったので、土本でキャンプを張ること無く、そのまま直帰する。(夕方の通勤ラッシュ時に、大きなザックを担いでうろうろするのを避ける目的で、土本の池ノ谷ファミリーキャンプ場で一泊を予定していた。)
ただ土本泊だった場合、千頭に朝着いて、SLで新菊川まで行こうかとも思っていたので、それは残念。

東海フォレストさんには、できれば井川の駅まで送迎バスを延長してくれると嬉しい。畑薙ダムと井川の駅間は有料と言われれば、何の躊躇の無く、お金は払うと思う。それが出来ないのは、おそらくは、法律の問題もあるとも思われる。
今後、最近取り組み始めたという、井川観光協会の送迎バスというのは、一つの選択肢になり得るとは思う。
聖岳登山口ー白樺荘と白樺荘ー井川の便を組み合わせれば、井川の駅にたどり着ける。ただ本数は少ない。

南アルプス南部は、あまりにもアクセスが悪い。それが今まで南アルプスに憧れていながらも躊躇していた大きな理由だ。

おそらくたくさんいるはず、
「南ア行ってみたいけどアプローチがねぇ。」
と二言目には口にしてしまう人が。

「是非また来たい!」と思ってはいても(ホントにそう思う!)、結局これだけ苦労しないと、その足下にも到達できないと考えると、やはり躊躇してしまう。

一方で北部の混みようも、今回初めて知ったが、これはこれで異常だ。アプローチがよくなると、こうなっちゃうのかなぁ。ジレンマだ。

自家用車を使ったアクセスだと、どうしても周回登山にならざるを得ず、バリエーションに欠ける。北海道や、北アルプスのような、自動車のピックアップサービスのようなものがあればまだましだが。個人的にはマイカー登山には否定的だ。

ただそれ故、これだけ静かな登山を楽しめるのは大きな魅力で、そのバランスが難しい。
今夏の山旅で平均してすれ違った人は日に10人程度、抜かれた人は1人。まだシーズン中にもかかわらず、この静けさは魅力になり得る。

また、今年は静岡行きのバスが運休になったのは痛かった。(数年前までは井川と畑薙ダムを往復する路線バスもあったそうだが、過疎化のあおり、廃止されてしまったようだ。)

井川の駅に
「南アルプス表登山口」
と誇らしげに書かれた案内板があるが、ここからの交通を不便考えると、あまりに空々しい気がしてならない。一体ここからどうやって「南アルプス」の山々にたどり着けるというのか。井川にはタクシーも無い。遠く静岡から呼ばないといけないらしい。一応井川も静岡市葵区ではあるけど。
せめて乗り合いタクシーのような物でもあれば。。。

井川駅
井川駅 posted by (C)picotan

バスが駄目なら、レンタサイクルなんてどうだろう?
井川、田代、畑薙ダム辺りに拠点をおいて、そこで乗り捨て可能なクロスバイクまたはMTBを用意しておく。(重たいザックを担いでいる人もいるだろうから、華奢なロードよりはMTBがいい。)
下山者と入山者が割合平均的に居れば、あまり動かすこと無く、利用が進むと、適度に散らばる。

自転車なら畑薙ダムから井川まで1時間から1時間半程度で移動できるだろう。(井川駅の手前を除いて大きなアップダウンは無い。)井川大仏のような観光地(?)にも気軽に立ち寄れる。逆に自転車の移動を前提にした新しい観光の創出も出来、地域の活性化も期待できるかもしれない。登山者に限らず、観光客もターゲットに出来るし。スポーツバイクはママチャリなんかと比べて、故障時の対応に強い。分解しやすいし、組み立てやすい。メンテナンスがしやすいのだ。なのでちょっと技術を覚えれば、誰でもメンテナンスできるのも強みだ。道はきれいに舗装された道路なので、そうそう壊れるとも思えないが。

(ただ、大井川鉄道の井川線そのものが赤字続きで、いつまで続くのか定かでは無いのもつらいんだけど。)
夢物語だろうか?悲しいかな多分に妄想ではあろう。

少なくともマイカーがないと山に登れない、という事態にはなって欲しくない。とくに私のように長距離の縦走を好む人には、例えマイカーがあっても意味をなさないし。マイカーによってスタイルを強制するような山登りは自由じゃない。

マイカーならではの自由、公共交通の手の届かない山へのアプローチがある、っていうのは確かにある。でも欲を言えば、一般的なコースに関しては、「マイカー登山禁止。みんな公共交通利用しましょう。」が理想だと思う。
その分、バスルートや乗り合いタクシーなどを充実させないといけないけど。登山客はあまりお金を落とさないから、一般観光客に比べ、地元にメリットはない、と言われる。

公共交通の利用で、少しは地元に貢献しても罰は当たらないんじゃないか?
ここ数年こまめにチェックしている、後立山の種池山荘のホームページでは、毎年のように路上に駐車する、マナーの悪いマイカーへのお願いが掲載される。

毎度の事ながら急行縦走になってしまったが、景色や高山植物を愛でながら、もう少しのんびり歩く縦走がしたい。
年に一度一週間という制約がある以上、なかなか厳しいけど、今回のコースなら、あと山中2泊くらいあると、いろいろゆっくり出来るんだけど。

ただ、熊ノ平ー三伏峠のように、途中宿営地がなく、一気に超えないといけない、というのはちょっとつらい。

今回のルートは、当初思っていた以上、これまで経験したことがない位しんどくて、山から戻って直後は、もうしばらくの間は山はいいや、と思っていたのだけど、時間が経つにつれて、きつい思い出はどこかに消えてしまい、また同じルート、欲を言えばもっと距離を伸ばして、
たとえば、黒戸尾根から甲斐駒に入り、光岳まで、とか考えてしまっている。
行けば行ったで、また、「あーつらい、あーきつい」を連発することになるんだろうけど。ただ一度歩いたコースというのは、身体が結構覚えているので、最初ほどは、きつさは感じないんだけど。

もし次回南アルプスを踏むとしたら、、、
椹島ー赤石岳ー悪沢岳ー二軒小屋ー転付峠ー笊ヶ岳ー布が岳ー雨畑
なんてどうだろ。通好みな感じがして、よさげなんだけど。笊ヶ岳付近は一切小屋がないので、当然テントで、適当な場所でキャンプ。

よく、南アルプスには「はまる」人がいる。というが、まさに「はまって」というか、「恋い焦がれて」しまった可能性はある。特に南部のスケールの大きさと、静かさは最高に魅力的だ。アプローチさえよければ通うんだけど。

ちなみに、今回歩いた南アルプス一帯では、「マルバダケブキ」、「バイケイソウ」、「タカネトリカブト」の株をよく見かけた。トリカブト以外は花期を外してしまったので、既に終わってしまっていたけど、とにかく高山植物は豊富で、楽しませてくれる。

特におすすめは、北荒川岳から北俣分岐にかけての「マルバダケブキ」と「バイケイソウ」。荒川岳から荒川小屋にかけてのカールに、びっしりと張り付く広大なお花畑だ。(こっちは種類が豊富、特に「ノアザミ」がきれいだった。)

あとは、ほぼ夜中に通ったのでよく分からなかったが、三伏峠から烏帽子岳にかけても、大きなお花畑が広がっている。

Untitled大井川鐵道井川線
大井川鐵道井川線 posted by (C)picotan