問い詰める蓮さんの質問にも答えられず、逃げ出したキョーコちゃんは一人

思考の坩堝にはまって、抜け出せなくなっていた…


PIKA*Chuコラボリレー第2章5話目


今回は、ピコのターンドキドキ

りかさんの素敵なお話を壊さないように頑張りました。


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秘めやかな想い*miss you* 5



敦賀さんに蹂躙された唇がまだ熱い・・・・


蹂躙?


ふっ・・・


嘘つきキョーコ


本当は、自分も求めていたくせに


敦賀さんのシャツを握りしめていた手は、見せかけだけの拒否を繰り返し、

突き放すなんてできなかった。


与えられる熱に酔わされて崩れそうになっても、敦賀さんの質問には口を噤んだ。

言えばすべてが終わってしまう。


ズルいとわかっていても、あなたに失望されたくなかった。


試された純潔の誓いは脆くも崩れ去ったけど、

それでも敦賀さんに嫌われるよりマシ。


あの時・・・・・・・・


携帯が鳴らなければ、私はどうなってしまったのだろう・・・・・・・・





静まり返った移動中の車内。
フロントミラー越しに映る俺の担当タレントは、いつにもまして陰鬱な表情で俯いていた。


最近元気がなかったのは、あいつのせいだったのか…


さっき見かけたキョーコの泣き顔とその後に出てきた蓮の泣きそうな姿が、

あの部屋で何かあったと物語っていた。


以前から、蓮とやけに親しい間柄だとは思っていたが、

まさかそういう関係だったとは…

何が愛を全身全霊で拒絶しているラブミー部員一号だ。


結局は、同年代の女の子と大して変わらないじゃないか・・・


参ったな・・・


矢沢は、社長から京子の担当を言い渡された日の事を思い出していた。



『ラブミー部の京子を君に担当してもらいたい。』


いきなり社長に呼び出されて告げられた言葉に、また何かの嫌がらせか!

それとも試練なのか?と、すぐには言われた言葉を理解できなかった。

自分は蓮にも負けない一流モデルを育てるために、LMEに入社したと知っていて、
なぜ補欠タレントみたいな扱いを受けている半人前の落ちこぼれを受け持たないといけないのか。

冗談じゃない!


反論しようと、もう一度社長の顔をじっと見つめ直した時、言葉が続けられた。


「あの子に前を向かせてはくれないだろうか?自分の力を冷静に見極め、切り替えできる強い意志を持った君ならきっとできると思うんだがね?」


何なんだ?やっぱり嫌味か?

確かに俺はモデルとしての自分に限界を感じて、去年引退した。

だが、それは俺のせいじゃない!

蓮に会って、あいつがどんどん一流モデルとして成長していく様を見て、

自分との決定的差を見せつけられて諦めたんだ。


惨めにいつまでもモデルにしがみつくなんて、俺の美学には反していたから、

散りぎわは、華やかで終わりたかった。


そして芸能界を引退した俺は、トップモデルまで上りつめた経験を生かすべくLMEに入社し、モデル部のマネージャーとなった。


なのに!


経験もなければ、部署も違う、この俺に一体何をさせたいんだ。

畑違いもいい所だ!


それに俺は、若い女の子を人として立派に育てられるほど、

人生経験も積んでないし、人格者でもない。


反論したい言葉は山ほどあったが、しがない新人社員がトップに盾つくなんてできる訳もなく、渋々頷いた。


京子は、特に何の取り得もない、どこにでもよくいる普通の子というのが俺の印象だったが、任された以上はいい加減な思い込みで彼女に接するわけにはいかない。

ちゃんと彼女を知ろうと思った俺は、過去に京子が出演したドラマや番組をすべて見て、自分の認識を大きく覆された。


何なんだ、この子は!

普段は群衆に埋もれて見つけるのも一苦労なのに、一旦役に入れば周りをも巻き込む存在感。

誰もが彼女が演じる役に釘付けになってしまう。


蓮が皆を魅了する明るく太陽のような正のオーラなら、この子は闇の世界を照らす強烈な光、負のオーラだ。


過去に何があったかは知らないが、あれは誰もが持てるものではない。


怒り、憎しみ、妬み、劣等感、絶望


皆が一度は感じる敗北感に、雄々しくも立ち向かおうとする、荘厳で強く放たれた気高い光。


俺より9歳も年下の女の子に、思わず忽然と見惚れてしまった。

この子はまだ自分の魅力には気づいていないようだが、この先磨かれ方次第では凄い女優になる。


「敦賀蓮」にも負けない強烈な存在感を持つこの子を、この手で育てられるなんて、担当違いとか言ってる場合じゃないかもしれない。
この荒削りなでかい原石に出逢った喜びに、その日は久しぶりに興奮して夜もなかなか眠れなかった。


だからこそ

人の恋路を邪魔するほど、野暮ではないつもりだったが
この大事な時に、恋愛なんかで、この子を潰すわけにはいかなかった。


「蓮と付き合っているのか?」


いきなりの突拍子もない質問に動揺を隠せないまま、黙ってこちらを見る京子を尻目に、淡々と言葉を告げていく。


「止めとけ。あの男はお前の手におえる様な男じゃない。あいつは過去に、大分経験を積んでいるぞ。どうせ遊ばれて捨てられるなら、傷つく前にに諦めとけ。」


さっきまでは小さく所在無げだったくせに、キッとこちらを睨むと、いきなり車内には何とも形容しがたい不穏な空気が充満し、何者かに身体を締め付けられているような圧迫感で顔が引き攣りだした。

背筋にゾクゾクと嫌な汗が流れ始め、気持ちまで持って行かれそうになる。

こんな所で、事故なんてとんでもない!

ハンドルを強く握りしめ、運転に意識を集中させた。


「つっ…付き合ってなんかいませんし、遊ばれてもいません!敦賀さんは、人の心を弄んで楽しむような人じゃありませんから!」


養成所仕込みのよく通る大きな声に、頭がクラクラしてくるが、ここで引き下がるわけにもいかず、そのまま話を続けた。


「なら…なぜさっき泣きながら出て来たんだ?何かされたからじゃないのか?」


「見てたんですか?」


「見かけただけだ。」


「別に・・・・何もありません・・・・泣いてもいませんでした・・・・」


さっきまでの暗く激しいオーラは一気に萎み、また自信のない元のキョーコに戻ってしまった。


「あんなに血相変えて出てきて、何もなかったなんて、よく言えるな。」


「プライベートな問題なので、矢沢さんに言う必要はありません!」


ソッポを向くキョーコに、今度は矢沢の方が声を荒げた。


「何がプライベートな問題だ!全部をちゃんと聞いてないと、いざっていう時にお前を守ってやれないだろうが!俺はお前のマネージャーだぞ!!!」


ハッとするキョーコに、困惑の表情が浮かんでいるが、

それ以上の答えはなく、ただ陰鬱な沈黙が続いていた。


ゆっくりと話を聞いてやりたいが、車をどこかで止めるわけにもいかず、ただ時間だけが過ぎてゆく。

あと20分ほどで次の現場についてしまうな・・・・

今のこんな状態で、この子を現場には出す訳にはいかない。

何とか気持ちを切り替えさせないと・・・


ふぅぅぅ~~っ


多少のドラマ出演の経験はあっても、一年を過ぎた程度のまだまだ新人。


そんな簡単に自分で気持ちの切り替えができるほど、大人じゃないよな・・・


少しでも担当女優の気持ちを和らげてやるのもマネージャーの務めか・・・


仕方ない。


矢沢は、信号待ちで車が停車したのを合図にキョーコの方を振り返った。




「蓮の事が好きなのか?」




いきなりの核心に触れる質問に目を見開いた彼女は・・・・


何故か真っ青になり、この世の不幸をすべて背負ってしまったような絶望的な顔をしていて、とても恋する女の子の顔には見えなかった。




6へつづく



今までずっと他人には自分の本心を誤魔化し続けてきたキョーコちゃんが、

自分を守りたいと言った矢沢さんに、果たして本音を言えるのでしょうか?


続きも当ブログで、6/20(木)UP予定です。



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