PIKA*Chuコラボリレー第2章2話目!
蓮さんが募る想いに戸惑っていた頃、キョーコちゃんは・・・
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お話の中に、コミック未掲載のネタバレが含まれております。
コミック派の方、ネタバレNGの方はご注意ください。
では、どうぞ続きをお楽しみください。
秘めやかな想い*miss you* 2
「達子の部屋」を見て以来、今も心の中にぽっかりと空いた穴は埋められなかった。
でも・・・
不思議と敦賀さんを恨む気持ちには少しもなれなかった。
もちろん彼は、私がこんな気持ちを持っているなんて思いもしてないから、
裏切るも何もないんだろうけど、
それでも・・・
ショータローの時とはすべてが違う。
失恋したのにまだ恋しくて、愛しくて切ない。
今でも貴方に逢いたい
抱きしめられたいと願う、愚かな自分がいる。
ヒール兄妹の頃なら、こんなにも悩まなくてもよかった。
兄さんは、雪花以外には興味はなくて、
雪花も兄さんしか見えていなかったんだもの・・・
でも今は敦賀さんで、カイン・ヒールはもういない。
兄さんがセッちゃんを見ていたように
敦賀さんは私の知らない誰か他の女の子を見ている。
私と同じ名前で高校生の「キョーコちゃん」
わかっていた筈なのに…
私に優しいのは、別に特別だからじゃない。
敦賀さんは、誰にだって優しい・・・・・
わかってはいたけど、ちょっとくらい他の子よりは仲良くなれた。
敦賀さんに信用されているんだと、思って安心していた。
ただの後輩のくせして、何て厚かましい奴なんだろう。
全く私は、大馬鹿者だ。
本当に・・・・嫌になるくらい・・・
どうして私はいつも、振り向いてくれない人ばかりを求めてしまうのかな。
本当はただ------------
誰かに愛して欲しかっただけなのかもしれない。
もう二度と愛なんて求めないと誓ったのに、また同じことを繰り返している。
愚かすぎて、笑ってしまうわ。
溢れた想いを胸に抱えて、仕舞いこむ事さえできずに彷徨っている私の恋心。
それでもこの想いを認めてあげないと、前には進めないのかもしれない。
言葉にしてみたら、少しはこの気持ちも落ち着くだろうか。
私・・・・敦賀さんが・・・好きでした。
まだ好きなんです。
忘れられません。誰よりも・・・大好きなんです!!
忘れるなんてできない・・・
貴方の神々しい笑顔も
大魔王のごとく怒りを漂わせた表情も
少年のように恥らった顔も
真剣に取り組む眼差しも
切なげに見つめる瞳も
苦し気に歪む口元も
全部全部
私の心に刻み込まれて、どんな表情も、目を瞑ればすぐに浮んでくるのに…
私じゃあ・・・駄目なんだ・・・・
夢見ていたわけではないけど
やっぱり・・・現実を突きつけられると辛い。
でも、敦賀さんにはこんな私を知られて、失望されたくない。
だから敦賀さんの前では、絶対に泣かない。
笑って元気に、一後輩として、敦賀さんに接してみせる。
そして今以上に演技に真摯に取り組みますから、
少しでも同じ演技者として貴方に近づけたら、よく頑張ったって、前みたいに褒めてくれますか?
この密かな思いは深い深い心の奥底に沈めます。
敦賀さんがキョーコちゃんと上手くいっても、笑って祝福できるように頑張る。
泣かないから今だけ---------------
敦賀さんに会いたい-----------
会いたいよ----------------------
声が聞きたい-------------------
優しい笑顔で見つめられたい。
溢れる涙を抑えることもできず、久しぶりに声を出して、思いっきり泣いてしまった。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
『BOX-R』も佳境に押し迫った頃、椹主任からグッドニュースがあるからと、矢沢さんと二人で事務所に呼ばれた。
しかし、告げられた言葉は、いい知らせどころか、地獄への招待状だった。
「敦賀さんが、最終回にゲスト出演して下さるんですか!」
「ああ~そうだ。なっ、いいニュースだろw」
「はぁ~~~~~っ」
「はぁ~っ? どうして君は、そういう反応になるんだ・・・これは、チャンスだぞ!もう少し、自分の仕事に欲を持ちなさい。君はこの意味を分かっているのか!?蓮のような人気者が例えゲストとはいえ出演すると言う事は、それだけ注目されて視聴率も上がる。視聴率が上がれば、最上君の知名度も上がるんだぞ。
芸能人は、結果がすべて。いってる意味わかるな?」
「はい・・・・・」
「まっ、最上君の気持ちもわからないではないがな。教師と生徒役だなんて、『ダークムーン』の美緒と同じ設定だから、比べられるのが怖いんだろ?でも、君はもう十分に脱却しているから、大丈夫だ。いまじゃあ、ナツ様と男性ファンにも拝められる存在になってるじゃないか。何も心配することはない。」
笑っている椹に同調するように矢沢も言葉を被せてきた。
「俺も椹主任の言うとおりだと思うぞ。それにこれは、キョーコにとってもチャンスだ。同じ役柄でも全く別人のように演じれば、お前の評価はUPする。つまりは、仕事が増えるってことだ!」
「世の中そんなに上手くはいきませんよ。」
相変らず暗い顔でどんよりしているキョーコに、椹と矢沢は顔を見合わせ大きく溜息をつくと頭を横に振った。
もうこれ以上今のキョーコに何を言っても無駄とわかった二人は、肩を落として一人暗い空気を漂わしているキョーコをほっといて、今後のスケジュールについて打ち合わせを始めた。
キョーコは、少しでも一人っきりになりたくて、ラブミー部部室で待ってますと告げると、逃げる様にその場を去って行った。
*********
キョーコは、誰もいないラブミー部の部室で 一人ごちていた。
「会いたいとは思っていたけど、まだ会うのは怖い・・・どうしよう…
ねぇ…セッちゃん・・・私、どうしたらいいの?」
テーブルの上に雪花とカインの人形を置き、じっと見つめている。
「確かに椹主任の言うとおり、美緒の影は完全に切り離せたと思う。また敦賀さんの演技を間近で見られるなんて、、願ってもないチャンスだ。今度は敦賀さん、どんな先生役を見せてくれるんだろうと思うと、正直ワクワクもしてくる。
でも・・・今の気持ちのまま、敦賀さんと会って、普通でいられる自信はない・・・
セッちゃん、どうしたらいいと思う?」
「・・・・・・・・・」
「そうだ!最初からナッちゃんに徹していればいいんだわ!以前、美緒の時も、セッちゃんの時も大丈夫だったんだから、今度もきっと大丈夫・・・冷静に振舞えるわ。」
キョーコは、ナツと礼咲(れいさき)先生(敦賀さん)とのシーンを頭に浮かべ、目を閉じた。
撮影で、敦賀さんに会った時、負けないように
今ここで、その時のシーンを思い浮かべ頭の中でシュミレーションという名の妄想をする為に。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
放課後、人気のない進路指導室に呼び出され、私は敦賀さん演じる礼咲(れいさき)先生と二人っきりで話をしているの。
キョーコ
頭に景色を思い浮かべて、ナツ魂を憑けたら、敦賀さん演じる礼咲(れいさき)先生と対決するのよ。
負けちゃあ駄目だからね。
本物の敦賀さんに会った時、おどおどしないように、今から練習するんだから。
(一人妄想だけど・・・・)
廊下を歩く足音も、交わす話し声も聞こえない。
し~んと静まり返った部屋で、先生の声が静かに響き渡る。
時折、開けている窓から聞こえる、部活動をする掛け声が、唯一ここが学校であることを教えてくれる。
礼咲先生(敦賀さん)は、私の担任ではないけれど、なぜか以前からよく呼び出されては、注意を受けていた。
内容は、大した話でもなく、普段の暮らしや交友関係、勉強など、他愛もない話ばかりだ。
大体先生は、何故そんなに私に興味を持つんだろう?
それだけ整った顔立ちで、女子生徒にも絶大な人気があるんだから、興味のない私なんて放っといて、他の子たちと楽しく遊べばいいじゃん。
だる~ぅっ
机に片肘ついて頬をのせ、視線を合わせないようにしながら、早く話が終わらないかと、黙って聞いていた。
「は~い、わかりました。今後は、気を付けます。
で、どうして礼咲先生がわざわざ私を呼び出して注意するんですか?先生は、別に、関係ないでしょう?」
「関係なくはないよ。俺は、君達の学年副主任だからね。」
「ふふふっ・・・・嘘ばっかり。どうせ桜庭ちゃんにでも泣きつかれたんでしょう。先生、女性には甘いんだから。」
「桜庭先生は、担任として君を心配しているが、別に頼まれたわけではない。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
相変らず頬杖ついて、薄く笑みを浮かべていると、先生も困った様に眉を顰め、話題を変えてきた。
「北澤は、部活とかはしないのか?」
「興味な~い。ダルイだけ。」
「なら、勉強は?北澤の成績なら、もう少し頑張れば、国立も夢じゃないだろ。」
「別に、無理してそんな所行きたくな~い。」
「はぁぁ~~~、今お前、何か楽しい事ないのか?そんなんで寂しいだろ?」
ナツは逸らしていた視線を先生の方に合わせると、まるで小悪魔のように誘惑してみた。
「寂しいと言えば・・・・・先生は楽しませてくれるの?」
すーっと目を細め、艶やかに、誰かを彷彿させるような笑みを浮かべて見つめると、一瞬驚いた表情を見せた先生は、すぐに真面目な顔になり、同じように片肘をついて、手で口を隠し何かを考え始めた。
ナツは足を組んで、惜しげもなくすらりと伸びた白い足を見せびらかし、先生の視線を誘う。
礼咲は吸い込まれるように視線を移した彼女の生足に、隠していた嗜虐心がくすぐられる。
必死で理性を繋ぎ止めながら、もう一度顔を上にあげると、ナツと目が合った。
男の動揺を、ただ楽しむだけに自らの身体を曝すいけない遊び。
これは危険かもしれない…
少しお仕置きをするか。
礼咲は、理性と欲望のギリギリの狭間で、隠していた手をのけてゆっくりと距離を詰める。
「そんなに楽しみたいの?」
「ええ~もちろん。」
先生は不敵な笑みを浮かべると、普段は穏やかなイメージの下で隠している、妖し気な雰囲気を漂わせながら、ネクタイに指をかけてキュッキュッと緩めた。
「今・・・ここでがいい?」
「それは素敵ね。」
開いた窓から心地よい風が入ってきて、ゆらゆらとカーテンが揺らめき始める。
相変らず部活に勤しむ子たちの声が響いていて、廊下では笑い声とパタパタ走る足音が近づいてきた。
こんな状態で先生と二人、いけない遊びをするんだと思うと、
背徳感と見つかるかもしれないというスリルで胸が高鳴ってくる。
ナツは先生の緩めたネクタイをスルッと引き抜くと、それをそのまま手に絡めて唇を寄せた。
仄かに香る先生の匂いに、うっとりした表情で見つめていたら、壮絶なまでの色気を含んだ笑みを浮かべた先生が近づいてきて、ネクタイを絡めた手に自分の手を重ねると、そっとキスを落とした。
本当にここまでするとは思っていなかったナツは、ドクッと鼓動が跳ねて、思わず手を引っ込めてしまった。
「やっぱり・・・やめとく?」
「まさか…いきなりだったから、少し驚いただけ。早く楽しませてよ。」
ナツは引っ込めた手をもう一度伸ばして、礼咲の手を握ると自分の頬に近づけた。
それがナツの精一杯の虚勢である事にも気づいていたが、そのままナツの挑発にのった。
彼女の頬を撫でるように手を滑らせて、頬から顎へ、そして首筋へと移動していき、くっきりと浮き出た鎖骨を指で撫で上げる。
肌が桜色に染まってゆき、ふるりと身を震わせるナツの瞳が少し不安げに揺れた。
彼女の顎に手をかけると、親指でゆっくりと唇をなぞり焦らせる。
「こういうの初めて?」
「まさか・・・・」
「そう・・・なら、楽しもうか?」
熱い眼差しで見つめる目の前の男は、私が知っている先生じゃない。
オスの匂いを漂わせた、ただの男。
鼓動が激しく高まり、逸らしたいのに目が離せない。
熱い吐息が耳にかかりピクリと敏感に感じてしまう。
先生はそんな反応すら楽しむようにもう一度耳元に息を吹きかける。
ふっと堪らず先生の方にしなだれかかると、そのまま先生は私を抱き寄せた。
先生の香りに酔わされて、うっとり身を任せるとまた先生の顔が近づいてきた。
口角が上がり、余裕の笑みが零れる先生の表情に、ただ、いいように翻弄されている自分が急激に悔しくなった。
「やっぱり・・・・や~めた。」
礼咲先生(敦賀さん)の唇を人差し指の腹でぎゅっと押し当てると、ひらりと交わして椅子から立ち上がった。
「おや、もうお終いなんだ。」
全く動じない先生に負けたくなくて
着いた足が緊張でぶるぶる震えているのを隠すように、背を向けゆっくりと歩きだした。
最上キョーコでは、絶対に逢えない男の顔に、降伏しそうになるのを必死でごまかそうとしていたのだ。
ふっと途端に緊張は途切れ、ナツ魂は離れてしまい、夢の世界から現実世界へと戻ってきた。
「はぁぁぁぁぁ~~~っ」
ナッちゃんでも、やっぱり勝てないんだ。
こんなんじゃあ、素の私なら、絶対無理よね。
というより、その前にこんなお子ちゃま、大人の敦賀さんは本気で相手にしないだろうけど。
おちょくられて、笑われるのがオチよね…
やだ!私・・・
何自分の妄想に落ち込んでいるの。
気合を入れ直そうと、赤くならない程度に軽く両頬を叩いた。
落ち込んだ顔で机の方に視線を戻すと、カイン・ヒールの人形が憮然と見ていた。
「ふふふっ・・・アタシが兄さん以外の男に興味あるわけないじゃない。」
思わず呟いてしまった過去のセリフに、また悲しみが蘇ってくる。
涙が零れそうになって、堪らずカインの人形に顔を埋めて、ギュッと強く抱きしめ
ヒール兄弟として蓮と過ごした日々に心を震わせる。
当たり前のように隣に立ち、指を絡め合っていた日々。
見つめ合う笑顔は、とても優しくて、その瞳には私しか映っていなかった。
『俺のこの人生を終えるまで”お前の俺”で生きてやる』
あの日、言ってくれた言葉に、つい悪態をついてしまう。
嘘つき!
ずっと一緒だって言ってたのに・・・・・・どうして私を置いていくの!
兄さん・・・寂しいよ・・・
このままどうにかなってしまいそう。
あの日のようにキスして強く抱きしめて。
消えてしまわないように強く強く-------
『お願い・・・もう一度抱きしめて欲しい・・・・・・』
「どう、したの?」
一番聞きたくて、会いたいのに、会えない人の声に心臓が跳ね上がった。
驚きのあまり思わず開いた手から、カイン人形が静かに下に落ちてそのまま机の下へと転がっていくが、拾い上げることもできずに ゆっくりと首をまわした。
恋しくてずっと会いたかった人の優しい笑顔。
笑みが零れそうになるのを、咄嗟に心が駄目!と警鐘を鳴らし、身体を強張らせる。
「どう、したの?」
「・・・・・つる、が、さん」
ゆっくりと立ち上がり、身体を向けた先には、ドアを閉める敦賀さんの逞しい背中。
逃げ場を失った私は、次に振り向いた時にどんな顔をしていいのか戸惑うだけだった。
りかさんの3へつづく
次回は6/10(月)23時UP予定お楽しみに
コメント・拍手お待ちしております ピコとりかさんのやる気がUPします