魔人さんとコラボde楽しいお話を目指し
「アイドルですから!(仮)」の【リク罠146】設定をアレンジして、書いてます
愛☆どる狂想曲 -1-
「アイドル!?私たちがですか?」
「ああ、元はある番組の企画なんだが、そこのテレビ局が話題作りも兼ねて全面的にバックアップしてくれるそうだから、歌だけじゃなく、ドラマとかバラエティにも出演できるよ。」
「でも・・・アイドルとしてでしょ・・・」
久しぶりのラブミー部召集に、何事かと集まった3人に告げられたのは
畑違いの仕事のオファーだった。
不服そうに口々に文句を言い始めたラブミー部3人に、椹は苦笑いを浮かべるしかなかった。
普通ならこんなビッグチャンス、喜びいさんで即答なのに
ここまで難色を示すとは…
さすがラブミー部、相変わらず屈折してる。
椹は彼女達をどうやって説得しようかと迷い、ローリィの方をチラッと窺い見た。
ローリィは自分の前に整列して立っている3人の顔をじっと見て、
情けなさそうに、一つため息をついた。
「お前ら、どうせたかがアイドルだと、馬鹿にしてんだろ。」
「別に、そんな訳では……」
「人に愛される仕事を旨とする君たちに、これはうってつけの仕事だと思わんか!」
「……はぁ~」
項垂れる3人に、ローリィのお説教は続く。
「…………アイドルは、応援してくれる人達がいなければ成り立たない仕事だ。
君たちは今まで以上に愛される為に努力しないといけない!!
君達の心のこもった仕事に感動を覚え、愛してもらってこそがラブミー部の任務だ!
何も迷う事なんてない!」
「………」
黙って項垂れる彼女達に、ローリィの怒りはヒートアップしてゆき
段々冷静に話せる状況ではなくなっていった。
ラブミー部3人も一応おとなしくは聞いているが、心まで届いているとは到底思えず
ただローリィの怒りが収まるのを待っているだけにも見える。
唯一、まだ冷静に彼女達を見ていた椹は、穏便に事を進めるべく
ローリィの話を引き継ぎ、もう少しだけ具体的に話をしていった。
「まぁまぁ、そこまで暗くなるような話じゃないんだよ。さっきも言ったが、ドラマでは主役級の扱いだと聞いている。君たちにも悪い話じゃないだろ?」
「私たちのドラマですか?」
「ああ、そうだ。それに今回は、フィクションの部分とノンフィクションの部分を入り混ぜた新しい試みもすると聞いているから、君たちのイメージを変える絶好のチャンスだとも思うんだけどね。」
「イメチェン・・・」
キョーコは、椹の言葉に心が揺れ始めていた。
未だ、いじめ役のイメージから脱却できない自分にとって
また違う魅力をアピールするチャンスというならば
この話は受けるべきかもしれない。
以前、先生も言っていた。
演技の幅がどれほどかわからないから、似た演技を求められる。
ならば全然違う役の演技を見せれば、また別の役のオファーが貰えるかも?
それに、考えてみれば
このプロジェクトでは、たくさんの関係者に私の演技を労せず見てもらえるんだもの。
思うより美味しい仕事かもしれない。
キョーコの瞳に強い光が宿り、生気が戻ってくる。
ギュッと握り拳を作ると、隣の奏江と千織の方に顔を向けた。
二人も、同じことを考えていたようで、表情は同じように輝いていた。
互いに顔を見合わせ頷き合うと、ローリィと椹の方に向き直る。
「やらせてください!」
「頑張ります!」
「はい、私も有り難くこの仕事をお受けします!」
「よしっ! よく言った。これから色々大変だと思うが、頑張るんだぞ。」
「「「はい!」」」
3人が元気よく返事をした事に、ローリィも椹も気を良くして
企画書を各自に渡すと、そのまま部室を出ていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後の打ち合わせで、今回のプロジェクト期間中は、企画立案したバラエティ番組「はちゃメチャ」のメインパーソナリティである岡ピーが表向きのマネージャーとなり、3人の活動をサポートしながら、アイドルとしての奮闘ぶりを番組で放送すると説明を聞いた。
と言っても、そこはバラエティー
思いっ切り遊ばれる気もするが、今更引けない。
このチャンス、しっかり利用させて貰うわ!
キョーコは負けず嫌いにスイッチが入り、やる気をみなぎらせていたが
隣の奏江は複雑そうに俯いている。
千織は内心はさておき、余所行き笑顔で頷いていた。
天宮さんの笑顔…何だかこわいわ。
きっと彼女の毒ノートのページは今日の話でいっぱいになるんだろうな。
もうすでに、嬉しそうに怨キョ達が顔を出してるもの。
また、読まされるのかしら?
(ああ~ もう~
後ろで読みたい、読みたいって騒がないの!おとなしくしてなさい!)
キョーコが怨キョ達と戯れている間にも、説明は続いていた。
「……で、この期間中は、こちらで用意したカメラのある部屋に3人で暮らして貰うから、プライベートはないものだと覚悟して下さい。」
「あの、それって家で暮らす様子も放映されるという事ですか?」
少し気持ちを持ち直したモー子さんが、企画の説明をしているスタッフに問いかけた。
「ええ、そうです。今回の企画の趣旨は事務所から何か説明は聞いてますか?」
「はい、一応は…」
「ならば、こちらの意向を少しお話しします。」
今まで黙って様子を伺っていたこの番組のプロデューサーがスタッフの言葉を引き継いだ。
「この企画の成功の鍵は、演技力とタレント力、この二つを併せ持つ、若くて可愛い子を見つけ出す事にかかっていました。当初は、歌手志望の子から探してたんですが、なかなかピンとくる子がいなくて困ってたんです。そんな時に、ちょうどうちのスタッフがBOXーRに面白い子達がいると教えてくれたんですよ。」
プロデューサの言葉に「どっちが?」と、キョーコと千織は互いを指差した。
「どちらともですよ。」
「「えっ?」」
「貴方方のいじめ役は素晴しかった!美しくも残酷で、知らずと目は、貴方方を追いかけていました。」
「あ、ありがとうございます…」
キョーコと千織は、戸惑いながらも頭を下げた。
「素材もなかなかいいものをお持ちですし、演技を離れればお二人とも実に可愛らしい。アイドルとしても、十分に通用しますよ。」
あまり、素の自分を可愛いと言われたことのなかったキョーコは、
恥ずかしくなって、真っ赤に染まった頬で照れ笑いを浮かべ、もう一度頭を下げた。
「その上、京子さんはバラエティでは打って変わって、アクティブな天然で、ナツのイメージを全く感じないから、興味深い!天宮さんは、普段は愛想よく笑っているけど、結構要所要所で毒吐いてる所が面白いんだよな~w」
何かを思い出したのか、一人でクスクスと笑う男に、千織は顔を引き攣らせた。
しかしキョーコは、彼がどの番組を見て、自分を評価しているのかわからなかった。
単発では、たまにバラエティにも出ているが、
アクティブな天然と言われる程、動き回るような仕事はしていない。
唯一動き回っているのは、気まぐれの坊だが、正体は伏せているのでバレるはずもない。
「特に気まぐれの坊は最高だ!番組のいいスパイスになっているね。」
「えええ~~~~~っ!!!!!!」
さり気なく言われた爆弾発言に、思わず大声を出してしまっても
彼は特に動じる事もなく話を続けていく。
おとなしい顔をしていても、さすが辣腕プロデューサ!
こちらが大声をあげた位では、話を中断しないのね。
でもどうして私が坊だと知ってるのかしら?
聞きたい…
それをちゃんと知っておかないと、落ち着いてこっちの企画にも取り組めない。
隣で天宮さんも聞きたげな目でこっちをチラチラ見ているけど
今は説明する心のゆとりもない。
気持ちが顔に出ていたのか、こちらの問いたげな目に気づいたプロデューサーが
話を中断して、私の質問に答えてくれた。
「気まぐれのプロデューサーと俺とは同期でね、よく飲みに行くんだ。」
「そうだったんですか…」
「そこでよく京子さんの話も聞いていたから、以前から興味はあったんだよ。」
「悪口ですか?」
咄嗟に本音が出てしまい、焦って口を隠した。
「ははは・・・ どうせあいつの事だから、君の前では厳しい事ばかり言ってるんだろうな。」
「はぁ~~っ、でもそれは私がまだまだ未熟者だから仕方ないと思ってます。」
「いい心がけだね。でも裏ではいつもあの子は面白いって褒めてたんですよ。だから俺も君のことチェック入れてたんだけど、あのドラマのいじめ役と同じ人間だったとは気づかなかったなw」
「そうなんですか…あの~ところで、坊が私であることを他の方にお話とかはされたのでしょうか?」
「してないよ。だってあれ極秘事項なんだろ?あれっ、今、言っちゃったか!?」
「お~い、今の話は聞かなかった事にしてくれ~ぇ~」
焦るプロデューサーに、ドッと笑いが巻き起こり
打ち合わせの場が一気に和やかなムードに変わっていく。
キョーコも乾いた笑いで誤魔化しながら、内心はホッとしていた。
プライベートでのお酒の席の話だし、今も極秘と言ってくれたから、そんなに広まらないよね。
私が坊だからと言って、大した話題になるネタでもないし…
取り敢えず後でモー子さんと天宮さんには、念押しで口止めしておこうっと。
恥ずかしいからと言えば、きっと内緒にしてくれるだろうし…
とにかく坊が私である事は、何としてもあの人の耳に入らないようにしなければ。
敦賀さんにだけは知られたくない。
あんな事やこんな事など、身の程知らずの所業三昧!
思い出すだけでも恐ろしいわ。
「ちょ、ちょっと待って下さい!この二人が抜擢された理由はわかりましたが、私はどうして選ばれたんですか?バラエティには出たこともありませんし…まさか、これのせい?」
疑心暗鬼の目で、チラッと自分が今着ている、揃いのラブミーつなぎを見た。
プロデューサーはクスッと笑って、頷いた。
「それだけではないけど、それもある。」
「・・・・・・・・・・」
「初めて見たけど、噂通り強烈だね。これは一度見たら確かに忘れられない。」
「やっぱり・・・・・・呪いだ・・・・」
顔を背けて、ぼそっと呟いた奏江の言葉に、プロデューサーは吹き出した。
「ぷっ・・・ハハハハハ・・・、君、やっぱり面白いじゃん!さすがあの二人の仲間だ!」
「一緒にしないでください!」
膨れる奏江に、「仲間じゃない」と縋り付くキョーコを振り払っていれば
「これはこの先が楽しみだ・・・ハハハハハ・・・やっぱり君もいい味出してるw」
「うっ…」
まだクスクスと笑い続けているプロデューサーに
奏江はこれ以上何かを言い返す気力も削がれて、おとなしく席についた。
ひと笑いしてやっと落ち着いたプロデューサーは、表情を引き締め、もう一度奏江の方を見た。
「でもね、琴南さんを選んだのは、それだけが理由じゃないんだよ。君の美貌と演技力を見込んで、君に決めたんだ。君が出ていたドラマも何本か見させて貰ったからね。」
「本当ですか!?」」
嬉しそうに奏江は頭を下げた。
「で、さっきの続きだが、来週早々には、こちらが用意するマンションに引っ越して来て貰って、共同生活を始めて下さい。その間ずっとカメラは入ってますから、気をつけて下さいね。普段の生活では、自分のペースで暮らして頂いても結構ですが、あくまでもこの企画のイメージを忘れないで下さい。」
「「「はい!」」」
3人とも、さっきまでの迷いは消えており、力強く返事をする。
「最初の一ヶ月は、歌と踊りのレッスンを重点的に行いますが、ドラマの撮りもこれと並行して行いますので、今から渡す資料をよく読んでおいて下さい。」
スタッフから配られた資料を、すぐに開いて真剣な眼差しで読む3人に、付き添いでついていた椹もTV局のスタッフも安心した表情で、上座に座っているプロデューサーの方を見た。
「2カ月後にはデビューとプロモーション活動を行います。ここから岡ピーマネージャーと同行してはちゃメチャの収録もスタートします。後半にはドラマもオンエアされますので、ヒットするかどうかは君たちの頑張り次第です。やってくれますね?」
「「「はい!!!!」」」
更に大きな声で返事をする3人に、大きな拍手が湧き上がる。
プロデューサーは、もう一つ大事な説明が抜けていた事を思い出し、つけくわえた。
「あっ、そうだ!君たちがこの企画で生活している様子は、ドラマのエンディングで毎週流すから、映っている時はアドリブで好きなように振舞ってくれて構わないよ。」
「…………?」
「んっ、君たちはイメチェンしたいんだろ?よく考えてごらん。」
「……あっ!」
3人の表情が見る見る明るくなってくる。
「「「ありがとうございます!」」」
プライベートすらない大変な企画だけど、
その分私たちのメリットも多いに有るから利用しろと言って下さるのね。
ギブアンドテイクか…
いいわ、この仕事、次のステップへのし上がる足がかりにしてみせるわ。
「さぁ、謎のアイドルユニット「ラブリー・モンスター」の誕生だぁぁぁ~~!!!
君たちの愛らしい笑顔で、たくさんの聴衆を魅了し、日本中をラブリーな渦に巻き込んでくれぇ!!!!」
両手を大きく広げて、ノリノリで話すプロデューサーと片手を上げて呼応するスタッフ達に、キョーコ達はちょっとひいてしまった。
『ラブリー・モンスター!?』
ラブミー部のラスボスと言われてる私へのあてつけみたいな名前じゃない!
ダサっ!一昔前のアイドルみたいな名前だわ!
川越みちかみたいに、大した芸もなく、ただヘラヘラと笑って愛想を振りまけばいいのかしら(毒)
3人は心の中で、散々悪態をついていたが、
それなりにこの世界で培ってきたスキルをフル回転し
盛り上がりの輪の中で、不用意な悪態をつく事もなく本心を綺麗に押し隠し
営業スマイルを浮かべていた。
「まぁ、色々難しい設定ではありますが、君たちの演技力とアドリブに期待してますよ。」
「「「はいっ、頑張ります!」」」
「あっ、それと、わかっていると思うけど、企画期間中は恋愛禁止ですから注意してください。 貴方方の携帯もあのマンションに引っ越し時にはお預かりさせて頂き、こちらで用意した携帯を連絡用に使用する予定です。この企画が終了するまでの4ヶ月間はプライベートの連絡はNGだから気をつけてね。それまでに、必要な方には連絡をして、身辺整理をしておいて下さい。まさかと思いますが、この中でおつきあいしている方とかいませんよね?」
3人は一斉に首を横に振った。
「よろしい。では、こちらの方の問題もなさそうだし……
後は何か説明する事はあったかな?」
スタッフの方を見回したが、特に何かある様子はなかった。
「では長くなりましたが、本日はお疲れ様でした。これから4ヶ月間、よろしくおねがいします。」
「「「はい、よろしくおねがいします!お疲れ様でした!」」」
打ち合わせの後、気が抜けてしまったのか、3人は部屋を出ていくこともできず
ぐったりと机の上に突っ伏してしまった。
1.5へつづく
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